3年ぶりのパ・リーグ復帰。3つの要素から見えてくる、有原航平の特徴と長所とは?

パ・リーグ インサイト 望月遼太

有原航平投手(C)パーソル パ・リーグTV
有原航平投手(C)パーソル パ・リーグTV

福岡ソフトバンクに移籍が決定

 1月10日、福岡ソフトバンクが有原航平投手の入団を発表した。2021年から米球界に挑戦していた有原投手にとっては、3年ぶりのパ・リーグ復帰となる。残念ながらMLBでは結果を残せなかっただけに、新天地で再び本領を発揮できるかが大きなファクターとなりそうだ。

 今回は、有原投手の球歴を振り返るとともに、「年度別の指標」「球種別被打率」「結果球割合」という3つの要素から、その具体的な長所と強みについて見ていきたい。

シーズンによる調子の波こそあったが、6年にわたって主力投手として活躍

 有原投手がNPBにおいて記録した、年度別成績は下記の通り。

有原投手 年度別成績(C)PLM
有原投手 年度別成績(C)PLM

 有原投手は早稲田大学から、2014年のドラフト1位で北海道日本ハムに入団。ルーキーイヤーの2015年は防御率4.79と安定感は欠いたものの、18試合に登板して8勝をマーク。、主力投手としてチームのAクラス入りに貢献し、パ・リーグ新人王のタイトルも手にした。

 続く2016年は自身初の2桁勝利を挙げ、防御率も2.94と大きく改善。チーム最多の11勝を記録しただけでなく、チーム唯一となる規定投球回到達も果たした。先発陣の軸としてリーグ優勝と日本一にも大きく貢献し、飛躍のシーズンを送った。

 プロ3年目の2017年は自身初の開幕投手を務め、2年連続の2桁勝利となる10勝を挙げたが、防御率は4.74と大きく悪化。2018年も防御率4.55と不振から抜け出せなかったが、2019年は開幕から安定した投球を見せ、自己最高の防御率2.46を記録。15勝を挙げて自身初タイトルとなる最多勝にも輝くなど、キャリアハイのシーズンを送った。

 翌2020年も先発の柱として奮闘し、全120試合の短縮シーズンながら8勝をマーク。防御率は3.46とやや悪化したものの、調整が難しい状況ながら一定の投球を見せた。そして、同年オフにはポスティングでテキサス・レンジャーズに移籍し、MLB挑戦を果たした。

 しかし、2021年は10試合で防御率6.64、2022年は5試合で防御率9.45と、2年続けて結果を残せず。右肩を故障した影響もあってか苦戦を強いられ、2023年からは再びパ・リーグに活躍の場を移すかたちとなった。

四球の少なさに加えて、課題だった奪三振率も近年は改善傾向に

 有原投手がNPBで記録した、年度別の指標は下記の通り。

有原投手 年度別指標(C)PLM
有原投手 年度別指標(C)PLM

 NPBでの6年間における与四球率は全て2点台以下で、通算の与四球率も2.09と優秀だ。その中でも、2018年残した与四球率1.22という数字はまさに抜群であり、四球から自滅するケースは滅多にない投手といえよう。

 その一方で、通算の奪三振率は6.74にとどまっており、決して多くの三振を奪うタイプではない。しかし、2018年以降は3年続けて7点台以上の奪三振率を記録し、2019年には奪三振率8.82と大きく数字が向上するなど、近年は奪三振率も改善傾向にあった。

 それに伴い、三振数を四球で割って求める、投手としての能力を示す「K/BB」という指標も向上。一般的に3.50を上回れば優秀とされる中で、2018年以降は3年連続でその基準を上回っている。

 とりわけ、2018年のK/BBは5.80と非常に優秀で、2019年のK/BBも4.03とハイレベルな酸い数字を記録。防御率2.94と好投した2016年のK/BBが2.71にとどまっていたことを考えれば、2019年は当時以上に投球内容が向上を見せていたと考えられる。

 ただし、MLBにおける与四球率は、2021年が2.88、2022年が4.95と、米球界では強みの一つが消えていた点が気がかりではある。慣れ親しんだ日本球界で本来の制球力を取り戻せるか否かが、有原投手が再び活躍できるかを占ううえでも重要となってきそうだ。

快投を見せた2019年は、結果球の配分も理に適ったものだった

 最後に、有原投手が2019年と2020年に記録した、球種別の被打率と結果球の割合を見ていきたい。

有原投手 2019年球種別被打率(C)PLM
有原投手 2019年球種別被打率(C)PLM

 最速150km/hを超える速球に加え、7つの変化球を備える器用さも有原投手の持ち味だ。カットボール、ツーシーム、シュートが140km/h台、フォークとスライダーが130km/h台、チェンジアップが120~130km/h台、カーブが100~110km/h台と、幅広い球速帯で勝負できる点も大きな特徴だ。

 被打率に目を向けると、フォークの被打率が.077、チェンジアップの被打率が.135と、この2球種はまさに打者を圧倒していた。また、ストレート、スライダー、シュートの3球種も被打率が2割台前半と、ある程度機能していた。その一方で、カーブは被打率2割台後半とやや高く、カットボールとツーシームは被打率3割台と打ち込まれていた。

有原投手 2019年結果球割合(C)PLM
有原投手 2019年結果球割合(C)PLM

 結果球の割合に目を向けると、速球の割合は1/4未満と多くはない。好調時には150km/hを上回る速球を持ちながら、力で押す投球ではなく、多彩な変化球を使い分けた組み立てを行う点が特徴的だ。

 その中でも、速球を上回る割合で投じているチェンジアップには、特に信頼を置いていることがうかがえる。また、速球、チェンジアップ、フォーク、スライダーは被打率の面でも上から数えて4番目以内に入っており、これらの使用率が高かったのは合理的といえよう。

 それに加えて、シュートが6.4%、カーブが5.3%と、比較的被打率が良い球種は順当に一定以上の使用率を記録していた。カットボールの割合が9.2%とやや高かった点は例外的だが、概ね被打率に即した球種の使い方を行っていたことが好成績にもつながっている。

被打率の悪化に伴い、引き出しの多さを生かした修正を施していた

 続いて、2020年の被打率と、結果球割合を見ていきたい。

有原投手 2020年球種別被打率(C)PLM
有原投手 2020年球種別被打率(C)PLM

 スライダーの被打率が.225から.419、カーブの被打率が.265から.375と大きく悪化。また、速球の被打率も.206から.265となった。前年は打ち込まれていたカットボールとツーシームの被打率は下がったものの、総じて被打率は上昇傾向にあった。

有原投手 2020年結果球割合(C)PLM
有原投手 2020年結果球割合(C)PLM

 前年に7%とまずまず投じていたシュートを一切投じなくなり、被打率が大きく上がったスライダーとカーブの割合が減少。その一方で、フォーク、ツーシーム、カットボールの割合が増加し、前年とは異なる配分で投球を組み立てていた。

 しかし、ストレートとチェンジアップという投球の軸になる2球種の割合には大きな変化がなかった。前年に比べると悪化したとはいえ、フォークの被打率が.125、チェンジアップの被打率が.202と優秀な数字を維持していただけに、投球の大枠に変更は加えず、多彩な球種を活かして細かい部分を変化させていたと考えられる。

早稲田大学の先輩のように、NPB復帰1年目で大活躍を見せられるか

 今オフは大型補強を敢行している福岡ソフトバンクだが、最大の課題はエースの千賀滉大投手が抜けた穴をどうカバーするかだろう。2016年から7年連続で2桁勝利を記録し、2022年には防御率1.94という数字を記録していた千賀投手の穴は、当然ながら容易に埋まるものではない。

 NPBでの6年間全てで100イニング以上を投げ、4度の規定投球回到達を果たしている有原投手には、四球の少なさや豊富な球種を活かした引き出しの多さといった持ち味を発揮し、その穴を最小限に食い止める役割が期待されるところだ。

 また、福岡ソフトバンクでは、早稲田大学の先輩でもある和田毅投手がMLBからの復帰1年目(2016年)にいきなり15勝を挙げ、最多勝と最高勝率の2冠を獲得したという“先例”もある。有原投手も肩の故障を乗り越え、先達のような活躍を見せられるかに注目だ。

文・望月遼太

関連リンク

「2022年の佐々木朗希」はどうだった? 圧巻の指標と、見えてきた課題
相次ぐリリーフエースの先発転向。過去のパ・リーグにおける6つの“成功例”を振り返る
「外野手出身に名監督はいない」は本当か。直近15年のパ・リーグを検証してみた
新天地で躍動する選手は現れるか。パ・リーグ6球団が現役ドラフトで獲得した選手まとめ
電撃トレードで加入した「マスター」。東北楽天・阿部寿樹に期待されるものとは?

記事提供:

パ・リーグ インサイト 望月遼太

この記事をシェア

  • X
  • Facebook
  • LINE