あらゆる面でホークスにマッチした存在に? 新戦力・ウォーカーに期待される役割とは

パ・リーグ インサイト 望月遼太

福岡ソフトバンクホークス・ウォーカー選手(C)パーソル パ・リーグTV
福岡ソフトバンクホークス・ウォーカー選手(C)パーソル パ・リーグTV

 2023年11月6日、アダム・ウォーカー選手が高橋礼投手・泉圭輔投手とのトレードで、巨人から福岡ソフトバンクに移籍することが発表された。巨人で2シーズンにわたって活躍したウォーカー選手にとって、パ・リーグ球団でのプレーは初めてとなる。

 今回は、ウォーカー選手のNPBでの球歴に加え、昨季の福岡ソフトバンクのチーム事情について紹介。新天地においてウォーカー選手に求められる役割について考えていくとともに、溌剌としたプレーでファンに愛された助っ人の今後の活躍にも期待を寄せたい。

新たな環境にいち早く適応し、来日1年目から好成績を記録

 ウォーカー選手がNPBで記録した、年度別成績は下記の通り。

ウォーカー選手 年度別成績(C)PLM
ウォーカー選手 年度別成績(C)PLM

 ウォーカー選手は2021年オフに巨人に入団。来日初年度の2022年は主にレフトを務め、124試合に出場。打率.271、23本塁打、52打点、OPS.821と、持ち前の強打をNPBの舞台でも大いに発揮。近年は日本球界への適応に苦しむ助っ人打者が少なくない中で、いち早く新たな環境に適応して奮闘した点は特筆に値しよう。

 続く2023年はさらなる活躍が期待されたが、同じく外野手のブリンソン選手が加わったことによる外国人枠との兼ね合いもあってか、出場試合数が前年の半数以下となる57試合に減少。限られた出場機会の中で6本塁打、OPS.758と一定の存在感は示したものの、前年に比べてやや不完全燃焼のシーズンとなった。

2023年の福岡ソフトバンクでは、外国人野手がそろって苦しいシーズンを送っていた

 ウォーカー選手の加入にあたって、無視できないデータが一つ存在する。2023年に福岡ソフトバンクの外国人選手が残した成績は、下記の通りとなっている。

福岡ソフトバンク 外国人打者の2023年打撃成績(C)PLM
福岡ソフトバンク 外国人打者の2023年打撃成績(C)PLM

 記録した本塁打数は4名合わせて1本のみで、打率.200を超えた選手は存在せず。来日2年目のガルビス選手は強打のユーティリティとして活躍したMLB時代の輝きを見せられず、新助っ人のアストゥディーヨ選手とホーキンス選手も日本球界への適応に苦しんだ。

 6月には前年までチームの主力打者として活躍し、NPB通算184本塁打、545打点の実績を残したデスパイネ選手を緊急補強。起爆剤として大きな期待が寄せられたが、37歳と年齢を重ねた影響もあってか、打率.071、0本塁打と振るわず、往年の力は発揮できなかった。

 外国人野手が総じて機能しなかったことによって、栗原陵矢選手の不振・故障をカバーすることも困難に。ともに打撃タイトルを獲得した柳田悠岐選手と近藤健介選手の後を打つ5番打者を固定できなかった点が、後半戦の失速を招く要因の一つとなった。

 そのため、既に日本球界で実績を残しているウォーカー選手の加入が、チームにプラスをもたらす可能性は高くなっている。また、ウォーカー選手と同じく2022年に巨人でプレーしたポランコ選手が、2023年に千葉ロッテに移籍して本塁打王のタイトルを獲得したことも、ウォーカー選手にとっては追い風といえる要素だ。

右の強打者が不足している点も、ウォーカー選手がマッチする要因の一つ

 それに加えて、右の強打者が不足しているというホークスのチーム事情も、新天地におけるウォーカー選手の存在価値を高めることにつながりそうだ。

 近藤選手、柳田選手、中村晃選手はいずれも打率ランキングのトップ10に入る活躍を見せたが、この3選手はいずれも左打者。他の主力野手の顔ぶれを見ても、栗原選手、柳町達選手、周東佑京選手、三森大貴選手、牧原大成選手、川瀬晃選手と、左打ちの選手が非常に多い構成となっている。

 その一方で、右打者で100試合以上に出場したのは、今宮健太選手と甲斐拓也選手の2名のみ。また、リチャード選手、野村勇選手、野村大樹選手といった若手の右打者が、一軍で十分な結果を残せていない点も気がかりだ。20歳の井上朋也選手の台頭という明るい材料はあったものの、打線の主軸として期待できる右打者の不足は大きな課題となっている。

 ウォーカー選手は2022年にシーズン23本塁打を記録した右打ちの長距離砲であり、まさにチームのニーズにマッチした存在だ。さらに、2年続けて長打率.480、OPS.750を上回る成績を残した点も、新天地においては大きな意味を持ちうる。

 2023年の福岡ソフトバンクで30試合以上に出場した選手のうち、OPSが.700を上回ったのは近藤選手と柳田選手の2名だけ。主軸への依存度が非常に高かったことが、この数字からも読み取れる。2年続けて一定以上のOPSを記録したウォーカー選手が2024年も同様の活躍を見せれば、打線の生産性向上にもつながる可能性は大いにあることだろう。

ウォーカー選手自身にとっても、パ・リーグへの移籍はプラスになりうる

 そして、ウォーカー選手本人にとっても、今回の移籍によって恩恵を受けられる可能性は十二分に存在する。ウォーカー選手は指名打者制度が存在しない巨人時代は、外野の守備、とりわけ送球面における課題を指摘されることが多い選手でもあった。

 本人の野球に対する真摯な姿勢もあって守備力も徐々に向上が見られたが、守備難が昨季に出場機会を減らした原因の一つとなった可能性は否めない。その点、指名打者制度が導入されているパ・リーグ球団への移籍は、出場機会の増加・打撃に集中できる環境を得られるという2つの点において、大きなメリットとなることが予想される。

 ただし、柳田選手は近年に入ってからDHでの出場も増え始めており、年間を通して外野の守備に就くことは難しくなってきている。また、ウォーカー選手と同じくレフトを主戦場とする近藤選手もキャリアを通じて少なからず故障に悩まされており、こちらも2023年はDHでの出場が少なくはなかった。

 そのため、ウォーカー選手がDHをメインに出場を重ねるためには、相応の打撃成績を残すことが求められることになりそうだ。2024年に自らの実力で前年以上の出場機会を勝ち取り、主力打者の一角に定着できるか否かが、ウォーカー選手の今後のキャリアを占ううえでも、非常に重要な要素となることだろう。

4年ぶりのV奪回を狙うチームにとって、ウォーカー選手がラストピースとなるか

 高橋礼投手は、2019年に12勝を挙げて新人王に輝くなど、希少な速球派のサブマリンとして、先発・中継ぎの双方でチームの日本一に貢献。泉投手は5年間で118試合に登板して23ホールド、防御率3.00を記録し、貴重な中継ぎとして幅広い起用に応えてきた。

 主力投手としてチームに貢献した両投手を放出して獲得したウォーカー選手にかかる期待は、当然ながら大きなものがある。裏を返せば、福岡ソフトバンクはそれだけのリスクを負ってでもウォーカー選手を獲得したいと判断した、という見方もできる。

 今回の記事で指摘した通り、ウォーカー選手はさまざまな意味で現状のチームにマッチした特性を持っている。パワーのある右打ちの助っ人を切望する福岡ソフトバンクにとって、ウォーカー選手がかつての李大浩選手やデスパイネ選手のような、V奪回へ向けた「ラストピース」となりうる可能性は十二分にあることだろう。

 直近6年間でリーグ優勝を果たしたのは1度のみと、岐路に立たされている福岡ソフトバンク。日本シリーズ終了直後に成立した今回のトレードが、常勝軍団復権に向けた第一歩となるか。新天地でウォーカー選手が見せてくれるであろう全力プレーに、ファンならずとも要注目だ。

文・望月遼太

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