好調なチームを支える高卒ドラフト1位組
入団5年目の昨季は自己最多の119試合に出場し、キャリアハイとなる9本塁打を記録した千葉ロッテの安田尚憲選手。特に後半戦はOPS.843をマークするなど大器の片りんをのぞかせた。
迎えた今季は2年ぶりに開幕スタメンの座を勝ち取ると、4月14日以降はクリーンアップに定着。自身と同じく高校からドラフト1位でプロの世界に飛び込んだ平沢大河選手や藤原恭大選手らとともに、上位争いを繰り広げるチームをけん引している。
スピードボールを引っ張れるようになった2022年シーズン後半戦
そんな安田選手の打撃に変化がみられるようになったのは昨季後半だ。前半戦までは体の近くで直球を捉えることが多く、ストレートに対する打球方向はレフトからセンターが大半を占めていた。しかしシーズンが進むにつれて引っ張りの打球が増えており、それに伴って打撃成績は良化。左打者であれば一般的にライト方向への当たりの方が打球は飛びやすく、安田選手もその例に漏れず長打が増加した。
受け身ではなく、積極的な打撃スタイルに
体の近くまでボールを呼び込むことは見極めをしやすくなる一方で、自分のスイングを出し切れないというデメリットもある。これまでの打撃スタイルはどちらかといえば受け身になりがちで、持ち前の打棒を発揮しきれているとはいえなかっただろう。直球に対して振り負けず、打つポイントが前になった後半戦は積極的なアプローチを見せて直球、変化球ともにスイング率は上昇。そんな中でミート力は増している面もあり、アグレッシブな姿勢と確実性を兼備するスラッガーに変貌していった。
甘い球を逃さず仕留めるバッティング
さらに注目したいのがストライクゾーンにおける打撃成績だ。ボールゾーンをヒットにすることはどんな一流打者であろうと容易ではない。それ故に打つべき球であるストライクゾーンをいかにはじき返すかが重要だが、昨季の後半戦はこれまで以上にそれができていた。
ファーストスイングで仕留める能力が向上
積極性が身についたことでその打席の最初のスイングで仕留める割合はさらに向上し、後半戦におけるファーストスイング打率は.342、同長打率は.633を記録。狙い球をヒットゾーンへ一振りで飛ばす能力は年々磨き上げられており、球界を代表するスラッガーへの道を着実に歩んでいるといえるだろう。
東京ヤクルト・村上宗隆選手は昨季三冠王に輝き、今春のWBCでは世界一に貢献。また北海道日本ハム・清宮幸太郎選手も昨季チームトップの18本塁打をマークするなど、切磋琢磨した同学年の選手たちが続々とブレークを果たしてきた。
一方で吉井理人監督からの期待も高い千葉ロッテの背番号5もまた、同期たちに匹敵するようなインパクトを残し、一気に球界の主役へと上り詰められるだけのポテンシャルを秘めている。自身が掲げた25本塁打という目標に手が届けば、将来有望な若手がひしめくチームにも大きな影響を与えるだろう。ファンも飛躍を待ちわびるスラッガーのバッティングに今後も期待したいところだ。
※文章、表中の数字はすべて2023年4月26日終了時点
文・データスタジアム編集部
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