通算出塁率4割超えの驚異のコンビ。近藤健介と柳田悠岐の凄みにデータで迫る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2023.9.6(水) 16:00

近藤健介選手、柳田悠岐選手 写真:球団提供
近藤健介選手、柳田悠岐選手 写真:球団提供

近藤選手と柳田選手は、ともに最高出塁率に複数回輝いた実績を持つ

 今季の福岡ソフトバンクで3・4番を担っている近藤健介選手と柳田悠岐選手。9月4日時点で出塁率が近藤選手はリーグトップの.427、柳田選手は同3位の.381としている。

 柳田選手は2015年から2018年まで4年連続で最高出塁率のタイトルを獲得し、近藤選手は2019年と2020年に同タイトルを受賞。ともに通算出塁率が4割を超えている点も含めて、まさに近年のパ・リーグを代表する、卓越した選球眼を備えたコンビといえよう。

 今回は、出塁率やK/BBといった選球眼に関する指標を中心に、両選手が示しているセイバーメトリクスの分野における凄みを分析。それによって見えてきた両者の共通点を紹介するとともに、二人がチームにもたらす価値について考えていきたい。(成績は9月3日の試合終了時点)

2015年の「トリプルスリー」をはじめ、長年にわたって圧倒的な活躍を続けている

 柳田選手がこれまで記録してきた、年度別成績は下記の通り。

柳田選手 年度別成績(C)PLM
柳田選手 年度別成績(C)PLM

 柳田選手は2010年のドラフト2位で福岡ソフトバンクに入団。プロ3年目の2013年に104試合で打率.295を記録して主力に定着し、翌2014年は全144試合に出場して自身初の打率3割を達成。そして、2015年には打率.363、34本塁打、32盗塁で「トリプルスリー」を達成し、首位打者とシーズンMVPにも輝く圧巻のシーズンを送った。

 その後も6年間で5度の打率.300超えを記録する活躍を見せ、2018年には打率.352で2度目の首位打者を受賞。2020年には自身2度目のシーズンMVPに輝くなど、大黒柱として4度のリーグ優勝と6度の日本一にも大きく貢献。現在に至るまで、球界を代表する強打者として圧倒的な打棒を発揮し続けている。

リーグを代表する好打者として活躍し、2017年には幻の「打率4割」を記録

 近藤選手がこれまで記録してきた、年度別成績は下記の通り。

近藤選手 年度別成績(C)PLM
近藤選手 年度別成績(C)PLM

 近藤選手は2011年のドラフト4位で北海道日本ハムに入団。プロ入り当初は捕手ながら、2014年以降は野手として出場機会を増加させ、2015年には22歳の若さでリーグ3位の打率.326と結果を残した。さらに、2年後の2017年には故障の影響で57試合の出場にとどまったが、231打席に立って打率.413を記録。幻の「4割打者」として大きな注目を集めた。

 続く2018年以降も3年連続で打率.300超えを達成し、2019年からは2年連続で最高出塁率のタイトルを受賞。近藤選手の活躍はNPBにとどまらず、日本代表としても2021年の東京五輪で金メダル獲得に貢献。そして、2023年に開催された第5回ワールド・ベースボール・クラシックでは2番打者として出色の打撃を披露し、優勝の立役者の一人となった。

打者としての生産性と選球眼の優秀さに加えて、“真の長打力”も極めて高い

 柳田選手が記録してきた、年度別の指標は下記の通り。

柳田選手 年度別指標(C)PLM
柳田選手 年度別指標(C)PLM

 2014年から2020年まで7年連続で出塁率が.400を超え、通算出塁率も.410。また、打率と出塁率の差を示す「IsoD」も.097と、こちらも高水準にある。さらに、選球眼や忍耐力を示す「BB/K」に関しても、2016年と2019年に1.000を上回っただけでなく、2015年からの9年間で4度の.800超えを記録。選球眼を測る指標は、いずれもトップクラスの水準にある。

 出塁率の高さもあってOPSの安定度もずば抜けており、2013年から11年連続でOPS.800以上を継続中。2015年から2021年までの7年間は全てOPSが.900を超え、OPSが1.000を上回ったシーズンも4度存在。トリプルスリーを達成した2015年にはOPS1.101という驚異的な数字を記録するなど、長年にわたって圧倒的な数字を残し続けてきた。

 さらに、真の長打力を示すとされる「ISO」も2015年から8年連続で.210を上回り、通算ISOも.229。ISOは.200を上回れば優秀とされる中で、これだけの水準を維持し続けるパワーは驚異的といえる。また、本塁打を1本打つまでにかかる打席数を示す「AB/HR」もキャリア平均で18.87と、コンスタントに本塁打を放ち続けている点も長所の一つだ。

「BABIP」は運に左右されやすい指標だが、柳田選手の場合は話が別?

 また、柳田選手に関する指標の中でも特に話題に挙がりやすいのが、「BABIP」の際立った高さだ。BABIPは本塁打を除いたインプレーの打球が安打になった割合を示す指標だが、運に左右される部分が多く、通常の選手であれば.300前後の数字に収束する傾向にある。

 しかし、柳田選手はプロ2年目の2012年から12年連続でBABIPが.300を超えており、通算BABIPも.364と非常に高水準だ。俊足の左打者である柳田選手は内野安打を稼ぎやすく、打球の速さも並みはずれていることなどが理由の一端として考えられるが、ある種「運を実力でねじ伏せている」とも形容できるこの傾向も、柳田選手の非凡さを示すものといえよう。

非常に優れた選球眼を持つだけでなく、驚異的な打席での忍耐力も

 近藤選手が記録してきた、年度別の指標は下記の通り。

近藤選手 年度別指標(C)PLM
近藤選手 年度別指標(C)PLM

 柳田選手と同じく、近藤選手の出塁率も非常に高い。2015年から2022年までの8年間のうち、出塁率が.400を超えなかったのは一度だけ。とりわけ、打率.413を記録した2017年の出塁率は.567と、2打席に1度以上出塁していた計算だ。通算出塁率も.414と柳田選手と同水準であり、極めて優れた選球眼を有することがわかる。

 さらに、IsoDは2017年から7年連続で.100を超え、通算でも柳田選手を上回る.108という数字を記録。また、BB/Kは1.000を上回ればトップクラスとされる中で、近藤選手は2019年から4年連続で1.000以上を継続中。2017年には2.222という常識外れの数字を記録しており、通算BB/Kも1.050と非常に高い。その打席内での落ち着きは、まさに驚異的だ。

 さらに、2015年以降の8年間で7度のOPS.800超えを果たすなど、打者としての総合的な能力も十二分に優れている。柳田選手とは異なり、決して本塁打数が多いタイプとは言えない近藤選手が、毎年のように優秀なOPSを維持している点は特筆に値しよう。

 また、近藤選手のBABIPも2015年以降は9年連続で.300を超えており、通算の数字も.353と高い水準にある。キャリアを通じてBABIPが非常に高い、という傾向が共通点として存在することは、両選手の打撃スタイルや身体能力の違いを考えても、大いに興味深い要素といえる。

ヒットも四球も稼げる両雄は、投手にとっても極めて打ち取りづらい存在だ

 柳田選手と近藤選手は、通算打率.300・通算出塁率.400という2つの大台をともにクリアしている。また、IsoD、BB/Kといった指標においても揃って優れた数字を記録している点も、両選手が卓越した選球眼を持つことを裏付けている。また、BABIPが高い、すなわち通常の打者以上に安打が出やすいという特性を持つ点も、両者に共通するポイントだ。

 コンタクトされた打球がヒットになる可能性が高いだけでなく、ボールゾーンを中心に勝負しても四球のリスクが大いに伴う。今回取り上げた数々の指標は、両選手が投手にとって極めて打ち取りづらい打者であることを、あらためて証明するものにもなっている。

 長年にわたってハイレベルな成績を残し続けてきた両雄が、チームメイトとしてコンビを組む2023年シーズン。残るシーズンでの活躍にも要注目だ。

文・望月遼太

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