楽天・陳冠宇が台湾プロ野球初登板!前期シーズンは林威助・新監督率いる中信兄弟が優勝!

2021.9.2(木) 10:30 駒田英
陳冠宇 写真提供:CPBL
陳冠宇 写真提供:CPBL

後期シーズン初戦で先発の陳冠宇は、5回1/3、2失点の好投も白星ならず

 8月24日、台湾北部、桃園市の桃園国際球場で行われた統一セブンイレブンライオンズ対楽天モンキーズで、楽天の陳冠宇(チェン・グアンユウ)が先発、故郷、台湾のプロ野球デビューを果たした。

 昨シーズンまで千葉ロッテマリーンズでプレーした陳冠宇は、7月12日に行われた台湾プロ野球のドラフト会議で、楽天モンキーズから1位(全体2位)で指名を受けた。8月9日には入団記者会見が行われ、2.5年、総額台湾元2100万元(約8290万円)プラス出来高200万元(約790万円)という契約内容、背番号が「12」であることが発表されたほか、各種関連グッズも紹介された。この時点では、後期シーズンの日程は発表されていなかったが、楽天の曾豪駒監督は本拠地、桃園で開催される後期開幕戦、8月24日の先発をフライング予告した。

 そして迎えた24日、桃園国際球場にはモンキーズファンのみならず、千葉ロッテ時代のユニフォームやグッズを手に応援するファンの姿も見られた。楽天モンキーズはこの試合のために、陳冠宇のイラストや「チェンチェン大丈夫です!!」の文字などが刻印された試合球を準備、さらに入場者に「観戦証明書」を配布するなど、ドラフト1位の初登板を盛り上げた。陳冠宇は、「チェ~ン、チェ~ン大丈夫~」と日本語で連呼するオリジナル応援曲と共に登板、初球、内角高めに146km/hのストレートが決まると、スタンドからは歓声が沸き起こった。

 初回を三者凡退に抑え、迎えた2回表、先頭打者、昨季、本塁打と打点の二冠王に輝いた統一の4番、林安可に初球を叩かれ、センター左に飛び込むソロ本塁打で先取点を許したが、3回から5回までは毎回ランナーは出したものの、要所を締め、5回1失点と試合をつくった。味方打線も3回に2点を奪って逆転、5回裏にも追加点をあげ、3対1とリードを広げた。

 6回表、先頭打者に四球を与えたあと、2回に本塁打を浴びた林安可をサードフライに抑えると、許銘傑・投手コーチがマウンドへ向かい、ここでお役御免となった。勝ち投手の権利をもっての降板であったが、二番手で登板した横浜DeNAベイスターズ時代の元同僚、王溢正が四球の後、逆転3ランを浴び、台湾プロ野球初勝利は次回登板へお預けとなった。

 陳冠宇の台湾プロ野球初登板は、5回1/3を投げ93球、被安打5、四球2、自責点2という内容、三振はなかった。最速は147キロであった。試合は、楽天が6回裏に一挙4点を奪い再逆転すると、8回にも5点追加、12対4で統一を下し、後期開幕戦を勝利で飾った。

「まずまず」との自己分析も、修正点、反省点も口に

 陳冠宇は、今年の年初から社会人チームで半年間プレー、その際には先発登板はあったものの、プロ野球での先発登板は、ロッテ時代の2018年4月7日、北海道日本ハムファイターズ戦以来、実に3年ぶりであった。

 陳冠宇は試合後、先発登板に向けたメニュー立案、スケジュール調整をしてくれたチームに感謝、その上で「今日実戦を終え、練習で試合の強度まで高める事の難しさを感じた。先発投手としては最低6イニングを投げたい」と述べた。そして、真夏の台湾での登板については「ほぼ毎イニング、アンダーシャツを替えた。台湾は本当に暑い」と苦笑した。

 投球内容については「まずまずだった」としたものの、「少し慎重になり過ぎて、ボール球が増え、リズムが悪くなってしまった」と振り返り、三振がなかったことについては、「変化球の調子が今ひとつだった。次回以降、修正していきたい」と語った。

 陳冠宇は、逆転を許し降板した王溢正からベンチで声をかけられた後、王と笑顔でコミュケーションをとっていた。記者から勝ち星がつかなかったことについて問われると、「うちの打線をもってして、勝てないかもと心配になると思う?」と逆に質問、全く気にはしていない、ときっぱり語り、「試合に勝って、後期シーズンをいいかたちでスタートできた。パフォーマンスを維持し、毎試合、主導権を握りたい」と今後の意気込みを語った。そして、王溢正のブルペンでの準備が十分ではなかった可能性について触れ、「6回、降板した場面では、次の打者(蘇智傑)も左打ちだということをすっかり忘れ、許銘傑コーチに『疲れました』と言ってしまった。自分がもう一人投げてから降板すれば、直接、右投手に交替できた。今後はしっかり注意したい」と反省も口にした。

陳冠宇から日本のファンへのメッセージ 次回登板は9月4日予定

 注目の陳冠宇の初登板ということで、この日、桃園国際球場には多くのメディアがかけつけた。試合は4時間半を越え、午後11時過ぎにゲームセット、各メディアによるインタビューは12時近くまで続いたが、陳冠宇は、かつての在籍チームのファンや関係者へ向けたメッセージを依頼すると、疲れもみせずに笑顔で答えてくれた。

 「千葉ロッテマリーンズ、そして横浜DeNAベイスターズのファンを始めとした日本の野球ファンの皆さん、私の台湾プロ野球初登板に注目していただき、ありがとうございます。日本でお世話になったコーチの方々、そして球場で声援を送ってくれたファンの皆さん、感染症の流行が落ち着きましたら、ぜひ、台湾へ試合を見に来てください」

 台湾のファンに加え、日本のファンも球場で陳冠宇に声援を送る。そんな日が一日も早く訪れることを心から願いたい。今季中は日台間の自由な往来は厳しそうだが、台湾プロ野球は有料のOTT「CPBLTV」で、日本からも視聴が可能だ。楽天の曾豪駒監督によると、少し長めの調整期間をとり、次回登板は9月4日の富邦ガーディアンズ戦(桃園)を予定、今後はできるだけ週末に登板させる方針だという。「サタデーチェン」、「サンデーチェン」の活躍に注目だ。

前期シーズンは、中信兄弟が17度目の半期優勝

 前後期60試合制で行われる台湾プロ野球、前期シーズンの結果についてもお伝えしよう。台湾では、市中感染の急拡大により、5月18日から一軍公式戦が、5月19日からは二軍公式戦が一時中断となった。2カ月近い休止期間を経て、ようやく7月13日、一軍公式戦が再開された。

 再開時点で、1位の統一セブンイレブンライオンズと、2位の中信兄弟はゲーム差なしだったが、中信兄弟は、7月下旬から8月上旬にかけ6連勝するなど、再開後7割近い勝率を残し、8月4日に前期優勝マジック7を点灯させた。消化試合数が多かった統一も、中信にプレッシャーをかけるべく、終盤は粘りをみせたが、中信のマジック3で迎えた15日、中信は味全ドラゴンズ戦で、2対3で迎えた8回表に4点奪って逆転勝ちしたのに対し、前期最終戦の統一は、富邦ガーディアンズ戦、4対2で迎えた8回裏に3点奪われ逆転負け、中信のマジックは1となった。

 そして迎えた17日の楽天戦、中信は3回までに7点を奪い主導権を握ると、一時、4点差まで詰め寄られたものの、6回からはハーラーダービートップのホセ・デポーラを今季初めて救援で起用、デポーラは4回をパーフェクトに抑え、9対4で逃げ切り、前期シーズンを制した。中信は、前身の兄弟エレファンツ時代を含め、通算17度目の半期優勝となった。

 中信は休止期間、主砲の張志豪が肘の手術で離脱、戦力への影響が懸念されたが、抜擢された23歳の陳文杰が、14試合連続ヒット、5本塁打とその穴を十分に埋める活躍をみせた。さらに、主将、リードオフマンの王威晨はリーグ再開後、チーム1位の打率.415、出塁率.456をマークし、文字通りチームを牽引した。

 投手陣は頼みの外国人先発陣がぴりっとせず、先発投手の防御率4.90はリーグ最下位だった中、デポーラが11勝(うち先発で10勝)と奮闘、特に再開後、統一戦4試合に先発、いずれも好投し3勝(1引き分け)をもぎ取った。一方、救援投手の防御率は2.39と、リーグ2位、3.73の楽天に大差をつける抜群の安定感をみせた。また、本塁打数はリーグ最多であったものの、エラー数もリーグ最少、優勝までの57試合のバント数45回はこの9年間におけるリーグ最多と、公式球の反発係数が昨年に比べ抑えられたなか、「着実に点を取り、無駄な失点を防ぐ」戦略、意識づけもみられた。

 一方、昨季の台湾王者、統一は、休止期間中に、チーム勝ち頭のテディ・スタンキウィッツが東京五輪メキシコ代表入りを理由に退団したほか、7月下旬には主力先発投手の古林睿煬が指先の皮が剥け離脱するなど投手力がダウン、勝負どころで攻守の脆さも見せ、昨年後期に続く半期優勝はならなかった。

「今はぐっすり眠りたい」林威助・新監督は、チーム支えた救援投手陣に感謝

林威助監督 写真提供:CPBL
林威助監督 写真提供:CPBL

 3年間の二軍監督を経て、昨年12月に一軍監督に就任した林威助監督は、就任最初の半期シーズンでチームを優勝に導くこととなった。

 林監督は、最も苦労した点を問われ、投手起用だったと説明、「先発が安定せず、中継ぎに負担をかけたが、彼らが安定した投球をしてくれたことで、何試合も逆転勝利を収めることができた。これこそチームプレーの精神だ」と述べ、救援投手の奮闘に感謝した。

 林監督はそして、「プレッシャーは本当に大きかったが、我々はチームの皆が一丸となって乗り越えた。選手たちをねぎらってほしい」と述べ、「とにかく今はぐっすり眠りたい」と笑った。

 台湾プロ野球は、基本的には前期、後期の優勝チームによって台湾シリーズが行われるが、前後期共に同一チームが優勝した場合、もしくは、前後期の優勝チーム以外が年間勝率1位となった場合にはプレーオフが行われる。中信は前期優勝で、少なくともプレーオフ進出の権利を手にした。中信兄弟は直近7年で台湾シリーズに6度進出しながら、いずれも優勝を逃しており、林威助監督には、兄弟エレファンツ時代の2010年以来、11年ぶりとなる台湾一の期待が寄せられている。

 なお、注目のドラフト1位、元阪神タイガースの呂彥青(ル・イェンチン)は、後期シーズン、5試合目、8月29日の統一戦、2対3で迎えた8回裏2死1塁の場面で中継ぎ登板、ショートライナーに打ち取り、初登板を飾った。林監督は、次回以降、台中インターコンチネンタル球場での主催試合で先発起用する可能性も示唆した。このほか、中信の二軍には千葉ロッテや阪神でプレーした高野圭佑が在籍している。デポーラ以外の一軍の外国人投手に今ひとつ信頼感がないなか、しっかりアピールし、一軍昇格の機会をつかみたい。林監督率いる中信兄弟の後期シーズンの戦いぶりにも注目だ。

文・駒田 英