5年目でブレークを果たしたスラッガー
2023年のペナントレースで盤石な戦いぶりを見せ、リーグ3連覇を成し遂げたオリックス・バファローズ。その中で印象的な活躍を披露した打者の1人が、18年ドラフト2位でオリックスに入団した頓宮裕真選手だ。今季は3月の右足筋損傷、シーズン終盤の左足骨折と2度のケガがありながら、113試合に出場して自身初めて規定打席に到達。リーグトップの打率.307をマークして首位打者に輝くとともに、一塁手部門のベストナインを受賞するなど、プロ5年目にして大ブレークを果たした。
苦手を克服して成績向上
ここからは頓宮選手の打撃を少し掘り下げていく。今季はストレートと変化球どちらに対しても以前より好成績をマーク。特にストレートは22年まで通算打率.219と苦手にしていたものの、今季は3割台の打率を残した。
また、左投手に対しても前年の打率.273から大幅アップとなる.427のハイアベレージを記録。これは規定打席に到達した打者では12球団トップの数字で、4割を超えたのは頓宮選手ただ1人だった。
コンタクト率の改善に成功
次に対左右・球種別でのコンタクト率を見ていくと、今季は全体的に数値が高くなっており、ボールをバットで捉える割合が増したことが分かる。中でも対ストレートの改善が顕著で、左投手のストレートでは94.2%と非常に高いコンタクト率を記録。右投手についても21年から約17%も数値が上がっている。
さらに、ストレートをバットに当てた際に打球が結果球となった割合は、21年には34.6%だったが、今季はリーグ平均と同程度の41.6%にまで増加した。もともと痛烈な打球を飛ばすパワーは備えていたものの、ストレートにスイングを仕掛けても空振りやファウルになることが多く、故に成績を残すことができていなかった頓宮選手。今季はストレートへの対応力が大きく向上し、インフィールドへ打球を飛ばす割合が増えたことが、ヒットの量産につながった。
打球方向にも変化が
ストレートを捉えた際の打球方向にも変化が見られた。21年まではライト方向への打球が全体の半分ほどを占めていたものの、コンタクト率が上昇した22年以降はセンターからレフトへの打球が増加。特に今季は打撃の基本ともいわれるセンターへの打球が多く、ストレートを捉えたヒットもセンター方向が中心だった。かつては速球をライトへ流すケースが目立ったが、より広角に打球を飛ばすことが可能になったといえる。
今季は「少しでも長くボールを見ていられる」ように打撃フォームを改良。以前よりも左足を上げる時間を長くし、間(ま)をつくることで速いストレートに差し込まれることが少なくなった。取り組みの成果は数字にも表れており、首位打者のタイトルを獲得するという結果にもつながった。優勝チームの主軸として確かな存在感を放った頓宮選手。来季も持ち前の打棒を爆発させ、リーグ4連覇と日本一奪還を目指す。
※文章、表中の数字はすべて2023年シーズン終了時点
文・データスタジアム編集部
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