中断期間もアピール合戦は熾烈を極めた
2021年シーズンは五輪期間中にプロ野球がおよそ1カ月にわたって中断されるという点で、通常とは大きく異なる日程となった。しかし、その間に全く実戦がなかったというわけではない。イースタン・ウエスタンの公式戦に加え、12球団による「2021プロ野球エキシビションマッチ」も開催されていたためだ。
エキシビションはオープン戦のように選手を「試せる」環境でもあったため、中断前にはなかなか一軍で出場機会を得られなかった選手が、少なからずチャンスを得ていた。投手陣に関しても先発・中継ぎの配置転換が行われるケースが見られ、各チームが再開後を見据えた起用を行っていたと考えられる。
今回は、そのエキシビションマッチで出場機会を増やしたり、それまでとは異なる打順や役割を任されていた選手たちの顔ぶれを紹介。後半戦での活躍に注目してもらいたい。
北海道日本ハム
前半戦では6月22日の試合を最後に一軍の試合から遠ざかっていた大田泰示選手が、エキシビションマッチの終盤からスタメンに復帰。昨季も序盤戦は不振だったものの、8月の月間打率.366、9月は同.337と、夏場以降に調子を上げたという経緯もある。8月12日にトレードで同じく外野手の木村文紀選手が加入したが、昨季のゴールデングラブ賞に輝いた名手が、再び主力の座を確保できるかに注目だ。
また、今季は先発として3試合に登板した立野和明選手がリリーフとして登板を重ねており、後半戦ではブルペンの一角として存在感を増す可能性が見えてきた。それに加えて、エキシビジョンの序盤戦でライトのスタメンとして起用されていた今川優馬選手も、8月1日の試合で本塁打を放つなど一定の存在感を見せており、今後の飛躍に期待を持たせている。
楽天
前半戦ではスタメン出場の機会が多くなかった田中和基選手が、エキシビションでは継続してスタメンで起用された。現在は打率.140と打撃不振に苦しんでいるが、新人王に輝いた2018年の打撃を取り戻すことができれば、再び外野の定位置争いに加わるだけのポテンシャルを持つ。また、二軍では打率.343と好調のオコエ瑠偉選手も、エキシビションを経て一軍でスタメン出場の機会を得ており、外野手争いがより激しさを増しつつある。
そして、山崎剛選手が浅村栄斗選手の不在に伴ってセカンドとしての出場機会を増加させただけでなく、センターやレフトとしても出番を得ていた。今季はイースタンでリーグトップの18盗塁を決めている韋駄天が、持ち前の俊足とユーティリティ性を武器に、いよいよ一軍の舞台で飛躍を果たせるか注目だ。
埼玉西武
エキシビションが開幕してからしばらくは、それまで3番打者を務めていた森友哉選手が2番に座り、呉念庭選手、中村剛也選手、山川穂高選手がクリーンアップを形成する打線を試行していた。本来の2番打者である源田選手の復帰後は森選手が3番に戻ったが、チーム事情によっては、再び森選手を1つ前に置く、“攻撃的2番”が採用される機会もあるかもしれない。
また、6月22日を最後に一軍出場がなかった川越誠司選手も、たびたび先発出場の機会を得ていた。今季は打率.333、OPS1.175と優れた数字を記録しているだけに、後半戦では出場機会を増やせるかに注目だ。投手では、前半戦の6試合は全て先発登板だったダーモディ投手が、リリーフに配置転換。MLB時代はリリーフを主戦場としていただけに、本来の持ち場で巻き返しを見せられるだろうか。
千葉ロッテ
今季は代走と守備固めとしての出場が続いていた和田康士朗選手が、エキシビション序盤でスタメンとして出場を続けた。今季は打席数こそ少ないながらも、打率.300、OPS.900と優れた数字を残しているだけに、チームへの復帰が8月下旬となる見通しのマーティン選手の復帰までに、外野手として先発出場の機会を増加させられるかに注目だ。
また、そのマーティン選手の不在に伴い、エチェバリア選手がエキシビション序盤で4番に座っていた。遊撃手としての華麗な守備だけでなく、7月は7試合で2本塁打、OPS.815と、故障からの戦列復帰後は打撃でも存在感を発揮。公式戦再開後はレアード選手が4番を務めるが、今季はチームとしてもなかなか4番が定まらないだけに、今後の調子次第では、再びエチェバリア選手が4番を務める可能性もありえそうだ。
オリックス
チームの大黒柱である吉田正尚選手の不在に伴い、空いた外野の枠には来田涼斗選手や佐野如一選手といった、ルーキーが起用されるケースも。同時に後藤駿太選手、小田裕也選手といった中堅選手も試されており、外野の競争は激しさを増している。また、故障から復帰した頓宮裕真選手が一塁手としても起用されており、後半戦では左打ちのT-岡田選手とのツープラトンに近い起用がなされる可能性もありそうだ。
投手では、吉田一将投手、海田智行投手、飯田優也投手といった実績のあるリリーフ投手たちが、エキシビションに入ってから登板機会を得ていた。いずれも今季はまだ一軍での登板がないだけに、今後も二軍で状態を上げていって層の厚い今季のリリーフ陣に割って入り、本来の実力を発揮するチャンスを得ることができるか。
福岡ソフトバンク
シーズン途中入団のアルバレス選手、阪神からのトレードで加入した中谷将大選手が、それぞれエキシビションから一軍の試合に出場。また、2020年のドラフト1位ルーキーの井上朋也選手、 若手のリチャード選手や増田珠選手と、新戦力や一軍出場のなかった選手にも出場機会が与えられた。戦列復帰を果たした主砲のアルフレド・デスパイネ選手も含め、故障者が相次ぐチームを救う救世主的な存在が現れるかに注目だ。
投手陣では、今季は先発再転向したものの不安定な投球が目立った高橋礼投手と、故障の影響で2020年以降は一軍登板のなかった甲斐野央投手が、エキシビションからそれぞれリリーフとして一軍に復帰している。いずれもコンディションさえ整えば勝ちパターンを担えるだけの実力を持った投手なだけに、このまま本来の投球を続け、後半戦であらためて存在感を示してほしいところだ。
エキシビションの大胆な起用法は、今後のチームにとっても財産に?
8月13日から再びペナントレースの行方をかけた戦いが始まった。真剣勝負のなかでテストを兼ねた起用を行うのは難しくなるだけに、今回のエキシビションで見られた、普段とは異なる大胆な起用法や若手の登用といった要素が、各球団の今後の戦いにおいて生きてくるだろう。
今回取り上げた、エキシビションで出場機会を増やした選手たちや、それまでとは異なる役割を経験した選手たちが、各チームの後半戦の戦いにプラスをもたらすかどうか。パ・リーグは今なお混戦が続いているだけに、この中断期間をより有益なものにできたチームが、後半戦をより有利に戦えるということに関しては、疑いようのないところだろう。
文・望月遼太
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