首位から4位まで4.5ゲーム差。近年稀に見る大接戦に
9月20日の試合が終了した時点で、パ・リーグは首位から4位までが4.5ゲーム差にひしめく大混戦となっている。シーズン最終盤は多くの選手にとって、故障の痛みや疲労がピークに達しかねない時期でもある。それだけに、シーズンが佳境を迎えた現時点で好調をキープしている選手の存在は、どのチームにとっても非常に大きな意味を持ってくる。
今回は、1位の福岡ソフトバンクから5位の千葉ロッテまでの5チームにおいて、9月に好成績を残している選手たちを紹介。この時期に状態を上げている選手は順位争いを大いに左右しうる存在といえるだけに、あらためてその顔ぶれを確認していきたい。
福岡ソフトバンク
優勝へのマジックナンバー「8」が点灯している福岡ソフトバンクでは、森唯斗投手が一軍に復帰した7月以降は好調を維持し、9月も6試合で防御率1.69と安定感を発揮。9月16日の試合では、先発予定だった奥村政稔投手のアクシデントによって急遽プロ初先発のマウンドに上がり、3回1失点と奮闘してチームの勝利に貢献した点も特筆もの。また今後の起用法も気になるところだ。
救援陣では、藤井皓哉投手と嘉弥真新也投手がいずれも9月は月間防御率0.00をキープ。今季のブルペンを支えてきた左右のセットアッパーが、いずれも疲労を感じさせない成績を残しているのは頼もしい限りだ。また、先発では和田毅投手が9月は2試合に先発して防御率1.80と好投し、厳しい優勝争いの中でベテランならではの冷静な投球を見せている。
打線では、牧原大成選手が8月は打率.318、9月は打率.340と好調をキープし、初の規定打席到達とシーズン打率3割に猛チャージをかけている。また、正木智也選手も8月に打率.429と出色の打撃を見せ、9月も打率.286、出塁率.348、OPS.824と一定以上の数字を記録。状態を落とす選手が少なくない中で、この2選手の活躍がカギを握る可能性は高い。
オリックス
山本由伸投手が9月の3試合で2完投・1完封、防御率1.44と圧倒的な投球を継続している。さらに、宮城大弥投手も3試合で防御率2.16と好投し、奪三振率9.18とシーズン成績(7.66)を大きく上回る数字を記録している。左右の2枚看板が終盤戦にかけて安定感を維持している点が、チームの追い上げにも大きく寄与しているのは間違いないだろう。
リリーフではジェイコブ・ワゲスパック投手、阿部翔太投手、山崎颯一郎投手の3名が、いずれも8試合で防御率0.00と完璧な投球を披露。また、宇田川優希投手が7試合を無失点、奪三振率17.00と持ち味を大いに発揮し、小木田敦也投手も8試合で防御率1.35、奪三振率9.45と活躍。平野佳寿投手が戦線を離れる中、チーム全員で守護神の穴を埋めている。
野手では吉田正尚選手の月間成績が圧巻だ。打率.424、6本塁打、OPS1.293という驚異的な成績に加え、得点圏打率.462と抜群の勝負強さを発揮している。また、ベテランの西野真弘選手が8月の打率.391、9月の打率.364と調子を上げ、9月18日からの首位攻防戦では2試合連続猛打賞と大活躍。残り5試合、経験豊富な両者の打棒に期待したい。
東北楽天
宮森智志投手が8月の一軍デビュー以降22試合連続無失点を継続中で、9月も9試合で奪三振率11.25と絶好調だ。また、アラン・ブセニッツ投手が6試合で防御率1.42、西口直人投手も防御率2.16と好投。開幕からチームを支えた先発陣が調子を落とし、宋家豪投手、酒居知史投手らにも疲れが見える中で、状態の良いリリーフ投手が投手陣のキーになりそうだ。
打線では浅村栄斗選手が9月だけで6本塁打を放ち、月間打率.292、OPS.972と状態を上げてきた。また、打点ランキングトップまであと2打点と、個人成績の面でも追い上げを見せている。4年ぶりの打点王獲得、そしてチームの更なる浮上に向けて、頼れる3番打者は絶好調のままシーズンを締めくくれるだろうか。
また、辰己涼介選手も8月の打率.353、9月の打率.333と好調をキープしており、クリーンアップの一角としての起用に応えている。昨季はシーズン打率.225と確実性に課題を残したが、今季はシーズン打率も.278と大きく向上。抜群の守備力に加えて攻撃面でも違いを生み出す存在となりつつあるだけに、残りシーズンでさらなる飛躍を果たしたいところ。
埼玉西武
先発では高橋光成投手が8月の5試合で防御率1.80、9月はここまで3試合で防御率1.66と好調をキープ。9月は奪三振率9.55、K/BB4.60と投球内容も大きく向上しており、終盤戦にかけて若きエースがさらなる進化を見せているのは、チームにとっても非常に明るい材料となっている。
また、7月に防御率6.11と不振に陥っていた平良海馬投手が、8月は3試合で無失点、9月は6試合で防御率1.50と大きく復調。9月の奪三振率は10.50、与えた四球はわずかに1と投球内容も抜群だ。増田達至投手がやや状態を落としているだけに、平良投手の復調はより大きな意味を持ってきそうだ。
野手では金子侑司選手が9月は8試合で打率.313、OPS.802と活躍。トップバッターが定まらないチーム事情も相まって、韋駄天の復帰は大きなプラスとなりそうだ。また、平沼翔太選手も打率.273と一定の数字を記録。主力打者の大半が9月に入ってから大きく調子を落とす中で気を吐いているだけに、今後の更なるアピールにも期待だ。
千葉ロッテ
福岡ソフトバンクと5試合、オリックスと2試合の対戦を残している千葉ロッテ。佐々木朗希投手が9月は2試合で防御率1.29、奪三振率9.64、奪三振率15.00という抜群の数字を残しており、防御率4.44と苦しんだ8月の不振を払しょくしつつある。あと1勝に迫った自身初の2桁勝利に向けて、好調を維持したままシーズンを締めくくれるかに注目だ。
救援陣では岩下大輝投手が8月の一軍復帰以降は好投を続け、9月は防御率1.42とイニング跨ぎもいとわずに奮闘。相次ぐ故障を乗り越えてきた苦労人が、再びケガを克服して復活を遂げている。また、ロベルト・オスナ投手は5度の登板をいずれも無失点と支配的な投球を続けているだけに、抜群の安定感を誇る守護神につなぐ機会を増やしたいところだ。
打線では井上晴哉選手が月間打率.328、OPS1.004と絶好調で、ついに本来の打撃を取り戻しつつあるのが頼もしい限りだ。また、高部瑛斗選手も9月の17試合で打率.303、得点圏打率.462と好調を維持。茶谷健太選手が9月の打率.295、出塁率.404と下位打線からチャンスメイクを果たしているだけに、高部選手の勝負強さを勝利につなげたい。
残りわずかとなったシーズン、チームを救う「ラッキーボーイ」は現れるか
ポストシーズンにおいて、「ラッキーボーイ」や「シリーズ男」と形容される好調な選手が流れを変えるケースは、これまで数多く存在してきた。
今季のレギュラーシーズンは残り10試合を切っているだけに、今回取り上げた選手たちがそれに近い役割を果たす可能性は十二分にありうる。この中から激しい順位争いを勝ち抜くうえでの“救世主”が現れるかどうか、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太
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