台湾プロ野球の2021年シーズンは、林威助監督率いる前期シーズン優勝の中信兄弟と、後期優勝の統一セブンイレブンライオンズが台湾シリーズで対決、中信が4連勝で統一を下し、11年ぶりに台湾王者に輝いた。今回は昨年末に行われた年間表彰式のほか、ストーブリーグの話題をたっぷりお届けしよう。
<前編>中信デポーラが2年連続MVP 元NPBのあの助っ人、コーチが台湾へ
<後編>平野恵一氏が中信のコーチに就任 5球団中4球団に日本人指導者が
昨年のドラフトでは、楽天が陳冠宇、中信が呂彦青と元NPBの左腕を1位指名した。元千葉ロッテの陳冠宇は先発で6試合登板も勝ち星がつかず、ロッテ時代の主戦場、中継ぎへ転向、10月25日には初勝利を挙げるなど、配置転換で調子を取り戻したように思えたが、その後も肝心な場面で痛打されるケースが目立ち、21試合、1勝5敗、1ホールド、防御率6.52という成績に終わった。シーズン終了後には、不甲斐ない時も支えてくれた人達に感謝の言葉を記し、再起を誓った陳冠宇、今季はチーム事情を考慮し、中継ぎを担うことになった。8日からスタートした若手主体のキャンプに参加するなど今季にかける意気込みは強い。十分な調整ができる今季は、本来の実力を発揮してくれることだろう。
元阪神の呂彦青は13試合に登板(うち先発11試合)し、2勝3敗、防御率4.60という成績であった。突如制球を乱し、球数が増えた所で打たれるという課題はあったが、台湾シリーズ第2戦では要所を締め、チームの勝利に貢献。今季は林威助監督が期待するローテの軸として、さらなる活躍が期待される。
日本人選手では、味全の田澤純一が大活躍をみせた。年間120試合、チームが50勝であった中、58試合に登板、防御率は3.56とやや高かったが、4勝4敗7ホールド、30セーブと、文字通り「守護神」として君臨、30セーブ達成はチーム初、外国人投手として歴代3人目、2010年の高津臣吾(興農ブルズ)の26セーブを上回り、日本人最多セーブ記録となった。味全の葉君璋監督はチームへの貢献を高く評価、閉幕時は残留が濃厚と見られていたが、味全は今季、外国人野手を2人獲得する方針を打ち出しており、現時点で外国人5枠の中に田澤の名は入っていないとされる。他球団でのプレーも含め、去就が注目される。
また、元阪神の高野圭佑は、「テスト外国人」という形で4月に中信に入団、二軍でアピールを続け、外国人登録期限前日の10月10日に一軍昇格をつかみ、富邦戦で1回2/3を1失点、ホールドをマークしたが、翌11日、最終登録の4枠から外れ解雇された。プロ野球12球団合同トライアウトに中信のユニフォームで参加したニュースは、台湾でも大きく報じられた。
大物戦力外選手、FA選手の動向は
年間表彰式の翌日の12月21日、CPBLは、各チーム上限60人の契約保留者名簿を発表、5チームで計47人の選手が名簿から漏れた。
中信は、他球団でのプレー機会を与える為、歴代1位タイ、289HRの林智勝、ゴールデングラブ賞歴代最多9回受賞の内野の名手、王勝偉を保留名簿から外したほか、大物では、首脳陣とのあつれきで一昨年の6月以降、一、ニ軍共に出場がない元メジャーリーガー胡金龍(富邦)が外れた。また、日本球界経験者では、元福岡ソフトバンク、台湾では野手として活躍してきた陽耀勲(楽天)、元読売の林羿豪(富邦)、四国アイランドリーグplusでプレーした黄紹熙(統一)や羅國華(富邦)らも名簿から漏れた。
このうち、王勝偉と陽耀勲は富邦が、胡金龍は右の強打者を欠く統一が獲得、現役続行となった。林智勝については、古巣の楽天が獲得意欲を示しているという。
なお、このオフは、シーズン中に先発に転向、健在ぶりを示した陳鴻文(富邦)、歴代3位、通算118セーブの陳禹勳(楽天)、カムバック賞受賞の官大元(中信)、歴代3位、通算1828安打の林益全(富邦)の4人がFA宣言したが、楽天を除く4球団はFA選手の獲得意欲は低いと報じられている。
「打高投低」解消し、外国人選手の獲得傾向に変化 バティスタが富邦、ロサリオが統一へ
台湾プロ野球に対し、「打高投低」というイメージをもっている方は多いだろう。しかし、実際には一昨年後期、昨年と公式球の反発係数が見直された中、ホームラン数は激減している。2016年、年間603本に達したホームラン数は、一昨年も561本だったが、昨季は5球団となり、試合数が240試合から300試合へと60試合増えたにも関わらず、331本まで減った。長打率も2020年の.462から、昨年は.365へと下がった。
こうしたなか、これまでは主に先発投手を獲得してきた外国人選手のスカウティング傾向にも変化が出てきている。今季も4枠全てが投手の楽天など、投手主体であることに変わりはないが、昨季も外国人野手を獲得した富邦は、かつて広島でプレーしたサビエル・バティスタを、統一は、かつて阪神でプレーしたウィリン・ロサリオを、そして、一軍参入2年目で他球団より外国人枠が1枠多い味全は、BCリーグの富山や神奈川でもプレーしたテルビン・ナッシュを獲得、いずれも長打力のある野手を補強し打線の強化を図っている。
さらに味全は、元北海道日本ハムのロニー・ロドリゲスとも契約間近と伝えられているほか、中信が、捕手のフランシスコ・ペーニャを獲得するという情報もあり、リーグの外国人野手の数が2010年の4人を上回る可能性も高まっている。台湾プロ野球では4球団120試合制となった2009年以降、チームの投手力不足や自己都合の帰国などにより、年間80試合以上出場した外国人野手はわずか3人のみ、今季、各球団に入団する大砲たちは、こうした前例を覆すことができるだろうか。
文・駒田英
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