異なる球団で最優秀中継ぎ投手賞を獲得した選手は、これまで一人もいない
7月16日の試合終了時点で、オリックスのルイス・ペルドモ投手がリーグトップタイの23ホールドポイントを記録している。ペルドモ投手は千葉ロッテ時代の2023年に最優秀中継ぎ投手賞に輝いた実績を持ち、今季は2球団にまたがってのタイトル獲得に期待がかかる。
最優秀中継ぎ投手賞を異なる球団で受賞した投手はこれまで一人も存在せず、ペルドモ投手が今季に同タイトルを獲得できれば史上初の快挙となる。今回は、指標に見るペルドモ投手の特徴と強みに加えて、2005年以降にパ・リーグで最優秀中継ぎ投手賞を複数回受賞した投手たちの顔ぶれについて紹介していきたい。(※成績は7月16日の試合終了時点)
抜群の制球力を生かして打たせて取る投球を展開し、打者を手玉に取っている
ペルドモ投手がNPBで記録してきた、年度別の指標は下記の通り。

通算の奪三振率は6.15とリリーフ投手としては控えめな数字であり、打たせて取る投球スタイルが持ち味だ。また、千葉ロッテ時代の2023年は奪三振率7.28という数字を記録していたが、オリックスに移籍した2024年は同6.11、そして2025年は同4.25と、年を経るごとに奪三振率が低下している。
その一方で、通算の与四球率は1.99と優秀な水準にある。また、2023年の与四球率は2.66という数字だったが、2024年には同0.96と1イニング平均の与四球が1個以下まで減少。続く2025年も同1.82と優れた数字を記録しており、オリックスへの移籍後は制球力がさらなる改善を見せている。
奪三振を与四球で割って求める、投手の能力や制球力を示す指標である「K/BB」も通算で3.08と一定以上の水準にあり、2024年にはK/BBは6.33という抜群の数字を記録。ただし、2025年は奪三振率の低下に伴い、K/BBも2.33と前年に比べて低下している。
現代野球にマッチした投球スタイル
今季は奪三振率やK/BBが低下する一方で、1イニングで許した走者の平均数を示す「WHIP」は1.04と優秀な数字を残している。最多ホールドを受賞した2023年に記録した1.26という数字よりも優れた値となっている点は、非常に興味深い要素と言えよう。
そこで、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す、「被BABIP」という数字についても確認していきたい。被BABIPは一般的に投手自身がコントロールできる要素が少なく、運に左右されやすい指標であると考えられており、一般的な基準値は.300とされている。
2023年の被BABIPは.316と基準値を上回っており、同年は運に恵まれなかったことが示唆されている。しかし、2024年は同.232、2025年は同.253と、オリックスへの移籍後は大きく数字が改善されており、通算の被BABIPも.277まで低下している。
現在のパ・リーグではオリックスを除く5球団の被BABIPが基準値の.300を下回るなど、ヒットになる打球自体がリーグ全体を通じて減少傾向にある。常に奪三振を狙うのではなく、持ち前の制球力を活かして打たせて取るというオリックス移籍後の投球スタイルが、現在のNPBにマッチしていることによって好成績をもたらしている可能性はありそうだ。
パで2005年以降に最優秀中継ぎ投手賞を複数回受賞した投手は3名
ここからは、2005年にタイトルの評価基準がホールドポイントに変更されて以降のパ・リーグにおいて、最優秀中継ぎ投手賞を複数回受賞した投手たちの顔ぶれを見ていきたい。

攝津正氏はプロ1年目の2009年に70試合に登板し、防御率1.47、奪三振率11.52と素晴らしい投球を展開。セットアッパーとしてフル回転の活躍を見せて39ホールドポイントを挙げ、新人王と最優秀中継ぎ投手賞のタイトルを獲得する圧巻のルーキーイヤーを送った。
続く2010年も引き続き勝ちパターンの一角を務め、キャリアハイとなる71試合に登板。防御率2.30、奪三振率9.73と優れた投球内容を示し、前年を上回る42ホールドポイントを記録して2年連続となる最優秀中継ぎ投手賞の座に輝いた。翌シーズン以降は先発に転向して5年連続で2桁勝利を挙げ、マルチな才能を活かして長年にわたって投手陣の主力を務めた。
佐藤達也氏はプロ2年目の2013年に67試合に登板し、防御率1.73、奪三振率10.15と打者を圧倒するピッチングを披露。同年は42ホールドポイントを記録して最優秀中継ぎ投手賞を受賞し、当時のパ・リーグを代表するリリーバーの一人へと飛躍を果たした。
翌2014年も前年と同じく67試合に登板し、防御率1.09、奪三振率10.29と前年以上に支配的な投球内容を展開。シーズン最終盤まで優勝を争ったチームの躍進を支える原動力の一人として、僅差の試合で幾度となく相手打線を封じ込めた。48ホールドポイントを挙げて2年連続となる最優秀中継ぎ投手賞を獲得し、剛球右腕として一時代を築く存在となった。
宮西投手はプロ1年目から14年連続で50試合以上に登板した実績を持つが、初めて最優秀中継ぎ投手賞に輝いたのはプロ9年目の2016年だった。同年は58試合で防御率1.52、42ホールドポイントとセットアッパーとして見事な働きを見せ、同年にチームが大逆転でのリーグ優勝と日本一を果たすうえでも、決して欠かすことができない重要なピースとなった。
2年後の2018年にも55試合で防御率1.80と安定した投球を見せ、41ホールドポイントを挙げて自身2度目の最優秀中継ぎ投手賞を獲得。続く2019年も前年と同じ55試合で防御率1.71、奪三振率9.70と自らの役割を果たし、2年連続3度目となるタイトルを獲得。その後も投手陣の精神的支柱として、40歳を迎えた現在に至るまで息の長い活躍を続けている。
自身2度目の40ホールドポイント超えを果たし、史上初の快挙を達成できるか
今回取り上げた3名の投手たちは、いずれもタイトル獲得年に39ホールドポイントを超える数字を残した。ペルドモ投手は2023年に42ホールドポイントを挙げ、今季もチームが83試合を消化した時点で23ホールドポイントを記録しているだけに、このまま自身2度目の40ホールドポイント超えを達成できれば、成績面でも先達たちに比肩する存在となりうる。
今回取り上げた3名の投手たちは、いずれも一つの球団のみでキャリアを過ごしてきた経歴の持ち主でもある。NPB史上初となる「2球団での最優秀中継ぎ投手賞」に挑むペルドモ選手が残るシーズンで見せる投球に、今後はあらためて注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太
