台湾プロ野球、ファン待望の6球団目「台鋼雄鷹」誕生へ 現地から詳細レポート

2022.3.8(火) 22:55 駒田英
Cap 高雄澄清湖球場試合(2021年台湾シリーズ)画像提供:CPBL
Cap 高雄澄清湖球場試合(2021年台湾シリーズ)画像提供:CPBL

チーム名は「台鋼雄鷹」、本拠地は南部・高雄市の澄清湖球場に

 台湾プロ野球に6球団目が誕生することとなった。3月2日、台湾鋼鉄グループ(TSG、台湾スチールグループ、以下台鋼)は台湾プロ野球を運営するCPBLを訪れ、台鋼の謝裕民・会長と、CPBLの蔡其昌・コミッショナーは「加盟意向書」を締結、固い握手を交わした。

 台鋼は5つの企業グループを傘下に置き、鉄鋼産業の川上から川下まで、一貫したサプライチェーンをもつ台湾最大級の電炉メーカーであり、南部の台南市に本部がある。

 子どもの頃から野球ファンという台鋼の謝・会長は、第6の球団に名乗りをあげた理由について、「南部のスポーツ産業の盛り上げに貢献したかった。まさかプロ野球に関わることができるとは思わなかった。とても光栄だ。6番目の球団をしっかり運営したい」と力を込めた。

 CPBLの蔡・コミッショナーは、「既存の5球団はもちろん、多くのファンそして選手が喜び、興奮している。新球団の設立で、より多くのチャンスが生まれることになる。台湾プロ野球という大家族へようこそ」と歓迎の意を示した。

新規参入調印式(左:CPBL蔡其昌コミッショナー、右:台灣鋼鐵グループ謝裕民会長)画像提供:CPBL
新規参入調印式(左:CPBL蔡其昌コミッショナー、右:台灣鋼鐵グループ謝裕民会長)画像提供:CPBL

 立法院(国会)の副議長を兼任する蔡・コミッショナーは、昨年1月のCPBLコミッショナー就任時から、第6の球団参入を目標に掲げ、さまざまな企業と接触、さらに、企業のスポーツ産業への参入を促すため、税制優遇措置を含む法改正を行ってきた。そして、有力候補の一つとされていた台湾最大の電気通信事業者、中華電信に続き、昨年12月、台鋼の名が浮上、今年1月には謝・会長ら一行がCPBLを表敬訪問していた。

 その後、蔡・コミッショナーは、2月10日に行われた新年祝賀会で、2月末にも、どちらの企業が加盟するか明らかになると宣言、2月25日、台鋼に絞られたことを明かした。

 台鋼は、2日の記者会見で、本拠地が台湾南部・高雄市の澄清湖球場となること、チーム名が「台鋼雄鷹(タイガン・ションイン)」となることを発表した。球団の英語名は発表されなかったが、台鋼は、男子サッカーのセミプロリーグTFPLでは「台南市台灣鋼鐵」を、男子プロバスケットボールの新リーグ、T1リーグでは「台南台鋼獵鷹」を持っており、同チームの英語名は「Tainan TSG GhostHawks」であることから、「雄鷹」の英語訳は、「Hawks」ないし「○○○Hawks」などの英語名となる可能性が高そうだ。

「加盟企画案」が審査通過すれば正式決定、ドラフト会議参加へ

 台湾プロ野球では、新規参入に関する規定を定めている。参入企業は、「意向書」の締結から35日以内に「加盟企画案」を提出し、CPBL、常務理事会による審査を通過することが求められているほか、「加盟金」台湾元1億2000万元、「経営保証金」3億6000万元、そして「地方における野球振興基金」1億元、総額5億8000万元(日本円約23億9100万円)をリーグに支払わなければならない。ただし、このうち「経営保証金」については、球団の設立から満5年経った段階で返還される。

 球団の経営をスタートし、2年目までには、これら新規参入に必要となる5億8000万元に加え、球場など施設面の整備費用、ドラフト指名選手の契約金、さらにはプロモーション費用などを合わせ、約10億元(日本円約41億1920万円)が必要とされる。

 これに対し、台鋼の謝・会長は「球団経営費用として、既に10億元準備している」と強調、「経営保証金」は必ず受け取ることができるだろうと、自信をみせた。

 蔡・コミッショナーも、CPBLや各球団は、2019年、20年ぶりにリーグ「復帰」を果たしたものの、一度脱退したため、新規参入の扱いで第5の球団となった味全ドラゴンズをサポートしてきたと説明、「心配ない。第6の球団ができるだけ早く軌道に乗れるよう、今後、全力で協力していく」と約束した。

 常務理事会による審査を無事通過し、台鋼が晴れて第6の球団となった場合、まず今年7月のドラフト会議に参加することとなる。2019年の味全と同様であれば、ウェーバー式で開催されるドラフト会議において、台鋼には今年、来年と「いの一番」の指名権が、そして、今年は上位4巡目まで、来年は上位2巡目まで、1巡につき2人ずつ指名する権利が与えられ、将来、チームを支えていく選手を獲得することとなる。さらに、シーズンオフの11月には、各球団(味全以外となる可能性)のプロテクト外の選手を指名するエクスパンション・ドラフトが行われ、経験ある選手を補強することとなる。また、2年間は、各球団の戦力外選手についても優先的に接触可能とされている。こうして構成されたメンバーにより、来年2023年から二軍公式戦に参入、2024年からは一軍公式戦へ参入する。

 CPBLは1990年、4球団でスタート、2リーグ分裂後の1997年には、CPBL7チーム、新リーグのTMLが4チームと、最大で11チームまで増えたが、レベル低下によるファン離れなどもあり、2003年、両リーグは合併、6チームで再スタートをきった。しかし、2008年、八百長問題による除名、解散で4チーム体制となった。

 対戦チームの少なさから、ファンからは球団増を望む声がすぐに上がったが、球団の経営危機や身売りも相次いだこともあり、4チームの維持が精一杯であった。

 球団増の機運はなかなか高まらなかったものの、2013年のWBCの快進撃による野球人気の復活、各球団の経営努力により、プロ野球のブランド価値は上昇、各球団の親会社が大企業へと変わっていったことも追い風となり、2019年、味全が社会貢献活動の一環で「復帰」し、5球団となった。球団数が奇数で日程が組みにくいという課題、アマ選手のプレーの場がなお限られているという状況もあり、できるだけ早い新球団の参入が期待された中、各方面の努力により、今、6球団目が誕生しようとしている。

 台鋼の参入が正式決定すれば、2024年の一軍公式戦は、実に16年ぶりに6チームで開催されることとなる。蔡・コミッショナーは記者会見で、将来的な第7、第8の球団誕生への期待もにじませたが、まずは6球団制での成功が求められることになりそうだ。

GM、監督は? 日本企業が経営に参画!? クリアすべき課題も

 注目の第6の球団ということで、台湾の各メディアは、監督、コーチやGMの候補、目玉となる大物選手の獲得計画、世界的な日本企業による株式の取得やネーミングライツ契約の可能性など、さまざまな噂を報じている。

 2日の記者会見で、台鋼から、これらの報道に対する明確な回答はなかったが、「企画案」提出前に、監督やGMの人選が明らかにされる、という説明がなされたほか、海外企業の球団経営参画への検討についても前向きな姿勢は示された。噂される通算最多勝監督の監督就任や、奇しくも同じ「ホークス」球団をもつ某大手企業の参画は果たしてあるのだろうか、注目だ。 

 新球団誕生は明るい話題だが、クリアすべき課題、不安もある。そのひとつは、高雄市の澄清湖球場を本拠地とする点だ。1999年に開設された澄清湖球場では、かつてTMLの試合が開催されていたほか、CPBLでは、2003年に第一金剛から球団を買収したLanewベアーズ(楽天モンキーズの前身)や義大ライノス(富邦ガーディアンズの前身)が本拠地とした。しかし、Lanewは2011年に北部の桃園に移転、Lamigoモンキーズとなり、義大も2015年、主催試合全60試合を開催したものの、興行的には成功せず、2016年に富邦に身売り、2017年以降、澄清湖球場は本拠地として使われていない。

高雄澄清湖球場 画像提供:CPBL
高雄澄清湖球場 画像提供:CPBL

 慢性的な渋滞、アクセスの悪さも理由のひとつと言われており、球場最寄り駅が設置される高雄メトロ・イエローラインの早期開通(現状、2028年開通予定)が期待される。また、ファンを引きつけるための施設のグレードアップも求められる。台鋼には構想があるようだが、蔡・コミッショナーは記者会見上で早速、改修すべき点や収益増に関するアドバイスを行うなど気にかけていた。台鋼が、高雄市の澄清湖球場を選んだことで、台湾の直轄市6市全てにプロ野球チームの本拠地が置かれることとなる。高雄市政府も歓迎しており、バックアップを期待したいところだ。

 このほか、他球団が金融、流通など、直接消費者と接する企業であるのに対して、台鋼はBtoB企業であり、プロモーションの難しさを指摘する声や、既存のファンがおり、OBで首脳陣を構成した味全とは異なり、まったくの0からの新規参入となることへの困難さを憂慮する声もある。台鋼の謝・会長は、チームづくりやマーケティングについては、CPBLとも協力しながら、より多くのスペシャリストを集め、専門家の意見を尊重していくと話している。実質的な舵取りを任せられた精鋭達が、どのようなチームをつくっていくのか、この点も注目といえそうだ。

文・駒田英

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