出塁能力が開花した2023年
2017年のドラフト2位で千葉ロッテに入団した藤岡裕大選手。プロ1年目から全試合出場を果たすなどショートのポジションを支えてきたが、バッティング面ではなかなか思うような結果を残せていなかった。しかし、昨季は自身のキャリアハイを大きく超える出塁率.389をマーク。規定打席には到達していないもののリーグトップレベルの数字を残し、それまでとは違う姿を印象づける1年となった。今回は、こうした出塁能力向上の背景をデータで見ていきたい。
劇的に増加したフォアボール
昨季の出塁率向上の要因として、最も大きかったのは四球の増加だ。22年までは全打席に占める四球の割合が10%を超えることはなかったが、昨季は14.2%まで急上昇。これは200打席以上に立ったパ・リーグの打者66人中、4番目に高い数字だった。
四球増加を実現した選球眼
四球を増やすためには、当然ボール球を振らないことが重要になる。昨季の藤岡選手はボールゾーンスイング率が初めて20%を下回っており、その見極めがしっかりとできていた。ボールを見極める意識が強すぎるとストライクゾーン内への投球を見逃してしまう可能性もあるが、実際にはゾーン内のスイング率はほとんど下がらず、リーグ平均を上回る水準をキープ。打つべきボールとそうでないボールを、正確に選別できていた。
ボールゾーンへの対応について、カウント別で細かく見てみよう。特に注目したいのが初球、ストライク先行、平行カウントの3つで、これらは「ボール球を振ると、勝負が投手有利に傾くか、あるいはアウトに直結してしまう」カウントだ。昨季の藤岡選手はこういった局面でボールゾーンの投球に手を出すケースが少なく、22年までと比べて打者有利のカウントに持ち込む確率が高くなった。この変化は四球の獲得だけでなく、打率の向上にも少なからず影響したのではないだろうか。
激化する内野の定位置争いをけん引する存在に
千葉ロッテの内野陣には今オフ、横浜DeNAで2度の本塁打王に輝いたソト選手や、大学時代に強打のサードとして活躍したドラフト1位ルーキー・上田希由翔選手らが加入した。そして吉井理人監督は不動のセカンドだった中村奨吾選手をサードへ、ショートの藤岡選手をセカンドへ、といった複数のコンバートを構想しており、内野の競争は激化する見込みだ。とはいえ、藤岡選手の出塁能力は他の選手と比較しても頭一つ抜けている。ショートより守備の負担が軽いセカンドに移ることで、攻撃面では昨季以上の大きな貢献も期待される。
2023年のレギュラーシーズンではつなぎ役に徹しつつも、「パーソル クライマックス パ ファーストステージ」では劇的な勝利を呼び込む3ランを放つなど、記憶に残る活躍も見せた藤岡選手。新たな背番号「7」とともにチームをけん引し、千葉に歓喜の瞬間をもたらせるか注目していきたい。
※文章、表中の数字はすべて2023年シーズン終了時点
文・データスタジアム
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