開幕まで1カ月を切ったWBC、豪華メンバーが集まった侍ジャパンの試合が待ちきれないファンは多いだろう。1次リーグ、プールBに入った侍ジャパンが順当に準々決勝に勝ち進んだ場合、対戦するのが、台湾・台中市の台中インターコンチネンタル球場で行われるプールA(台湾、キューバ、オランダ、イタリア、パナマ)の勝ち上がりチームだ。そのプールAから、台湾代表の情報を前、後半にわけてお届けしよう。
新型コロナウイルスの影響により、東京五輪最終予選への出場を断念した台湾にとって、WBCは2019年のプレミア12以来の主要国際大会となる。台湾プロ野球の運営母体CPBLは、昨年9月、2020年シーズンの優勝監督、統一セブンイレブンライオンズの林岳平監督を代表監督に選出、林監督は就任後、コーチ陣の組閣に着手し、リーグと協力して準備を進めてきた。
11月には林監督と高志綱・ヘッドコーチが訪日、NPBでプレーする台湾選手と面会し、出場意向を確認、今年1月13日には、代表合宿参加メンバー36名を発表し、29日からは中部、雲林県の斗六球場で合宿がスタート、主に台湾プロ野球の選手が参加している。
そして6日、台北市内のホテルでWBC台湾代表発表記者会見が行われた。メンバー30人の内訳は投手14人、捕手3人、内野手8人、外野手5人、台湾プロ野球所属選手が23人、現在FAの選手を含め日米球界でプレーする、いわゆる「海外組」が7人という構成となった。前回2017年大会から連続出場となる選手は投手3人のみ、平均年齢は27.4歳(2017年大会は29.1歳)、特に野手陣はいずれも初出場で、26.6歳(同30.3歳)と大きく若返った。
合宿中ということで、30人の発表というよりは、誰が「割愛」されるのかに注目が集まった中、林監督は「30人に絞るのは苦しかった」と正直な気持ちを打ち明けた。その上で、「選ばれた選手は年齢的にもピークの時期にあり、現時点のベストメンバーだと信じている。ファンを感動させ、誇りになるような戦いをみせたい」と熱く意気込みを語った。
NPB球団所属選手、元NPBの代表選手も「東京行き」を熱望
合宿参加メンバーに選ばれていたNPB球団所属の4選手のうち、東北楽天の宋家豪、埼玉西武の呉念庭、北海道日本ハムの王柏融は順当に選出された。一方で、昨秋、林監督と面会した時点で出場に強い意欲を示していたものの、自主トレ中に右肩の炎症が判明した張奕(埼玉西武)は代表入りを辞退し、選外となった。
前回2017年大会の出場時は、育成選手だった宋家豪、オランダ戦で先発も3回1/3、4失点とほろ苦い結果に終わったが、今回はイーグルス同様、ブルペン起用となる。代表ではクローザー候補の一人とされており、しびれる場面での登板となりそうだ。
一塁ないし三塁での起用が予定されている呉念庭は、高校から日本へ留学したこともあり、主要国際大会では初の代表入り。しかも、母国の大観衆の前でプレーすることも初めての経験となる。呉念庭は8日、パ・リーグ主催の台湾メディア向けのオンライン取材に対し、「期待しています。なにより自分は台湾のファンの前でプレーをしたことがないし、特に今回はホームなのでとても興奮しています。台湾の為に全力を尽くしたいです」と力をこめた。
また、1次ラウンドを突破すれば、準々決勝で日本と対決する可能性があることにふれ、「大谷翔平選手やダルビッシュ有選手との対決を楽しみにしています。アジアでトップの選手ですから」と期待を示した。
ちなみに今回、台湾代表は合宿地で、MLB18球団が使用しているという最新鋭ピッチングマシン「iPitch」を使用している。CPBL蔡其昌コミッショナーの肝いりで特別にレンタルしたという「iPitch」は現在アジアではこの一台のみ。大谷翔平やダルビッシュ有の球種データも入っているといい、呉念庭が合宿合流後、本番に備え、仮想・大谷&ダルビッシュと「対決」するのか、気になるところだ。
呉念庭はまた、張奕が代表入り辞退を表明した日に球場で会ったことも明かした。「台湾の為にプレーしたい。」と話す張へ、「大丈夫だというのであればそれでもいいけれど、身体がダメならばやめるべきだ。これからのキャリアは長い。もっと先を見据えよう。」とアドバイスしたという。
また、同じオンライン取材を受けた王柏融は、これまでのWBCで最も強く印象に残っているシーンとして、2013年の1次ラウンド初戦のオーストラリア戦で、今大会は打撃コーチをつとめる彭政閔(当時兄弟エレファンツ)が、強い一塁ゴロを胸に当てて止めて処理した場面を挙げ、「どんな形でもチームの勝利の為に貢献する、自分たち後輩にとってあのような精神はとても重要で、学ぶべき点だと思います。」と語った。そして、台湾のファンに向け、「きっと東京に、そしてマイアミに行ける。僕たちを信じてほしい。皆さん、球場で会いましょう」と述べ、多くのファンが球場にかけつけてくれることを希望した。
昨季は苦しい一年となり、今季は育成契約での再スタートとなった王柏融、今季にかける思いは相当強いはずだ。WBCでは「大王」らしい打撃を発揮してもらい、支配下昇格にむけ弾みをつけてもらいたい。3人は16日にも代表合宿へ合流すると伝えられている。
このほか、元NPB勢では、台湾2年目の昨季は中継ぎで結果を残した元横浜DeNA、千葉ロッテの陳冠宇(楽天モンキーズ)、抑えに転向し20セーブ、シリーズで胴上げ投手となるなど優勝に貢献した元阪神の呂彦青(中信)、埼玉西武では「C.C.リー」の登録名でプレー、WBCは2009年大会以来の代表となる李振昌(中信)の3人も選出された。3人共にブルペンでの起用が予定されている。
合宿中の陳冠宇に、日本でも多くのファンが「凱旋」を期待していると伝えると、「1次ラウンドを突破して、東京ドームで行われる準々決勝に進みたいです。日本のファン、そして日本在住の台湾のファンは、ぜひ応援にきてください」とメッセージをくれた。
このほか、2013年の大会で日本打線を苦しめた王建民コーチ(中信)と共に、投手コーチを務めるのは西武、オリックスで計14年プレーした許銘傑コーチ(楽天)だ。今回の台湾代表には、特にパ・リーグのファンにとってなじみのある選手、コーチが多い。
次回の後半では、WBC台湾代表メンバーのうち、台湾プロ野球の選手や、アメリカ球界経験者の紹介、台湾代表の展望などについてお伝えしよう。(情報は2月8日時点のもの)
文・駒田英
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