課題は明白だった。チーム打率.212、350得点、60本塁打。いずれもリーグ最下位の成績で、投手が好投しても打線が援護できない試合が続いた。貧打に苦しんだ2024シーズン、埼玉西武ライオンズの野手陣を振り返る。
光る源田壮亮の存在感 「トノゲン」の堅実な守備は健在
キャプテン・源田壮亮選手は、苦しい中でもチームを引っ張った。全143試合に出場。シーズン序盤は打率2割台前半と苦しむも、7月に調子を上げ、月間打率.345をマーク。その後もコンスタントに安打を放ち、打率.264でシーズンを終えた。8月17日の東北楽天戦では4安打を放ち、同22日には自身初のサヨナラ打をマーク。貧打にあえぐチームで存在感を示した。
中でも印象的だったのは9月15日の千葉ロッテ戦。この日引退を迎えた戦友・金子侑司選手を2塁に置き打席が回ると、ライトスタンドへの3号2ランを放ち、ホーム生還後に金子侑選手と熱い抱擁を交わした。また守備力も健在で、三井ゴールデン・グラブ賞を7年連続7回目の受賞。今季もたまらんプレーでファンを沸かせた。
今季から選手会長を務めた外崎修汰選手は127試合に出場。打率.227と苦しんだシーズンになった。5月4日の福岡ソフトバンク戦では、チームの延長戦15連敗を止めるサヨナラ打を放つと、9月7日には通算100本塁打を達成。来季はさらにレベルアップして、シーズンを迎えたい。また、守備面では数多くチームに貢献。堅実な「トノゲン」の二遊間で、多くのアウトをもぎ取った。
山村崇嘉が一時4番起用。シーズン終盤は佐藤龍世が定着
かつて松井稼頭央氏や浅村栄斗選手が着け、出世番号としても知られる背番号「32」。その系譜を継いだ高卒4年目・山村崇嘉選手が、キャリアハイの58試合に出場した。シーズン序盤は外野手で起用されるなど、一軍に帯同するも、4月下旬に登録抹消。6月後半に再昇格すると、7月15日に初の4番に座った。7月17日のオリックス戦では、自身本拠地第1号となるソロ本塁打をたたき込む。しかし8月は25試合で打率.202と苦しみ、9月以降はファームでの調整が続いた。
シーズン終盤に4番に座ったのは佐藤龍世選手。背番号を変更して臨んだシーズンだったが、開幕から調子が上がらず、打率は1割台に低迷。6月12日の広島戦で骨折し、2カ月戦線を離脱した。しかし、ファームでの調整を経て8月12日に一軍昇格を果たすと、8月は月間打率.386の大活躍。シーズン終盤は不振の山村選手に代わって4番に入り、チームをけん引した。豪快なスイングも特徴だが、出塁率の高さも魅力。チーム2位の37四球を選び、出塁率.330を記録した。
シーズン途中には野村大樹が加入。内野の争いも激化
今季、東京ヤクルトからトレードで加入した元山飛優選手。結果的に打率.143と物足りない成績に終わったが、9月1日の北海道日本ハム戦では逆転サヨナラ打を放ち、ポテンシャルの高さを見せつけた。
7月5日に福岡ソフトバンクからトレードで加入した野村大樹選手は、キャリアハイの成績を残した。自身最多の59試合に出場し、40安打、5本塁打、22打点をマーク。長打率.406と、パンチ力のある打撃で出場試合数を伸ばしていった。来季はさらに確実性を上げ、バットでチームに貢献したい。
好調の中ケガに泣いたのは、平沼翔太選手だ。5月は月間打率.306と数字を残していたが、5月30日の中日戦で負傷交代。そのまま登録抹消となった。その後は、8月29日の千葉ロッテ戦で一軍復帰。4安打2打点の活躍でチームの勝利に貢献するも、9月以降は60打数12安打、打率.200に終わった。しかし、シーズン通してみれば打率.265、得点圏打率は.375と健闘。来季はシーズン通じて一軍で活躍したい。
西川愛也がキャリアハイ レギュラー不在の外野に光が
レギュラー不在の外野陣で飛躍のシーズンを過ごしたのが、西川愛也選手だ。昨季の41試合から倍以上に数字を伸ばし、自己最多の104試合に出場。打率は.227だったものの、71安打、6本塁打、31打点はキャリアハイとなった。本塁打数はチーム4位タイと、ここぞの1本も放ち、長打力で結果を残した。今季放ったすべての本塁打は、7月以降。シーズン終盤にかけ存在感が増し、中軸を任される試合も多かった。得点圏打率.347は100打席以上立った打者でチーム2位の数字。センターの守備でもファンを魅了し、守備範囲の広さで数々のピンチを防いだ。
新外国人の不振。期待の若手のけが
長打力不足を補うため加入した新外国人のアギラー選手、コルデロ選手は結果を残せず。長い間主軸で活躍していた山川穂高選手、森友哉選手らの穴が埋まらず苦しんだ。
ベテラン・中村剛也選手は、5月25日にNPB歴代10位となる通算477本塁打をマーク。結果的にはチームトップタイの7本塁打を放つも、右手関節炎により7月10日を最後に一軍出場なしに終わった。栗山巧選手は、勝負強さを武器に代打で一定の結果を残しているが、若手の台頭が待たれる。
ドラフト6位ルーキー・村田怜音選手は、一軍の舞台を経験した。5月11日の東北楽天戦でプロ初出場。初打席で初球を振り抜き、プロ初安打をマークすると、14日の北海道日本ハム戦では、プロ初打点を記録した。しかし、翌日の試合で負傷交代。その後は9月23日の二軍戦で実戦に復帰、そのままシーズンを終えた。
3年目捕手の古賀悠斗選手は、チーム3位の105試合に出場。外野手では、岸潤一郎選手が98試合、長谷川信哉選手が72試合、蛭間拓哉選手が63試合に出場したが、定位置をつかむ選手は現れなかった。
Bクラスが確定しても、最下位が決まっても球場には多くのファンが訪れた。この声援を心に刻み、来季は1人でも多くの若獅子が一軍の舞台で躍動することに期待したい。
文・谷島弘紀
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