オリックスが王者の貫禄! 1点差ゲームから見るパ・リーグ6球団の戦いぶり

パ・リーグ インサイト

2024.1.18(木) 14:00

サヨナラ打を放った若月健矢選手【4月30日 オリックス対千葉ロッテ】(C)パーソル パ・リーグTV
サヨナラ打を放った若月健矢選手【4月30日 オリックス対千葉ロッテ】(C)パーソル パ・リーグTV

 ファンの目線で見たとき、1点差ゲームは非常に盛り上がる一戦と言って間違いないだろう。ハラハラ・ドキドキした分、勝利のうれしさはひとしおで、敗れたときはより一層悔しさを感じる。

 2023年シーズンでは、1点差で決着した試合が157試合あった。全483試合のうち3割以上を占めており、多少なりともシーズンの行方を左右していたと言えそうだ。

 各球団の1点差ゲームの勝率をまとめると、以下の通りになった。

1点差勝率(C)PLM
1点差勝率(C)PLM

 上位4チームの1点差ゲーム勝率は、シーズン勝率を上回っている。今回はさらに、1点差ゲームの試合展開に応じて、勝利した試合を「逃げ切り」または「逆転勝ち」、敗れた試合を「追い上げ及ばず」または「逆転負け」の2パターンに分類(※)。1点差ゲームの内容から、各球団の戦いぶりを振り返っていく。

※ここでは、それぞれを次のように定義した。
・「逃げ切り」=一度もビハインドの状況がない(1対0のサヨナラ勝ちを含む)
例1:東北楽天が5回に1点を先制し、6回に追い付かれるも、7回に勝ち越して勝利(4月2日 北海道日本ハム戦)
例2:千葉ロッテが3回に1点先制し、6回に追加点。9回に1点返されるも、リードを保ち勝利(7月5日 埼玉西武戦)

・「逆転勝ち」=「逃げ切り」以外

・「追い上げ及ばず」=一度もリードしている状況がない(0対1のサヨナラ負けを含む)
例3:オリックスが5回までに4点リードされ、その後3点を返すも追い付かず敗戦(5月12日 福岡ソフトバンク戦)
例4:1対4で迎えた6回裏、千葉ロッテが一挙3得点で同点に追い付くが、8回表に再度1点を勝ち越され敗戦(6月30日 東北楽天戦)

・「逆転負け」=「追い上げ及ばず」以外

パ・リーグ3連覇のオリックスは投打に高い完成度

1点差ゲーム勝率.683(28勝13敗)
・「逃げ切り」14勝、「逆転勝ち」14勝
・「追い上げ及ばず」7敗、「逆転負け」6敗


 リーグ3連覇を達成したオリックスは唯一、6割を超える1点差ゲーム勝率を記録。リーグ最多タイとなる28勝、黒星も同最小の13敗にとどめた。

 内訳を見ても、「逃げ切り」と「逆転勝ち」、「追い上げ及ばず」と「逆転負け」の数に大きな差はない。守り勝つ野球・打ち勝つ野球のどちらにも対応できているということだ。オリックスといえば、リーグトップのチーム防御率に代表されるように、投手力の高い印象が強いが、打撃面でも打率や本塁打数、長打率といった指標で1位となっている。投打ともに隙のないチームだということが、1点差ゲームの内容からもうかがえた。

東北楽天は投手陣の整備が上昇のカギか

1点差ゲーム勝率.565(26勝20敗)
・「逃げ切り」13勝、「逆転勝ち」13勝
・「追い上げ及ばず」7敗、「逆転負け」13敗


 シーズンでは4位に終わった東北楽天だが、1点差ゲームの勝率はリーグ2位の数字を残した。1点差ゲーム勝率とシーズン勝率との差はリーグで最も大きく、「昨季最も接戦で力を発揮したチーム」だと言えるだろう。

 とはいえ、逆転負けの数が突出している点は見逃せない。東北楽天は、チーム防御率が2年連続でリーグ最下位と投手力に課題を抱えており、リードを守り切れない展開が多くあった。そんななか、ルーキーながら51試合に登板し、防御率2.40という好成績を残した渡辺翔太投手、先発として5勝を挙げた荘司康誠投手といった新戦力が台頭。逆襲への準備が着々と進められている。

先発投手不足が痛手となった千葉ロッテ

1点差ゲーム勝率.549(28勝23敗)
・「逃げ切り」11勝、「逆転勝ち」17勝
・「追い上げ及ばず」15敗、「逆転負け」8敗


 千葉ロッテは、シーズンの順位からは一つ順位を落とし、1点差ゲーム勝率では3位に。7月に5試合続けて1点差ゲームをものにするなど、オリックスに並ぶ28勝を挙げたものの、リーグワースト3位となる敗戦数が足を引っ張った。

 敗戦のうち、特に「追い上げ及ばず」の割合が約65%と大きい。「逆転勝ち」も60%超を占めていることから、早い段階で相手チームに得点を許して追いかける展開、つまり、先発投手が試合をつくれないケースそのものが多いという可能性が高い。千葉ロッテにとって、2023年は先発投手の不足に苦しんだ年でもあり、パーソル CS パという大一番にブルペンデーを敢行したほどだった。先発陣が充実すれば、2024年にはさらなる高勝率も見えてきそうだ。

福岡ソフトバンクの失速は救援陣の疲労が影響か

1点差ゲーム勝率.524(22勝20敗)
・「逃げ切り」11勝、「逆転勝ち」11勝
・「追い上げ及ばず」10敗、「逆転負け」10敗


 福岡ソフトバンクも、シーズン順位から一つ下げる4位となった。それでもなお、シーズン勝率よりは高い勝率をマークしている。試合内容の内訳はすべて10勝・10敗前後でまとまっており、オリックス同様にバランス型のチームだということがわかる。

 なかでも特徴的だったのが、逆転負けを喫した10試合だ。このうち、9試合が7月以降に集中していた。2023年の福岡ソフトバンクでは先発投手の早期降板が目立ち、パ・リーグで唯一、規定投球回到達者不在。そのため、後半戦に逆転負けが増えたのは、春先からチームを支えた救援陣の疲労が影響したと考えられる。7月1日の登板を最後に、セットアッパーのモイネロ投手が離脱してしまったことも大きいだろう。

埼玉西武は「逆転勝ち」がリーグ最少に

1点差ゲーム勝率.375(18勝30敗)
・「逃げ切り」12勝、「逆転勝ち」6勝
・「追い上げ及ばず」14敗、「逆転負け」16敗


 埼玉西武の1点差ゲーム勝率は4割を下回り、リーグ勝率からは大きく離れた数字となった。2018~19年にリーグ連覇を達成した際は、1点差の試合でも勝ち越しており、2018年には7割を超える勝率をマークしていたことを踏まえると、接戦を勝ちきれなくなったことが低迷の一因になっているようだ。

 勝利した試合のうち、「逆転勝ち」数は「逃げ切り」の半分にとどまり、6勝はリーグ最少でもある。2023年は、得点圏打率がリーグ最下位の.220、本塁打数もリーグで唯一の2桁台に落ち込んだ。ここぞの場面での一打や一発を欠くシーズンとなってしまったため、勝負強さを発揮する選手が現れることに期待したい。

北海道日本ハムは「打ち勝つ野球」の形をつくりきれず

1点差ゲーム勝率.354(17勝31敗)
・「逃げ切り」6勝、「逆転勝ち」11勝
・「追い上げ及ばず」15敗、「逆転負け」16敗


 北海道日本ハムも、1点差ゲーム勝率が3割台という結果に。17勝・31敗はともにリーグワーストだ。夏場には7試合連続で1点差負けを記録するなど、あと1点が遠いシーズンを過ごした。

 試合内容に目を向けると、埼玉西武とは対照的に「逆転勝ち」が多い一方、「追い上げ及ばず」という敗戦も目立つ。25本塁打を放ち、本塁打王まであと一歩に迫った万波中正選手や、2022年の首位打者・松本剛選手らを中心とした野手陣には爆発力があったが、やはり打線は水物。チーム別打率・得点数もリーグ下位に沈んでいるように、安定した強さを発揮することは難しかった。

 1点差ゲームを2パターンに分類することで、バランスの取れたチームや、うまくかみ合わない要素があったチームなど、球団ごとのさまざまな特色・課題が見えた。接戦の試合を観戦するとき、その展開にまで注目してみると、意外な発見があるかもしれない。

文・吉村穂乃香

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