シーズン中の奮闘も報われず、今季は5位に終わった北海道日本ハムファイターズ。当然ながら、チーム全員が悔しい思いを残すシーズンだっただろう。しかし、個人成績の観点から見れば好成績を残した選手も多い。今回は、特集動画「シーズンレビュー2019」で試合を振り返り、本記事では選手にフォーカス。前編は投手を中心に、後編は野手を中心に北海道日本ハムの2019シーズンを振り返っていく。
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今季は投手陣が586失点であった一方で、打線が記録した総得点は560点だった。得失点差がマイナスとなっているのは6位のオリックスと2チームだけであったことを考えれば、決定力不足に悩まされたシーズンだったといえよう。ただ、そんな中でもシーズンを通して気を吐いた選手はいる。まずは、規定打席に到達した選手を中心に取り上げたい。
納得の最高出塁率。近藤健介は天性の打撃センスを証明
まずは何といっても近藤健介選手だろう。今季は自己最多の138試合に出場すると、148安打、打率.302の好成績。卓越した打撃技術と抜群の選球眼で、自身2度目のタイトルである最高出塁率(.422)を獲得した。600打席で103四球を選んだが、四球数が100を超えていたのはパ・リーグで近藤選手のみ。当然ながら、走者を塁に出すことは得点につながる。得点力に苦しむ打線において、欠かせない存在だった。特に気を吐いたのが5月で、9日のオリックス戦で安打を放つと、その試合から13試合連続安打を記録し、月間打率.380の好成績だった。
20号の大台へ! 大田泰示は自身二度目の規定打席到達
続いて大田泰示選手。今季は自己最多の132試合に出場し、2017年以来自身2度目となる規定打席に到達。昨季同様、「恐怖の2番打者」として打線に君臨。打率.289、20本塁打、77打点といずれもキャリアハイの活躍を見せた。オリックス・山本由伸投手などが投じるカットボールが今季のトレンドになっていたが、大田選手は同球種に対して打率3割超えと得意にしていた。特に圧巻だったのが4月24日の楽天戦だ。6打数5安打5打点の大暴れで、チームを2桁得点の快勝に導いた。来季で30歳の節目を迎える。チームの中心選手として、北の大地でより一層強い輝きを示したい。
チームを支え続ける主力2人。来季は記録達成がかかるシーズンに
西川遥輝選手はチーム最多の142試合に出場。盗塁数は19と減らしてしまったものの、打率.288、158安打とバットではコンスタントに結果を残し続けた。出場したほとんどの試合で1番を務める一方で、得点圏打率はリーグ5位の.337と勝負強さも発揮。9月27日のシーズン最終戦で安打を放ち、シーズン通算1000安打にあと一本に迫ったものの、同日はその1安打止まり。通算999安打、同じく通算250盗塁にもあと5に迫っている。来季でプロ10年目の節目を迎えるだけに、記録達成で勢いに乗りたい。
中田翔選手は打率.242と粗削りな部分もあったが、24本塁打を放ってプロ3年目から9年連続となる2桁本塁打を達成。7月31日の楽天戦で故障し、強行出場を続けていたものの、翌月に登録抹消となってしまった。シーズンを通してみればまだ不完全燃焼の部分もあるだろう。現在、通算本塁打は226本。単純計算で、今季と同じ本数を放てば通算250本塁打に到達する。今季の悔しさを胸に、大記録に到達、そして超えていってもらいたい。
ベテランの引退。そしてその後を受け継いだ渡邉諒
今季はベテラン・田中賢介選手が開幕前に現役引退を表明して臨んだシーズンだった。5月29日の千葉ロッテ戦では、1点ビハインドの8回裏に代打逆転2ランを放ってチームを勝利に導くなど、「まだまだ現役を続けられるのでは」と思わせる活躍も見せた。「2番・指名打者」で出場した引退試合(9月27日)では、札幌ドームがイメージカラーのピンク一色に。迎えた現役最終打席では、涙の適時二塁打が多くのファンに感動をもたらした。惜しまれながらも、通算1619試合、北海道日本ハムの正二塁手として18年間輝き続け、その選手人生に幕を下ろした。
そして今季、田中賢介選手のかつての定位置である二塁手のポジションをつかんだのが渡邉諒選手だ。今季は、昨季の60試合を大きく上回る132試合に出場し、自身初の規定打席に到達した。5番もしくは6番として試合に出場し、打率.262、11本塁打、58打点を記録。一方で、守備ではリーグワースト5位の11失策と安定感を欠いた。田中賢介選手は美技で多くのファンを沸かせただけに、渡邉選手の守備面での成長にも期待したい。
札幌ドームで躍動した新戦力。王柏融と宇佐見真吾
新戦力の活躍もあった。台湾から来日した助っ人・王柏融選手は故障もあり88試合出場にとどまったが、6月2日のオリックス戦では5打数5安打の活躍を見せるなど、台湾リーグで打率4割を記録した天性の打撃センスも見られた。今季は故障で一時離脱もあっただけに、王選手にはより健康な状態で、「大王」としての活躍に期待したい。同じく、シーズン途中で巨人から加入した宇佐見真吾選手は、後半戦では清水優心選手と交代でマスクを被る試合も見られた。ただ、打率.198と入団前から期待されていた強打は発揮できず。キャンプで研さんを積み、来季の正捕手争いに名乗りを上げたいところだ。
ケガもあったが4番も打った。清宮幸太郎のプロ2年目とファーム期待の若手たち
最後に、来季の北海道日本ハムを盛り上げるであろう若手選手を取り上げたい。まずは何といっても清宮幸太郎選手だろう。開幕前にまさかの骨折で大きく出遅れ、シーズンを通しても打率.204、7本塁打と満足できる結果ではなかったかもしれない。ただ、中田選手の不在時には4番を務めるなど、栗山監督の期待度の高さがうかがえる。同世代では、新人王を獲得した東京ヤクルト・村上宗隆選手が目覚ましいだけに、清宮選手も負けてられないだろう。
同じく、今季活躍の兆しを見せたのが平沼翔太選手だ。自己最多の73試合に出場し、6月には月間打率.313を記録している。7月にはプロ初本塁打、9月には19試合に出場するなど順調にステップアップした。来季、三塁手は固定されていない状況ではあるが、台頭できるか。
来季の順位浮上には、新戦力の台頭が不可欠。ここでは今季のファームで結果を残した2選手を挙げたい。1人目が今井順之助選手だ。ファーム89試合に出場し、規定打席に到達して10本塁打を放った。2人目は万波中正選手。若干19歳ながら90試合に出場し、イースタン・リーグ4位タイとなる14本塁打を記録している。プロ初安打とはならなかったが、一軍の舞台も経験した。両選手の台頭がチームの日本一奪還に一役買うか。
Aクラス復帰、そして優勝へ。打線の厚みがカギ
順位は不本意なものとなってしまったが、近藤選手や大田選手など、リーグ全体で見ても出色の成績を残した選手がいることも事実。Aクラス復帰、そして2016年以来となるリーグ優勝のためには、こうした中軸を際立たせる打線が必要だ。キャンプ、オープン戦を通してアピールに成功した選手が、どこまで打線に厚みをもたせられるか期待したい。
文・吉田貴
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