前年王者の埼玉西武にとって、今季は厳しいシーズンだった。圧倒的な打力を誇った打線が軒並み不振に陥り、打率はリーグワースト2位の.238に。貯金がつくれず、下位に沈む期間も長かった。しかし、その中でチームを支え、3位浮上に大きな役割を果たしたのが救援陣だ。今季大きな飛躍を遂げた森脇亮介投手、平良海馬投手にシーズンを振り返ってもらった。
「プロに入って自分が勝手に小さくなっていた」森脇投手
47試合に登板し、防御率1.35と好成績を残し、シーズン後半には勝ちパターンの一角を任された森脇投手。今季を「チームとしてはクライマックスシリーズにぎりぎり行けなかったので、悔しいシーズンでした。個人的には良い時も悪い時もあったのですが、ある程度充実したシーズンだったと思います」と振り返った。
昨年から29試合で23四死球だったが、今季は47試合で21四死球と制球面も改善。この数字について森脇投手はルーキーイヤーからの変化をこう語る。
「真っすぐで勝負できたのが良かったです。昨年はコースに決めきらないと打たれるというイメージがあり、ボール先行になって打たれたりという印象でした。今年はコースに決めきれても野手の間を抜かれたらヒット、ど真ん中でも野手が見逃せばストライクと、一種の割り切りが考え方として大きく変わった部分です。
アマチュア時代から基本的には同じ考え方でしたが、プロに入って自分が勝手に小さくなっていたというか。身構えていたという方が正しいかなと思います。(今季は)キャンプのときから西口コーチや豊田コーチにフォームだったりいろいろとアドバイスをもらったりして、段々自分の持っているものが出せてきたと感じています」
10月2日には延長戦の最終回に登板し、プロ初セーブを挙げた。この登板については「その時はいつも通りと思って投げたのですが、気持ちの面では全然違いましたね」と振り返り、「(勝ち負けに)直結しますし、増田(達至)さんはすごいなと思いました。1点差、2点差で登板して、1点2点、3点取られたらそこで試合が終わってしまうというのは……難しいですね」とクローザーの重圧を感じたようだった。
来季については「今年と同じようにやって同じ結果が出るとは思わないので、また一から体や技術をつくって、優勝、日本一に貢献できるように、1試合でも多く投げられればいいかなと思います。真っ直ぐの精度と質を高めていくのと同時に、全部の球種でカウント球にできたり、勝負球にできたりというのを目標にやっていきたいです」と語る森脇投手。今後の活躍にも大きな期待を寄せたい。
「こんなに良い成績を残せると思っていなかった」平良投手
昨季は一軍デビューから印象的な活躍を見せた平良投手だが、今季は54試合で防御率1.87、奪三振率10.53と高卒3年目にして圧倒的な成績を残し、新人王もささやかれる。本人も「こんなに良い成績を残せると思っていなかったので、びっくりしています」と率直な感想を寄せた。
なかでも被打率.129は40試合以上登板したパのリリーフで最も低く、最優秀中継ぎの福岡ソフトバンク・モイネロ投手よりも被安打数は少ない。「ゴロが内野の守備の正面に飛んでくれているので、守備位置も良くて被打率が下がったのではないかと思います」と野手のおかげでもあると語ったが、それでも素晴らしい数字だ。そして印象深い三振を取る投球については「毎回三振を取りにいっているのですが、2ストライクを取るまでの真ん中近辺のボールで打たれたりしないように強い球を投げるように意識していました」と明かした。
今季最も多く対戦した楽天の浅村栄斗選手については「振ってくるし、ホームランもトップだったので怖かったです」とコメント。「ホームランは打たれたくないなと思って投げているのですが、結局1本打たれて……。対戦成績もあまりよくないですし、怖いバッターなので全力で投げています」と強打者の対決を振り返った。
飛躍の要因は元埼玉西武でシアトル・マリナーズの菊池雄星投手との自主トレだ。「昨年12月からアメリカで2カ月ずっとウエイトをしていたのでその成果がしっかり出ていると感じました。下半身から上半身に力を上手く伝えることができたのかなと思います」と語る。菊池投手の印象的な言葉をたずねると「たくさん教えてもらいましたので、1つには選べないです」とその存在の大きさをうかがわせた。
来季は「防御率も今年1点台後半だったので、1点前半くらいまでいけるようにしたいです」と高い目標を掲げた平良投手。シーズン前に挑戦した先発のポジションについては「来季は先発への意識はないです。練習は先発みたいに多く投げていこうかなとは思いますが、来年はリリーフとして」と今のポジションでさらなるレベルアップを図る。まだ21歳という末恐ろしい右腕はどこまで成長を見せるか。
文・丹羽海凪
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