苦手な球種からリーグ屈指の決め球へ。千葉ロッテ・田中晴也の台頭を支える宝刀

パ・リーグ インサイト

2025.7.7(月) 08:00

千葉ロッテ・田中晴也投手【写真:球団提供】
千葉ロッテ・田中晴也投手【写真:球団提供】

高い奪三振能力を武器に台頭

田中晴也投手 年度別投手成績©データスタジアム
田中晴也投手 年度別投手成績©データスタジアム

 2022年のドラフト3位で千葉ロッテマリーンズに入団した田中晴也投手。高卒2年目の昨季は6月に一軍デビューを果たすと、2度目の登板となった7月3日の北海道日本ハム戦でプロ初勝利をマーク。今季もここまで8試合に登板してチームトップタイの3勝、防御率2.47と先発陣の一員として存在感を示している。特に47回1/3を投げて49個の三振を奪うなど、奪三振率は先発投手のリーグ平均6.61を大きく上回る9.32を記録。本稿では台頭する田中投手のピッチングを探っていく。

追い込んだ後は直球とフォークで勝負

2025年ストライクカウント・球種別投球割合©データスタジアム
2025年ストライクカウント・球種別投球割合©データスタジアム

 まずは球種別の投球割合を見ていきたい。打者を追い込む前の0・1ストライク時は平均球速150.1km/hのストレートを軸としながら、フォーク、カットボール、スライダー、チェンジアップをバランスよく投げ分けている。一転して2ストライク時はフォークの割合が約20%アップしており、ストレートとフォークの2球種で投球の約8割を占めている。セールスポイントである力強い直球と並び、フォークを主な勝負球として投じているようだ。

レジェンド直伝のフォークが威力を発揮

2025年フォーク成績©データスタジアム
2025年フォーク成績©データスタジアム

 ここからは決め球の1つであるフォークを掘り下げていきたい。かつて田中投手はフォークを「一番苦手としているボール」とコメントしていたが、2024年の春季キャンプで野茂英雄氏から握り方などの指導を受け、その後は精度面が向上。今季もここまで被打率.167をマークしており、リーグ平均を大きく上回る奪空振り率25.7%を記録。また、インプレー打球となった28球のうち19球がゴロ打球となるなど、田中投手のフォークは空振りを量産しているだけでなく、バットに当ててもヒットにすることが難しい球種といえるだろう。

ウイニングショットとして圧倒的な成績をマーク

2025年2ストライク時の球種別被打率©データスタジアム
2025年2ストライク時の球種別被打率©データスタジアム

 ここまで2ストライク時の被打率.154、被出塁率.212を記録するなど、追い込んだ後は相手打者をねじ伏せる投球を見せている田中投手。中でもフォークは同条件で40打数3安打とほとんどヒットを許しておらず、奪った三振数も球種別で最も多い20個。ウイニングショットとして申し分ない成績を残しているフォークが、ここまでの台頭を支えているのは間違いないだろう。

低め投球時はとにかく打たれないフォーク

2025年フォーク高低別投球割合・被打率©データスタジアム
2025年フォーク高低別投球割合・被打率©データスタジアム

 フォークの高低別のデータを見てみると、低めに決まったときに一層の効果を発揮している。変化球は低めほどバッターを打ち取りやすいというのは全体の傾向も同様だが、田中投手の低めへのフォークは被打率.114とリーグでも上位の好数字を残しているのだ。ただ、低めへの投球割合はリーグ平均が73.8%なのに対し、田中投手は63.9%止まり。カウント球として意図的に高めから落とそうとする配球も考えられるため一概には言えないが、フォークを低めに投げきる場面を増やすことができれば、さらなる成績の向上も見込めそうだ。

 6月7日の中日戦では7回1失点、自己最多となる9奪三振をマークするなど、改めてスケールの大きさを感じさせる投球を披露した田中投手。ここまでは間隔を空けての登板が続いているが、チームの主力投手へ着実に歩みを進めている。年齢も今年6月に21歳となったばかりで、まだまだ伸びしろも大きい。非凡なポテンシャルを備える若手右腕のピッチングに今後も注目していきたい。

※文章、表中の数字はすべて2025年6月26日終了時点

文・データスタジアム

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