呉念庭選手が解説初挑戦! PLMが台湾で史上初となるライブビューイングイベント開催

駒田英(パ・リーグ インサイト)

2025.10.14(火) 10:00

パブリックビューイング参加者と記念撮影に応じる呉念庭選手(右下)【©PLM】
パブリックビューイング参加者と記念撮影に応じる呉念庭選手(右下)【©PLM】

 パシフィックリーグマーケティング(以下、PLM)は、10月12日、台湾北部、台北市内の商業施設で「2025 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファーストステージ、北海道日本ハムファイターズ対オリックス・バファローズの第2戦のライブビューイングイベントを開催した。

 かつて埼玉西武ライオンズで8年間プレー、現在は台湾プロ野球の台鋼ホークスに所属、今年は2月末、WBC予選で台湾代表を牽引し出場権を獲得、レギュラーシーズンでは首位打者に輝くなど大活躍をみせた呉選手が解説をつとめるとあり、台鋼や台湾代表の他、埼玉西武時代のユニフォームを身にまとったファンも多数駆けつけた。

台湾でパ・リーグ6球団の主催試合を連日放送・配信しているDAZN台湾の石屹軒アナが進行役をつとめ、5回終了まで約2時間半に渡って行われたイベントでは、現役選手ならではの目線、多くの出場選手と同じグラウンドに立った事がある呉選手ならではの解説が次々に飛び出し、大いに盛り上がりをみせた。

「CSはレギュラーシーズンとは異なる緊張感」

 試合開始に先立ち、クライマックスシリーズの印象を問われた呉選手は、自身が出場した2022年、福岡ソフトバンクホークスとのファーストステージの経験をもとに、「投手が7割を占める。1点を取るのが大変。球場がホークスファンで埋まり、ライオンズファンはレフトに少ししかおらずプレッシャーが大きかった。レギュラーシーズンとは違う緊張感があった」と振り返った。

 現在もDAZN台湾を通じ、日本プロ野球をチェックしているという呉選手。ファイターズについては「自分が対戦していた頃は、新庄剛志監督の就任直後で再建の時期だったが、年々若い選手が増え、成長し、どんどんいいチームになっている」と分析、中でも万波中正選手は、新庄監督就任以降、成長幅が最も大きい選手だと思う、と指摘した。

 一方、バファローズについては、「自分のライオンズ在籍当時は、とにかく投手力が安定していた。野手陣も、各自が攻撃スタイルを確立して三連覇を果たした。山本由伸投手と宮城大弥投手が先発すれば二勝を計算できる感じで、こっちは3タテされないよう、毎回3試合目が必死だった。」と振り返った。メンバーの中では紅林弘太郎選手に言及、「攻守ともに優れたショートで、19歳にして埼玉西武との開幕戦でスタメン入りしましたよね。短期決戦、大舞台に強い、お祭り男といえるかもしれません」と期待した。

 また、開催球場の「エスコンフィールドHOKKAIDO」については、「メジャーリーグの球場には行ったことはないですが、エスコンフィールドはまさにメジャーの球場って感じです。ロッカールームが大きくて、一人ひとりにゲーミングチェアがあるんです」と絶賛、「実はケータリングも最高。メインのお肉は日替わりで、うどんやそば、サラダもついていて、先発じゃない日は多めに食べちゃったり」と告白し、笑わせた。

現役野手ならでは解説

 第1戦のレビューからファイターズの伊藤大海投手に話が及ぶと、「僕の初ホームランは彼からなんです」と明かし歓声を浴びた呉選手。「彼が新人の2021年、プロ初登板でライオンズ相手に先発してきたんですが、自分も絶好調で二軍から上がってきたんで、これはいけるぞと。フェンスの高い札幌ドームでしたし嬉しかったです」と笑顔をみせた。その後は、解説者の顔になり「一球一球、魂が入っており、相手を気迫でねじ伏せる素晴らしい投手。ダルビッシュ有さんにイメージが近い、いかにも日本野球のエースらしい投手」と称賛した。

 また、第2戦の両先発、ファイターズの北山亘基投手、バファローズの宮城大弥投手と過去に対戦した際の印象を問われると、「どちらかというと北山投手が苦手だった」と告白。北山投手との初対戦の際には、「まるで山本由伸投手のようなフォーム」だと驚いたといい、150キロ台半ばの速球は球威があり、制球も良く、フォークも切れていた、と振り返った。

 一方、宮城投手については「実は結構、宮城くんは好きなタイプで、対戦成績はまずまずだと思います。」とニンマリ。2021年、満塁の場面でレフト線への当たりをファールとジャッジされた事は鮮明に記憶しているようで、「その後、三振でした」と4年前のシーンを苦笑いした。

DAZN台湾の石屹軒アナと息の合ったトークで場を和ます呉念庭選手【©PLM】
DAZN台湾の石屹軒アナと息の合ったトークで場を和ます呉念庭選手【©PLM】

殊勲打レイエスの「トルピード(魚雷)バット」使い分けに注目

 今季、台湾プロ野球で首位打者を獲得した呉選手の活躍を支えたギアが、「トルピード(魚雷)バット」だ。今季は開幕から不振に苦しんだが、怪我によりファームに降格したタイミングで、バッティングのメカニズムを見直すと共に、「重心が手前にあるので、スイングの時に普通のバットよりも軽く感じて、スムーズに出てくる」というトルピードバットを手にすると復調。6月は月間打率.463とヒットを量産すると、その後も高打率をキープし自身初のタイトルを獲得した。ライオンズ時代の異名「得点圏の鬼」は健在で、今季、得点圏打率は.402と4割を超えた。

 呉選手は、4回裏に向けた第3打席、トルピードバットを手にして打席に入ったファイターズのレイエス選手について、「バファローズが九里亜蓮投手にスイッチした後バットを変えたのは、九里投手が変化球の多い技巧派で、より長くボールを見ることができるからかもしれません」と指摘した。レイエスが8回裏、殊勲の逆転タイムリーを放ったのはイベント終了後のことではあったが、会場のファンは、野球の奥深さを感じた事だろう。

ファームで共に汗流した同世代の選手たちには特別な思いも

 両チームの選手の中で特に親しい選手を問われると、まずファイターズの松本剛選手の名を挙げた呉選手。「同学年という事に加えて、オフにトレーニングを行う施設も一緒なんです。ファームにいたころ、よく声をかけあっていたので、一軍で再会した時は気持ちが高まりましたね」と振り返った。

 バファローズで親しいのは、元ライオンズの森友哉選手や杉本裕太郎選手だといい、特に杉本選手は、自分と同じくファームにいた期間が長かった事から、2021年のオールスターゲームで共に初出場を果たした際は感慨深かった、と明かした。2回表、杉本選手が先制となるソロホームランを放つと、「この後、ベンチの前で『昇天ポーズ』やりますよ、注目して」と呼びかけ、台湾のファンに、愛称の「ラオウ」についての説明まで行った。

解説初体験は「楽しかった」 日本のファンへ「観光兼ねて、是非台湾へ応援に」

 イベント終了後、呉選手は解説初体験を振り返り、「選手目線からいろんな情報を伝えられたり、ファンに向けて解説することができて楽しかったです。『なるほど、中継で見ているより、実際プレーするのは大変なんだ』と思ってくれたら嬉しいです。状況にあわせてバットを変える話などは、気がついているファンもいると思いますが、そこも野球観戦の醍醐味の一つ。楽しみ方を伝えられたかな」と答えてくれた。

 背番号、そして応援歌を、慣れ親しんだ埼玉西武ライオンズのものに変えて臨んだ今季の活躍については、「納得できたシーズンでした。西武を退団して、活躍できる状態で台湾に戻ってきたという思いがあるので、人生初めてのタイトルは自信になりました。」と笑顔、そして「日本のファンの皆さんにも台湾で頑張っていることが伝わっていると思うので、台北ドームや、台鋼の本拠地、高雄に、観光を兼ねてぜひ応援にきてください」と呼びかけた。

呉念庭選手【©PLM】
呉念庭選手【©PLM】

 現時点で、台湾代表の候補選手は明らかになっていないが、来年3月に行われるWBCの日台対決で、東京ドームのグラウンドに立つ呉念庭選手の姿をみたい、そう願うのは私だけではないだろう。「得点圏の鬼」呉念庭選手の今後の活躍を期待したい。

文・駒田英

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