昨季、楽天は上位に助っ人トリオを置く打線を組んだ
開幕シリーズのスタメンオーダーは、いわばチームの所信表明のようなものである。打順の組み方ひとつ見ても「今シーズン、うちはこのように戦っていきます」という意志がよく表れている。
埼玉西武ライオンズは今年の開幕2戦目に通算長打率.505のメヒアを8番に据えた。これは2017年WBCで優勝を果たしたアメリカチームが8番に長距離砲のスタントンを配置したことを彷彿とさせる長攻撃的布陣である。ライオンズは開幕シリーズ1試合平均7.3点と得点を量産した。
では、ここからは私が実際に開幕戦を観戦したロッテvs楽天のオーダーについて見てみよう。以下は楽天の昨年開幕オーダー。OPSは(出塁率+長打率)で算出される、セイバーメトリクスで重視される指標の1つだ。
1番 茂木 OPS.867 HR17
2番 ペゲーロ OPS.846 HR26
3番 ウィーラー OPS.835 HR31
4番 アマダー OPS.729 HR23
楽天は昨シーズン、上位、特に2番打者に長距離砲の助っ人外国人を置く超攻撃型の打線を組んでいた。今シーズンも同様のオーダーで臨むかと思われたが、開幕戦のオーダーは少し違った顔ぶれとなった。
3番に島内、6番に内田が入り、アマダーを7番に据えた。両者ともオープン戦が好調で、特に内田は打率.386でオープン戦の首位打者であり、本塁打も4本放ち、OPS1.152は全体の1位だった。
ただ、その内田が3番ではなく6番に入ったのは、島内が昨年、ロッテの開幕投手である涌井に対して10打数5安打2四球、出塁率.583を記録したという相性の良さからだったと推測される。しかし、内田は開幕2戦で7打席ノーヒット。2戦目途中で交代となった。
島内は2戦目以降も3番で起用され、2戦目にホームランを打ってその起用に応えたが、ヒットはそれを含めて2本のみ。逆にウィーラーとアマダーが打率5割でOPS1.000超え。皮肉にも好調な打者が分断される形となった。
千葉ロッテは12球団唯一、開幕3連戦を不動のオーダーで挑んだ
対する千葉ロッテは12球団で唯一、開幕3戦を不動のオーダーで戦った。
2番に藤岡裕大、6番に菅野と2人のルーキーが開幕スタメンに起用された。これは千葉ロッテでは1997年の小坂誠、清水将海、以来21年ぶりのことだった。
不動のオーダーとなったのは、楽天の先発がすべて右投手であったこと、さらに言えば角中を怪我で欠き、選手層が薄いなど、そう言った台所事情はあったにせよ、この和製オーダーが井口監督の所信表明である。そしてこの新生千葉ロッテ打線が昨年の概念を吹き飛ばす活躍を見せることになる。
特に注目したのは2番の藤岡裕大。開幕戦の初回、1番・荻野が二塁打で出塁。ここでどのような作戦を取るかで井口監督の藤岡裕に期待するものが見える。その答えは強攻策。結果レフトオーバーの二塁打。ランナーの状況判断が悪く打点にはならなかったものの、藤岡裕は強烈なデビューを果たす。
次の打席でも楽天の絶対的エース則本昂大から三塁打を放ち、さらには4打席目にシングルヒット。新人の開幕戦サイクルヒット達成という前代未聞の大記録まであとはホームランを残すのみとなった。スタジアムもそれを察してか「ホームラン!ホームラン!藤岡!」のコールが。
しかし、本人もそれを意識してだろうか、8回はハーマンの高めのつり球に手を出し空振り三振。延長11回、一打サヨナラの場面でも空振り三振とサイクルヒット達成はならなかったが「打てる2番」としてしっかりアピールできたデビュー戦となった。
第2戦では3番・中村、4番・井上がアベックホームランという昨年発動できなかった長打力による攻撃で楽天に勝利。井口監督に初勝利をもたらした。また第3戦では、1点ビハインドの3回、無死2塁から藤岡裕がライトへのタイムリーヒットで同点、相手エラーで逆転したのち菅野が1死二、三塁の場面でタイムリーを放ち4-1と楽天を突き放す。両ルーキーの活躍で開幕カード勝ち越しを決めることとなった。
開幕3戦時点でのデータで早計であることは承知だが、菅野のOPSが1.425、藤岡裕が1.067。今年のルーキーがOPSランキング1位、2位に輝いたのだ。
またチームとしても、OPS.868、16四球はリーグ1位、盗塁5はこの時点でリーグ2位だった。今後も井口采配のお手並み拝見である。
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