苦しいシーズンを送ったのちに、鮮やかな復活を遂げた選手は数多い
プロ野球は厳しい世界。たとえ実績ある選手であっても、特定のシーズンに成績を落としてしまうケースは枚挙にいとまがない。その一方で、悔しいシーズンを送った後に鮮やかな復活を遂げた、というケースもまた、幾度となく存在してきた。
今回は、そうした過去の例を踏まえて、新シーズンの復活が期待される選手たちを、各球団ごとに一人ずつピックアップ。それぞれの選手がこれまで見せてきた活躍を振り返るとともに、鮮やかな復活劇に期待をかけたい。
宮西尚生(北海道日本ハム)
宮西尚生投手はプロ1年目の2008年から50試合に登板すると、その後も左のリリーフとしてフル回転。パ・リーグ記録となるプロ入りから14年連続の50試合登板という快挙を達成し、NPB史上最多の通算380ホールドという前人未到の記録を今なお更新中だ。
2016年、2018年、2019年と3度の最優秀中継ぎ投手にも輝いており、中継ぎとしてまさに比類なき実績を積み上げてきた。2021年は序盤戦で不振に苦しんだものの、終盤にかけて調子を取り戻し、最終的には例年通りに50試合に登板する修正能力の高さも見せた。
しかし、2022年は不調と故障離脱が重なり、プロ入り当初から続いていた50試合登板の記録も途切れた。今季は過去の豊富な経験を活かして一定以上のコンディションを保ち、前人未到の通算400ホールドをはじめとした、さらなる金字塔を打ち立ててほしいところだ。
茂木栄五郎(東北楽天)
茂木栄五郎選手はルーキーイヤーの2016年に遊撃手のレギュラーをつかみ、新人王の投票でも2位に入る印象的な活躍を見せた。続く2017年には自己最多の17本塁打を放ち、OPSも.867と優秀な数字を記録。キャリア初期から台頭を見せ、強打の遊撃手として奮闘した。
2018年こそOPS6割台と苦しんだが、2019年は141試合に出場して打率.282、13本塁打と復調。2020年には故障で73試合の出場にとどまったが、打率.301、出塁率.396、OPS.852と好成績を記録。2021年は2年ぶりに規定打席に到達し、OPS.770と一定の活躍を見せた。
しかし、2022年はキャリアワーストの打率.223、OPSも4年ぶりの6割台と厳しいシーズンに。中日から阿部寿樹選手が加入したことで内野争いは激化が予想されるが、生え抜きの好打者が故障と不振を乗り越え、競争を勝ち抜いて再び主力の座に返り咲けるかに注目だ。
中村剛也(埼玉西武)
中村剛也選手は4年目の2005年に22本塁打、OPS.924とブレイクを果たすと、3年後の2008年には46本塁打で自身初の本塁打王を獲得。続く2009年には本塁打王と打点王の2冠に輝くと、以降も球界屈指の強打者として、まさに驚異的な活躍を披露していく。
2011年には統一球導入の影響で球界全体の本塁打数が減少する中で、リーグ全体の1割以上を占める48本塁打を放って2冠王に。歴代3位となる通算6度の本塁打王、同6位タイとなる4度の打点王に加え、通算454本塁打、1302打点という数字は、いずれも現役選手の中では最多だ。
2019年には36歳にして打点王を獲得し、38歳で迎えた2021年にも主軸として活躍するなど息の長い活躍を続けてきた。2022年は打率.196、OPS.597と絶不調に陥ったが、40歳の大台に到達する2023年は再び復活を果たし、当代随一の強打者健在をアピールできるか。
田村龍弘(千葉ロッテ)
田村龍弘選手は高卒2年目の2014年の途中から出場機会を増やし、翌2015年には正捕手の座を掴む。この時点では打撃が課題だったが、翌2016年には打率.256を記録してベストナインを受賞。課題のバッティングで長足の進歩を見せ、主力の座を確固たるものにした。
2018年には捕手として全試合出場を達成し、自身初の規定打席にも到達。文字通りの不動の正捕手として君臨したが、翌年以降は少なからず故障に苦しめられるようになり、徐々に出場機会が減少。2022年はキャリア最少となる、わずか2試合の出場にとどまった。
同年にはFA権を取得したものの、行使せずに残留を選択。新監督の就任に伴い、捕手争いは再び横一線となりうる状況だ。それだけに、まだ28歳ながら豊富な経験を備える田村選手が本来の実力を発揮すれば、再び正捕手の座に返り咲く可能性は十二分にあるはずだ。
T-岡田(オリックス)
T-岡田選手はプロ5年目の2010年に33本塁打を放ち、22歳の若さで本塁打王を獲得。その後は調子を崩す時期もあったが、2014年には24本塁打、OPS.824と復活。2017年には7年ぶりとなるシーズン30本塁打を達成するなど、和製大砲として活躍を続けた。
2019年には極度の不振に苦しんだが、2020年には16本塁打、OPS.797と復調を見せた。そして、2021年には天王山となった9月30日の試合で放った起死回生の逆転3ランを含む17本塁打を記録し、主力としてチームの逆転優勝に大きく貢献した。
しかし、2022年にはわずか36試合の出場で1本塁打に終わり、チームのリーグ連覇と悲願の日本一にはほとんど貢献できず。今季は大黒柱の吉田正尚選手が抜け、打線全体の得点力アップが急務。苦しい時期からチームを支えてきたベテランの復活は、あらゆる意味で待望されるところだ。
高橋礼(福岡ソフトバンク)
高橋礼投手はプロ2年目の2019年に先発ローテーションに定着し、規定投球回に到達して12勝をマーク。同年の新人王を受賞してプレミア12の日本代表入りも果たすなど、速球派のアンダースローとしてまさに異彩を放つ存在となった。
続く2020年は中継ぎに転向し、勝ちパターンの一角として23ホールドを記録。前年とは全く異なる役割ながら持ち味を発揮し、投手としての能力の高さを示した。前年に続いてポストシーズンでも好投を見せ、チームの4年連続日本一にも大きく貢献を果たしている。
しかし、2021年以降は制球を乱して安定感を欠き、2022年は4試合の登板で防御率13.50と厳しい数字に終わった。シーズン終了後のみやざきフェニックス・リーグでは復調傾向を示しただけに、来季こそは本来の投球感覚を取り戻し、完全復活を果たせるかに注目だ。
過去の経験や実績を糧に、再びチームの主軸へと返り咲けるか
今回取り上げた選手たちは、いずれも主力としてチームの躍進を支えた経験を持つ。その中でも、中村選手とT-岡田選手は過去にも不振から脱却し、主力として再び活躍を見せていた。また、宮西投手も2021年前半の不振から後半に持ち直した経験を持つだけに、いずれも過去の経験を活かして復活を果たしてほしいところだ。
また、茂木選手と田村選手はともに28歳、高橋礼投手は27歳と、この3名は年齢的にもまだまだこれからという段階といえる。不振を乗り越え、再びキャリアを軌道に乗せることができれば、チーム内で築いていた不動の地位を取り戻す可能性も十二分にあるはずだ。
実績ある選手たちが本来の実力を発揮することができれば、新シーズンを戦うチームにとっても大きなプラスとなることだろう。捲土重来を期する各選手が2023年に見せてくれるプレーに、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太
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