「2022年の佐々木朗希」はどうだった? 圧巻の指標と、見えてきた課題を振り返る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

千葉ロッテマリーンズ・佐々木朗希投手(C)パーソル パ・リーグTV
千葉ロッテマリーンズ・佐々木朗希投手(C)パーソル パ・リーグTV

2022年4月10日の完全試合をはじめ、幾度となく快投を披露した

 千葉ロッテの佐々木朗希投手にとって、2022年はプロ3年目のシーズンだった。4月10日にNPB史上16人目、28年ぶりとなる完全試合の達成をはじめ、幾度となく圧巻の投球を披露。その一方で、夏場以降に苦しむ場面がみられるなど、少なからず課題も見えた1年となった。

 今回は、佐々木朗投手が2022年に記録した具体的なデータをもとに、その投球の凄みと、いくつかの課題について見ていきたい。

圧倒的な奪三振率だけではなく、投手としての総合能力が極めて高い

 まずは、佐々木朗投手が記録してきた年度別成績と、各種の指標を確認しよう。

佐々木朗希投手 年度別成績(C)PLM
佐々木朗希投手 年度別成績(C)PLM
佐々木朗希投手 年度別指標(C)PLM
佐々木朗希投手 年度別指標(C)PLM

 佐々木朗投手の最大の持ち味といえば、なんといっても圧倒的な奪三振率になるだろう。2022年の奪三振率は12.04と、まさに驚異的な水準に達している。2022年に205奪三振を記録して最多奪三振を獲得した山本由伸投手の奪三振率が9.56だったことを考えれば、佐々木朗投手の奪三振率がいかに異次元であるかが浮かび上がってくる。

 また、高い奪三振力に加えて優れた制球力も備えている点が、佐々木朗投手の価値をより高めている。2022年の与四球率は1.60と非常に優秀で、被打率も.177と低かった。その結果として、1イニングごとに出した走者の数を表す「WHIP」も、0.80と1を下回る数字に。走者を出す機会そのものが非常に少なく、出色の安定感を示していた。

 奪三振を四球で割って求める「K/BB」は、一般的に3.50を上回れば優秀とされる。だが、佐々木朗投手のK/BBは7.52という、先発投手としては驚異的な数値をたたき出している。奪三振の多さだけでなく、投手としての総合的な能力が非常に高いということだ。

序盤戦においては、まさに支配的な投球を見せたが……

 次に、2022年の月別成績を見ていこう。

佐々木朗希投手 2022年月別成績(C)PLM
佐々木朗希投手 2022年月別成績(C)PLM

 3月のシーズン初登板は6回3失点ながら、10奪三振と持ち味を発揮。そして、続く4月には完全試合の快挙に加え、17イニング連続無安打という驚異的な投球を見せた。30イニングで50個奪三振を記録し、与えた四球はわずか3個。4試合で3勝、防御率0.90、奪三振率15.00、与四球率0.90という抜群の数字を残し、自身初となる月間MVPにも輝いた。

 続く5月にも奪三振率12.24、防御率と与四球率はともに1.08と、支配的な投球を継続。6月は奪三振率9.00とそれまでに比べればやや数字を落としたが、それでも防御率2.25、与四球率1.80と優れた数字を記録した。6月が終了した時点で防御率1.56という素晴らしい数字を残しており、リーグ屈指の先発投手の地位に駆け上がりつつあった。

 しかし、7月1日の試合では4回10奪三振という圧倒的な投球を見せながら、試合中に右手のマメを潰して緊急降板を強いられた。自身初のオールスターゲームへの出場は果たしたものの、およそ1カ月にわたって公式戦のマウンドから遠ざかることになった。

 復帰後も調子を取り戻すには時間がかかり、8月は防御率4.44と苦しんだ。それでも、9月に入ってからは3試合に先発して防御率1.35と好投。惜しくも2桁勝利には届かなかったものの、良いかたちでシーズンを締めくくってみせた。

球場による得意・不得意は、数字として鮮明に表れていた

 続いて、佐々木朗投手が2022年に記録した、球場別の投球成績を紹介しよう。

佐々木朗希投手 2022年球場別成績(C)PLM
佐々木朗希投手 2022年球場別成績(C)PLM

 本拠地のZOZOマリンスタジアムでは、12試合の登板で防御率0.76、奪三振率13.12と圧倒的な数字を記録。また、PayPayドームでは防御率1.50、京セラドーム大阪では防御率2.25と、優勝争いを繰り広げた強豪2チームの本拠地においても好投を見せていた。

 その一方で、楽天生命パーク宮城は防御率6.75と苦手としていた。ZOZOマリンにおける東北楽天戦では11イニングを投げて無失点と完璧に封じ込めているだけに、対戦相手との相性というよりは、球場との相性が大きく影響していたと考えるのが自然だろう。

 また、東京ドームでは5回5失点(自責点4)と打ち込まれたが、3月に行われたオープン戦でも4.2回を5失点と苦しんだ。楽天生命パークと同様に、こちらも今後に向けて克服が求められる球場と言えそうだ。

代名詞の一つである速球で押すだけではなく、決め球を効果的に用いていた

 最後に、2022年の佐々木朗投手が記録した、結果球の割合を確認していこう。

佐々木朗希投手 2022年結果球割合(C)PLM
佐々木朗希投手 2022年結果球割合(C)PLM

 160km/hをコンスタントに超える剛速球は、佐々木朗投手の代名詞の一つとなっている。しかし、結果球の割合においてはストレートが52.3%と、投球の過半数を超える程度にとどまっている。その一方で、もう一つの武器である140km/h台のスピードで鋭く落ちるフォークが42.4%に達しており、決め球として多投していたことがうかがえる。

 また、140km/h台中盤に達する速度から縦に落ちるスライダーと、ブレーキの利いたカーブも備えるが、この2球種が結果球として使われた割合はかなり少ない。基本的には、速球とフォークを中心とした投球の組み立てを行っていた。

夏場に陥った不振を経て、配球面でも修正を行って状態を上向かせた

 8月までは新人捕手の松川虎生捕手とタッグを組んで快投を続け、「プロ野球における完全試合を達成したピッチャーとキャッチャーの最年少(合計年齢)」としてギネス記録にも認定。若き黄金コンビの誕生を予感させたが、マメを潰した影響による離脱を挟んだ8月以降は速球のスピードがやや低下し、それに伴って打ち込まれる試合も増え始めた。

 そうした流れもあって、8月26日の試合では今季初めて佐藤都志也選手とバッテリーを組んだ。この試合で7回無失点と好投すると、そこから3試合は佐藤選手が先発マスクを被り、3試合全てで5回以上を投げて1失点と復調。そして、2022年の最終登板となった9月26日には再び松川選手とコンビを組み、6回1失点と再び息の合った投球を見せた。

 佐々木朗投手にとってもターニングポイントとなった、8月26日以降の試合における結果球の割合は下記の通りだ。

佐々木朗希投手 2022年8月26日以降の結果球割合(C)PLM
佐々木朗希投手 2022年8月26日以降の結果球割合(C)PLM

 ストレートとフォークの割合がほぼ同率となっている。2022年のストレートの被打率は.227だったのに対し、フォークの被打率は.112。痛打を浴びるケースがより少なかったフォークの割合を増やした判断は、合理的といえよう。

 こうした配球の傾向は、最終登板において松川選手とバッテリーを組んだ際にも維持されていた。8月に直面した課題を経て、状態に応じた修正を施すことによって安定感を取り戻した点も、佐々木朗投手の非凡な要素の一つとなっている。

課題を克服すれば、昨年以上に圧倒的な投球を見せる可能性も

 2022年は球数を制限しながらの登板が続いたこともあり、規定投球回到達は果たせなかった。マメを潰したことによる投球への影響や、球場による得意・不得意といった課題もいくつか見受けられたが、年間を通じて先発として登板できるだけの身体作りを成し遂げ、球場による投球内容の差を改善すれば、さらなる進化も見込めるだけの数字を残している。

 底知れないポテンシャルを持つことを存分に示した1年を経て、「令和の怪物」は新シーズンにどんな投球を見せてくれるか。自身初のタイトル獲得、そして完全試合に続く偉業への期待もかかるその投球から、今後も目を離すことはできなさそうだ。

文・望月遼太

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