杉谷拳士が台湾で王柏融と再会。ファイターズガールはきつねダンス披露で日台の架け橋に 【パ・リーグ台湾プロモーション前編】

駒田英(パ・リーグ インサイト)

2024.7.8(月) 18:00

杉谷拳士氏による野球教室(C)PLM
杉谷拳士氏による野球教室(C)PLM

パ・リーグ中継は今年で12年目、台湾市場を重視してきたPLM

 パシフィックリーグマーケティング(以下、PLM)は、6月14日から16日の3日間に渡り、台湾でパ・リーグのプロモーション活動を展開した。

 PLMと台湾市場のつながりは深い。2009年、台湾の放送局と初めて配信パートナーシップ契約を締結したPLMは、2014年、前年のWBCの活躍で国民的英雄となった陽岱鋼が当時所属していた北海道日本ハムファイターズの主催試合の放映をスタート、放映試合は台湾人選手の所属球団を中心に年々増加していった。

 その後、中継放送局の台湾市場撤退など、困難な状況にも直面したが、PLMは、必死にバトンをつないできた。12年目となった今季は、DAZN台湾とパートナーシップ契約を締結、台湾華語による実況解説つきのメインチャンネルを含め、連日配信し、中継試合はパ・リーグ6球団の主催試合だけで、年間400試合以上に達する。

 当初は、台湾人選手の応援を目的に見はじめたファンも、自然にチームメイトや他チームのスター選手に興味をもつようになるため、パ・リーグの選手の認知度は高い。そして、パ・リーグの台湾市場への重視ぶりは伝わっており、「親しみを感じる」と口にする野球ファンは少なくない。

 PLMは昨年、楽天モンキーズ主催の日本イベント「YOKOSO桃猿」において、パ・リーグ6球団のブースを出展、そして、台湾プロモーション3か年計画2年目の今年は、台湾のパ・リーグファンの熱い声援に感謝の意を示そうと、富邦ガーディアンズとタッグを組み、より活動の範囲を広げて行う事を決定。6月15、16日、富邦の本拠地、新北市の新荘球場で行われる日本イベント「わくわく日本祭」での各種PR活動に加え、グローバルな野球の発展を願い、14日と16日に、現地の子どもたち向けの野球教室を2回実施することとなった。

杉谷拳士氏が台北日本人学校で野球教室、記者顔負け質問も

 画期的な今回のプロモーションにおいて、PLMが「アンバサダー」役として白羽の矢を立てたのが、ファイターズ時代、台湾出身の陽岱鋼、王柏融と親しく、現役時代から、オフに幾度も台湾を訪れ、現地でも高い知名度、人気を誇る杉谷拳士氏だった。

 まず14日の午後、台北市内の台北日本人学校で、杉谷氏による野球教室が行われた。中学部、小学部の順で行われた教室は、初めてボールを握ってからまだ数週間という小学校低学年の女の子から、甲子園を夢みる男子中学生まで、参加者のレベル差は大きかったが、杉谷氏は一人ひとりの名前を呼んでコミュニケーションをとり、レベルに合わせてお手本をみせながら、簡潔な言葉で指導を行った。目にみえて上達する子どもたちの姿に、杉谷氏も思わず顔をほころばせた。

 練習後、すっかり打ち解けた子どもたちからは、記者顔負けの質問も飛び出した。杉谷氏は、プロで14年間プレーできた秘訣を問われると、毎日入念なストレッチを通じ、体と対話しながら人一倍コンディション維持に気を使っていたと説明、また、スイッチ転向をきっかけについては、小柄な身体でプロの世界を勝ち抜くために、左打ちをマスターし、俊足を生かそうと考えたからだと明かした。さらに、現役時代、一軍で守った投手、捕手以外の7ポジション中、最も好きだったポジションはセカンドだと打ち明け、その理由について「野球を細かく知ることができ、野手のなかで唯一反対の動きをするから」と説明した。貴重な話の数々に、子どもたちはもちろん、指導者や父兄の皆さんも興奮を隠しきれない様子だった。

 杉谷氏は、盛り上がった台北日本人学校での指導を振り返り、「現場でしか感じることができない『熱』というものを自分のなかでも感じたかったですし、何より全員に共通していえるのは、野球が好きなんだという思いに溢れていたこと。それを確認することができて、とても嬉しかったです」と充実感をにじませた。

PLMの「野球を通じた社会貢献、公益活動」という構想に、富邦が呼応

 翌15日からは、富邦の本拠地、新北市・新荘球場で、PLMおよび北海道日本ハムとのコラボイベント「わくわく日本祭り」が、2日間にわたって開催された。同日午後、台湾メディア向けの記者会見が行われ、富邦球団の陳昭如総経理、PLMメディアライツ事業部海外グループマネージャーの高木隆氏、そして杉谷氏が出席した。

 富邦球団の陳昭如総経理はまず、「ガーディアンズは2016年のチーム設立以来、北海道日本ハムファイターズさんと良好な関係を築いてきた。そして、この2年間はパ・リーグさんとも、さまざまなマーケティングに関し、意見交換、交流を進めてきた。今年のイベントは、そうした交流の中で実現した」と経緯を説明、さらに、翌16日午前の野球教室について、今回、PLM野球教室を通じた台湾での社会貢献、公益活動を行いたいという強い要望があったことを説明、これに呼応する形で、地元・新北市の小学校2校を新荘球場に招待し、杉谷氏に加え、富邦からも元日本ハムの稲田直人一軍内野統括コーチ、垣内哲也一軍打撃統括コーチ、高國輝二軍打撃コーチらが指導を行うことを発表した。

 今回、企画立案・運営を担ったPLMの高木氏は「パシフィック・リーグが今、どんどん世界に向け発信を続けているなか、ガーディアンズさんとのコラボは台湾野球文化の更なる発展や現地社会にパ・リーグが深く根付く大きな一歩だと思います」とその意義を強調、PLMのより一歩踏み込んだプロモーションに対する陳総経理はじめ富邦球団の理解、協力に感謝した。

杉谷氏ファンミーティングは大盛況、富邦&北海道日本ハムコラボグッズも即完売

 この日、新荘球場のコンコースには、PLMや北海道日本ハムのほか、日本のグルメや文化を体験できるさまざまなブースが出展、なかでも、パ・リーグ6球団のユニフォームを着用しての記念撮影や、くじ引きでサインボールなどのグッズが当たるPLMのブースは人気を集めた。

 今回のイベントのために準備された富邦と北海道日本ハムのコラボグッズは、販売時から話題となり、特にファイターズの黒のプラクティスユニフォームを基調としたガーディアンズユニはオンライン分が即完売、再入荷したこの日も、グッズショップは長蛇の列となった。

 屋外ステージで行われた杉谷氏のファンミーティングも大盛況だった。正解すると台湾人選手のグッズがもらえるクイズでは、少しでも杉谷氏にアピールしようと、ファイターズ時代の陽岱鋼のユニフォームを掲げるファンも出現、続いて行われたサイン会は、当日グッズショップで一定額購入した先着35名限定というプレミアムチケットだったが、こちらも瞬殺。わざわざ香港からかけつけたという熱狂ファンは、杉谷氏との対面に感極まっていた。

Fubon Angelsとファイターズガールの「共演」、きつねダンス、衣装も話題に

 杉谷氏はその後もマルチな活躍をみせた。ガーディアンズのスターティングメンバーを流暢な発音で読み上げ歓声を受けると、始球式の前には、試合前に再会を果たした、この日の対戦相手、台鋼ホークスの王柏融に向け、「日本ではご馳走してばかりだったから、ぜひ台湾ではご馳走してもらいたい」とおねだり。ベンチの王柏融も両手でOKマークをつくり、ガーディアンズファンも爆笑した。 

 そして、忘れてはならないのが、日台のチアチームたちの「夢の共演」だ。試合開始前、「Fビレッジアンバサダー」の滝谷美夢さんがブース紹介を行った後、富邦ガーディアンズのチアリーダーFubon Angelsのメンバーと、来台したファイターズガールのメンバー4人は「きつねダンス」を披露、スタンドでは一緒に踊るファンも現れた。
 
 高温多湿で、体感気温は約40度という過酷な状況だったにも関わらず、日台のチアチームは、試合中もステージで互いにコミュニケーションをしながら、笑顔を絶やさずにファンをリード、特にパ・リーグ6球団のユニフォームを着たFubon Angelsのメンバーは注目を集めていた。そして試合の後半、日本イベントならでは、といえる浴衣に着替えたFubon Angelsのメンバーたちに、ファンからも「かわいい!」という声が飛んでいた。

文・駒田 英

関連リンク

【台湾プロ野球だより】新旧侍J監督が門出お祝い、王柏融が牽引する新球団台鋼ホークス
【台湾プロ野球だより】日本人監督、日本人先発対決も実現、ピッチクロックも正式導入
【台湾プロ野球だより】16年ぶり6球団制、ファン待望の台北ドーム開催でCPBLは新時代へ
【台湾プロ野球だより】今季一軍参入、台鋼ホークスが始動(1) 新ユニフォーム発表、王柏融が初代主将就任
台湾在住記者がファイターズファンに送る、「台湾の宝」孫易磊(スン・イーレイ)徹底ガイド

記事提供:

駒田英(パ・リーグ インサイト)

この記事をシェア

  • X
  • Facebook
  • LINE
  • パ・リーグ.com トップ
  • ニュース
  • 杉谷拳士が台湾で王柏融と再会。ファイターズガールはきつねダンス披露で日台の架け橋に 【パ・リーグ台湾プロモーション前編】