【WBC台湾代表情報】MLB経験者は6人。CPBLの若手主力が勢ぞろい、1次R突破ならチアリーダーも来日!?

駒田英(パ・リーグ インサイト)

2023.2.18(土) 07:00

活躍に期待、台湾プロ野球MVP男、林立(楽天モンキーズ) (C)CPBL
活躍に期待、台湾プロ野球MVP男、林立(楽天モンキーズ) (C)CPBL

台湾プロ野球のタイトルホルダー、ベストナイン&ゴールデングラブ賞W受賞選手が軒並み選出

 WBC台湾代表情報の後半、まずはNPB勢以外の注目選手を紹介しよう。台湾プロ野球における一番の注目選手は、何と言っても昨季のMVP、林立(楽天モンキーズ)だ。各タイトルの受賞者を1人に限定するCPBLの規定によりHR王は逃したものの、NPB式であれば打撃4部門で1位、打撃「三冠王」という圧巻のパフォーマンスをみせた。対外国人投手の打撃成績は打率、長打率共に高く、国際大会でも活躍が期待される。

 また、かつてクリーブランド・インディアンス(現ガーディアンズ)傘下で3Aまで昇格した攻撃型捕手、昨季のHR王、味全ドラゴンズの吉力吉撈.鞏冠(Giljegiljaw Kungkuan)も代表入りした。カタカナ表記するとすれば、「ジリジラウ・コンクアン」のような表記となる名前は、台湾原住民パイワン族の母語の名前だ。これまでも台湾プロ野球で原住民族名を記したユニフォームを着用する選手はいたが、米マイナーリーグそして台湾プロ野球で、正式に原住民名を選手名として登録したのは、いずれも彼が初めてである。

 このほか、台湾球界一の韋駄天男、盗塁王の陳晨威(楽天)、台湾人投手として8年ぶりに防御率1位に輝いたサイドハンドの黄子鵬(楽天)、強心臓のホールド王、陳禹勳(楽天)ら、各タイトルホルダーも選出された。変則フォームの黄子鵬は主力先発候補の一人、中南米諸国相手に投球術がハマれば、台湾代表にとっては大きい。

 そして、昨季ベストナインとゴールデングラブ賞をW受賞した台湾人5選手、富邦の中心打者に成長した一塁手の范國宸、リーグを代表するスター選手で今大会キャプテンをつとめる三塁手の王威晨(中信)、好守で中信の二連覇を支えた遊撃手の江坤宇、外野手では、高校(岡山県共生)時代は呉念庭の一学年下、巧みなバットコントロールを持ち、ムードメーカーでもある陳傑憲(統一)、ハッスルプレーが持ち味の郭天信(味全)がいずれも選ばれた。

WBC台湾代表30人リスト (C)CPBL
WBC台湾代表30人リスト (C)CPBL

現役MLB選手はゼロも、MLB経験者は6人

 現役のMLBプレーヤーや経験者では、台湾系アメリカ人、コービン・キャロル(ダイヤモンドバックス)とスチュアート・フェアチャイルド(レッズ)、そして、このオフ、「ルール5」ドラフトでジャイアンツからパイレーツに移籍した右腕の黄暐傑は、いずれもシーズンへの準備を理由に辞退した。ただ、なおも6人のMLB経験者が代表入りした。

 内野手の張育成(FA)は昨季、4球団を渡り歩いたのちにノンテンダーFAとなるという苦難のシーズンとなった。当初、キャリア優先を理由に出場辞退を表明したが、兵役短縮の恩恵を受けた選手は一定期間、国際大会の招集を拒否できない規則があることから、疑問を呈するファンが現れた。結果的にCPBLの蔡コミッショナーが直接本人と交渉し出場が決定した。MLBの台湾人打者としてほぼ全てのシーズン記録、通算記録を持つ。巧打者タイプが多く、大砲が少ないだけに、2021年、メジャー89試合で9HR放った張の長打力は鍵となる。

 ユーティリティーの林子偉(FA)は、MLBでは一塁以外全ポジションの経験があり、本職は二、遊だがライトでの起用が濃厚となっている。これまで2球団でメジャー昇格、近年は怪我が多く、昨季はシーズン中にメッツからリリースされるも、米独立リーグやABLでは健在ぶりをアピールした。2人共にWBCでの活躍を足がかりに、オファーをつかみたいところだ。

 ちなみに残り4人のMLB経験者は、前述の李振昌(中信)に加え、胡智爲(統一)、王維中(味全)、曽仁和(楽天)といずれも投手で、現在、台湾プロ野球でプレーしている。胡、王、曽の3人と、インディアンス時代、メジャー昇格まであと一歩に迫った江少慶(富邦)らはいずれも先発候補だ。CPBL年俸ランキングトップの江少慶は昨季、不振にあえいだが、張奕と共に主力投手として活躍したプレミア12のようなパフォーマンスを期待したい。

 米マイナーリーグ所属選手では、高い奪三振率を誇るMAX157キロの先発型右腕、鄧愷威(ジャイアンツ2A)と、内野手の鄭宗哲(パイレーツ1A)の2人が選出された。優勝した2019年U18ワールドカップでキャプテンをつとめた鄭宗哲は小柄だが、俊足巧打、安定した遊撃守備が魅力だ。

元メジャーリーガーの林子偉。WBCでの活躍を足がかりにオファーをつかみたい (C)CPBL
元メジャーリーガーの林子偉。WBCでの活躍を足がかりにオファーをつかみたい (C)CPBL

台湾代表、台中ラウンドの注目ポイントは他にも

 台湾代表のユニフォーム、アパレルも注目だ。各チームが独自にメーカーを選定することとなった今回、台湾代表のユニフォームは日本の総合野球用品メーカー「ハイゴールド」のアパレルブランド「ALUKA」が請け負った。「ALUKA」は2017年のアジアプロ野球チャンピオンシップや2018年の侍ジャパンとの壮行試合で、台湾代表が着用した「台湾犬」をモチーフにしたユニフォームや、台湾プロ野球第6の球団、台鋼ホークスのアパレルを担当したことでも知られる。

 今回のWBCのユニフォームは、2004年のアテネ五輪以来、主要国際大会で使われている青、白、赤の三色をベースとし、「CT(チャイニーズ・タイペイ)」マークが入ったおなじみのデザインとなったが、ハイゴールドの風呂本隆史社長によると、デザインは伝統を継承しつつ、選手のパフォーマンス向上の為、特に素材にこだわったという。また、帽子も軽量化がなされたほか、ツバが気持ち長めに設計されているという。 

 WBCという一大国際スポーツイベントの開催とあり、台湾企業も力が入っている。今回の台中ラウンドの開催球場、台中インターコンチネンタル球場を本拠地とする中信兄弟の親会社、中国信託商業銀行は、台中ラウンドのネーミングライツを取得したほか、史上初めて満票獲得で米野球殿堂入りを果たしたパナマ出身の伝説のクローザー、マリアーノ・リベラ氏を招くことを明らかにした。王建民コーチとヤンキースで同僚だったリベラ氏の台湾での知名度は非常に高く、交流イベントやサイン会のほか、3月8日の台湾対パナマの試合前には、始球式を行うという。

プロ・アマがタッグ、「地の利」も活かし1次R突破へ、チア来日の可能性も?!

 WBC台湾代表は今後、14日から21日まで、台湾プロ野球各球団と非公開の練習試合を5試合、25日から27日までは北部・新北市の新荘球場で有観客の練習試合を3試合戦う。この新荘での練習試合にはキューバ代表も参加するが、両チームの直接対決は行われない。さらに、大会直前の3月5日と6日は、プールAの5チームが台湾プロ野球各球団と公式エキシビジョンマッチを戦う。新荘球場の練習試合は、台湾プロ野球の有料配信プラットフォーム、CPBLTVでも視聴が可能だ。

 2017年大会当時、台湾球界ではプロとアマの組織対立があり、Lamigoモンキーズ(現・楽天モンキーズ)が選手派遣を見合わせる事態に見舞われた。その点、こうした問題が解決した今大会は林監督の言葉通り、現状におけるベストメンバーが招集できたといえる。ただ、今回の台湾代表は大きな穴はないものの、絶対的なエースや主砲はおらず、どちらかといえば「小粒」なチームだ。

 プールAには台湾のほか、キューバ、イタリア、オランダ、そして予選勝ち上がりのパナマが入った。ここにきて、他国の一部主力選手の辞退やアジアラウンド不参加のニュースもあるが、各チーム共に現役メジャーリーガーを擁し、実力は高い。当然、台湾は苦戦が予想されるが、3試合で20得点も、32点奪われ3連敗に終わった前回大会のような戦い方ではなく、継投で失点を最小限に留め、打っては小技や足も絡めながら得点を積み重ね、僅差の展開をものにしていきたい。

 プラス材料もある。今大会はCPBLによる全面的なサポートに加え、中信兄弟のオーナー、辜仲諒氏が理事長に就任したアマ統括組織CTBAもバックアップを宣言、プロ・アマのタッグにより最良の環境を提供できるようになった。なにより、地元台湾での合宿、試合開催も大きな強みだ。これに加え熱狂的なファンの大声援という「地の利」を活かし、目の前の一試合、一試合を戦っていけば、東京ドームで開催される準々決勝進出も不可能ではない。歴史的死闘となった2013年大会以来10年ぶりとなるWBCでの日本との再戦もみえてくるはずだ。

 2013年、台湾は2次ラウンドで敗退したが、チームの健闘に台湾のファンは感動、八百長事件など不祥事により停滞していた野球人気は復活した。結果的に大企業の参入を促すこととなり、台湾野球を取り巻く環境は大きく改善した。第6の球団、台鋼が2軍に参入する今シーズン、台湾代表が素晴らしい戦いをみせることで、再び野球フィーバーが起きれば、台湾プロ野球はもう一段高いステージに上がることができるだろう。

 なお、プールA、台中ラウンドを主催するスポーツイベント会社によると、仮に台湾代表が東京ラウンドに進出した場合、CPBL一軍5球団の人気チアリーダー21名によって結成された「クラシックガールズ(經典女孩)」の一部メンバーが日本を訪問する可能性があるという。現時点において人数など詳細は未定だというが、台湾代表が1次ラウンドを突破し、NPB球団所属選手や元NPB勢が「凱旋」、さらにチアリーダーの皆さんも来日となれば、日本のファンにとっても嬉しい展開といえるだろう。(情報は2月8日時点のもの)

文・駒田英

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記事提供:

駒田英(パ・リーグ インサイト)

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