出塁率にも直結する「死球数」。死球が多い選手の顔ぶれを、直近6年の数字から振り返る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2023年のオープン戦で死球をアピールする福岡ソフトバンク・嶺井博希選手。リクエストが認められ押し出し死球となった (C)パーソル パ・リーグTV
2023年のオープン戦で死球をアピールする福岡ソフトバンク・嶺井博希選手。リクエストが認められ押し出し死球となった (C)パーソル パ・リーグTV

毎年ハイペースで死球を受ける「死球が多い選手」は、得てして存在するもの

 出塁率の算出には、安打・四球に加えて死球も計算式に含まれる。そのため、死球を多く受ける傾向にある選手は、それだけチャンスメイク能力に優れている、という見方もできるはずだ。

 それでは、近年のパ・リーグにおける「死球の多い選手」たちは、いったいどのような顔ぶれだったのだろうか。今回は、直近5シーズンにおける死球数のランキングと、同期間内における累計の被死球が多かった選手たちについて、実際のデータをもとに紹介していきたい。

2018年

2018年 パ・リーグ死球ランキング(C)PLM
2018年 パ・リーグ死球ランキング(C)PLM

 中村奨吾選手がこの年に記録したシーズン22死球は、NPB歴代5位タイの数字だ。シーズン20死球以上を記録したのも2008年の渡辺直人氏以来であり、近年では突出した多さとなった。また、2位の鈴木大地選手が17死球、3位の山川穂高選手が16死球と、直近6年間の中でも特に死球が多い年となっていた。

 また、ランキングの上位3選手はいずれも全試合出場を達成しており、多くの死球を受けながらも故障離脱とは無縁だった。4位のロメロ選手と5位タイの荻野貴司選手はともに長期離脱を経験しただけに、出場試合数がそのままランキングにも反映されたといえよう。

2019年

2019年 パ・リーグ死球ランキング(C)PLM
2019年 パ・リーグ死球ランキング(C)PLM

 来日1年目ながら33本塁打・95打点と活躍したブラッシュ氏が、17死球でトップに立った。両足を閉じ、水平に構えたバットを投手に向ける独特のバッティングフォームでも知られた選手なだけに、特異なフォームが死球の多さに影響した面はありそうだ。

 また、鈴木選手は2位、山川選手は3位と、いずれも前年と同じ順位を維持。中村選手も12個の死球を受けて4位に入った。さらに、わずか54試合の出場で11四球と、圧倒的なペースで死球を積み上げた宗選手の台頭も目につくところだ。

2020年

2020年 パ・リーグ死球ランキング(C)PLM
2020年 パ・リーグ死球ランキング(C)PLM

 前年に52試合で7個の死球を受けたマーティン選手が、初のフルシーズンで17死球を記録してリーグトップに。足を大きく開いて構えるオープンスタンスの持ち主なだけに、前年のブラッシュ選手と同様、独特のフォームが死球の避けにくさにつながったと考えられる。

 また、全120試合の短縮シーズンだったことも影響してか、ランキングの常連である中村選手と鈴木大選手はやや数字を減らした。そんな中で、山川選手は13死球と引き続き一定以上のペースで死球を受けており、相手バッテリーの厳しい攻めに遭ったことがうかがえる。

2021年

2021年 パ・リーグ死球ランキング(C)PLM
2021年 パ・リーグ死球ランキング(C)PLM

 宗選手は2年連続で80試合未満の出場ながらランキングのトップ10に入っていたが、2021年はついにレギュラーに定着し、リーグトップの死球数を記録。また、2018年に78試合で9死球を記録していた荻野貴選手が、プロ12年目にして初の全試合出場を達成。それに伴い、死球数もトップと1個差のリーグ2位まで増加している。

 3位には中村選手、マーティン選手、杉本選手、T-岡田選手と、激しい優勝争いを繰り広げたオリックスと千葉ロッテの選手たちが並んだ。中でも、T-岡田選手は2011年に15死球、2014年はリーグ最多の17死球とランキングの“元常連”だっただけに、久々に上位に顔を出すかたちとなった。

2022年

2022年 パ・リーグ死球ランキング(C)PLM
2022年 パ・リーグ死球ランキング(C)PLM

 過去2シーズンは死球数が減少傾向にあった鈴木大選手が、自己最多タイの18死球を記録。同じく18死球を受けた2017年以来、5年ぶりとなる戴冠を果たした。また、2位には山川選手、杉本選手、マーティン選手といったおなじみの顔ぶれに加え、新たに辰己涼介選手も加わっている。

 中村選手は新型コロナウイルス感染の影響で連続試合出場が630でストップしたが、それでも直近5年間で4度目の2桁死球を記録。前年はリーグ1位だった宗選手は9位タイの8死球とやや数字を減らしたが、吉田正選手、福田選手、頓宮選手と、リーグ連覇を果たしたオリックスの選手が多くなっている点も特徴的だ。

2023年

2023年 パ・リーグ死球ランキング(C)PLM
2023年 パ・リーグ死球ランキング(C)PLM

 2022年にリーグ2位タイの11死球を受けた辰己涼介選手が、続く2023年も12死球と数字を伸ばし、自身初のリーグ最多死球を記録。また、パ・リーグ1年目のマルティネス選手がそれに次ぐ11死球を記録しており、相手バッテリーからも一定以上の警戒を受けていたことがうかがえる。

 ランキング常連の鈴木選手と中村選手がいずれも1桁に数字を減らす一方で、マルティネス選手に加えて新人の茶野選手も8個の死球を記録。近年に入って死球が増えている杉本選手や岡選手、新たにランクインした中川圭選手や松本剛選手を含め、新顔の台頭も目立っている。

上位3名はいずれも直近6年間で600試合以上に出場した一方で……

 最後に、今回のランキングに一度でも名前が載った選手たちの中で、直近6年間の合計死球数が上位10名に入った選手たちを紹介したい。

直近6シーズンの死球数ランキング(C)PLM
直近6シーズンの死球数ランキング(C)PLM

 鈴木選手は直近6年間で73個の死球を記録し、該当期間で最も多くの死球を受けた選手となった。鈴木選手は通算の数字においても、現役選手の中では3位となる122死球を記録。同2位の青木宣親選手(123死球)との差はわずか1個であり、来季中の2位浮上も期待できそうだ。

 その鈴木選手に加え、中村選手、山川選手の3名が、直近5シーズンで60死球の大台を突破している。この3選手は直近6年間における出場試合数も600試合を超えており、多くの死球を受けながら、それによる長期離脱を経験していない点もポイントだ。

 また、マーティン選手はNPBへの在籍が3年半と他の選手に比べて短かったにもかかわらず、わずか340試合で45個の死球を記録。また、レギュラー定着が2021年と比較的最近だった宗選手、キャリアを通じて故障離脱が多かった荻野貴選手も40個以上の数字を記録しており、両選手の死球を受ける割合の高さが示されている。

 さらに、キャリアを通じて年間400打席以上に立ったことがない岡大海選手や、わずか401試合で35個の死球を受けている杉本選手がトップ10に入っている点は特筆ものだ。NPBでの実働が5シーズンながらランキング入りした辰己選手も含め、非常にハイペースで死球を受ける選手の存在も目を引く要素といえよう。

死球の数は出塁率、ひいてはOPSにも反映される重要な数字となる

 出塁率は、打者としての能力を示す「OPS」をはじめとする、各種の指標にも影響を及ぼす数字だ。すなわち、死球が多い選手は、それだけチームの得点力向上に貢献しているという見方もできることになる。

 もちろん、死球の影響で選手がケガを負って戦線離脱する事態となれば、当然ながらチームにとっては痛手となる。そのため、死球ランキングで上位に入るには、死球を受けた際に大きな故障をすることなく、シーズンを戦い抜ける故障への強さも必要となってくる。

 はたして、来たる新シーズンの死球数ランキングで上位に入る選手は、どのような顔ぶれになるのだろうか。相手バッテリーの攻めの厳しさや、チャンスメーカーとしての貢献度に直結する“死球の多さ”という概念に、今後はぜひ注目してみてほしい。

文・望月遼太

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