甲子園を席巻した剛腕が、プロの舞台でついにそのベールを脱いだ。埼玉西武の今井達也投手が13日にプロ入り初登板となるマウンドに上がり、20歳を迎えたばかりとは思えない投球内容で見事に初勝利をマークしてみせた。
作新学院時代に躍動を見せて夏の甲子園の優勝投手となった今井投手は、2016年のドラフト1位で埼玉西武から指名を受けてプロ入り。1年目は一軍での登板はなかったが、二軍では7試合に登板して1勝、防御率2.35という成績を残し、持てる潜在能力の一端を示してみせた。
プロ入り2年目となる今季は飛躍が期待されていたが、2月に未成年喫煙が発覚して対外試合出場停止処分を受けることに。本人も「深く反省しております。自分自身の甘さが今回の事態を招いてしまったと考えています」と猛省し、「今後、二度とこのようなことを起こさないよう、自分に厳しくありたいと思います」と自らを戒めていた。
シーズンに突入してからは二軍で4試合に登板して2勝1敗、防御率2.52という好成績を収め、一軍での出場機会をうかがっていた。そして、イースタンでの好投が認められて6月13日の東京ヤクルト戦でプロ入り初登板初先発のマウンドを踏むと、チームにとっても重要な交流戦首位決戦という舞台で、観る者の度肝を抜く投球を披露してみせる。
初回から150キロを超える速球を連発して早くも投手としての能力の高さを証明すると、交流戦の首位を走る東京ヤクルト打線を相手に2回以降も好投を続けていく。3回に1点を失ったものの、ランナーを背負っても堂々とした投球を見せて強打のヤクルト打線に追加点を許さず。6回で112球を投げて1失点(自責点0)と、高卒2年目のプロ初登板としては申し分のない投球内容で、見事にプロ初先発初勝利をつかみ取った。
試合後に上がったお立ち台では「初登板ということで、監督・コーチの皆さんに『しっかり楽しんで、思い切ってやってこい』と言われたので、言葉通りに初めてのマウンドを楽しめたんじゃないかなと思います」と、早くもその強心臓ぶりを披露。
「二軍と違ったいい緊張感の中でしっかり投げることができたので、次も出番があったらチームも勝てるようにしっかり投げたいと思います」と語っただけでなく、ファンに向けて「まだまだシーズンは終わらないので、しっかりこの先も勝てるように一生懸命投げますので、引き続き応援よろしくお願いします」とメッセージを送るなど、記念すべき初勝利を挙げた直後ながら、その視線は既に次回の登板へと向いているようだ。
埼玉西武にとっても、高卒投手のプロ入り初登板初勝利は1999年の松坂大輔投手以来となる快挙に。奇しくも「平成の怪物」が復活を見せつつある年に現れた新たな「怪物」候補は、圧倒的なインパクトを残した先達のように、獅子のエースの系譜を受け継ぐ存在となれるだろうか。
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