【勝利の分かれ目の一打席】好投する両先発の明暗を分けたのは、森友哉への四球だった

中島大輔

2020.6.19(金) 21:55

埼玉西武ライオンズ・森友哉選手【撮影:海老原悠】
埼玉西武ライオンズ・森友哉選手【撮影:海老原悠】

 3カ月遅れの開幕戦、そして無観客試合の独特な緊張感がメットライフドームを包むなか、埼玉西武対北海道日本ハムの一戦は序盤から珠玉の投手戦が繰り広げられた。

 なかでも完璧な立ち上がりを見せたのが、北海道日本ハムの有原航平だった。フォーシームやカットボール、チェンジアップ、フォークなど多彩な持ち球を使い分け、3回まで9人連続初球でストライクを取るなど完璧に押さえ込む。この回までに要した球数は、わずか27球だった。

 抜群の出来の有原を、西武の強力打線はどう打ち崩すのか。打線が二巡目を迎えた4回裏、先陣を切ったのが、1番に入った新外国人のコーリー・スパンジェンバーグだった。1ボールからセンター前に弾き返し、チーム初安打を記録する。

「あの1本がすべての始まりだと思います」
 うれしい来日初安打をそう振り返った通り、この一打から西武打線がつながっていく。2番・源田壮亮がライト前に弾き返して無死1,2塁。

 ここで昨年の首位打者、3番・森友哉が持ち味を発揮する。ギアを上げた有原は2ボール、2ストライクからの6球目、クイックからチェンジアップを投じたが、森は厳しいボールを見事な選球眼で見極める。そして7球目も外れ、無死満塁で山川につないだ。

(C)PLM
(C)PLM

 マウンド上の有原は2球で追い込むと、3球目の148km/hストレートは力が入って外れる。そして4球目、勝負球のフォークが真ん中に抜けると、山川のサードへのボテボテの当たりは内野安打になり、西武に待望の先制点が転がり込んだ。続く外崎修汰が押し出し死球、さらに栗山巧のサードゴロの間に1点を加え、西武が3点をリードした。

「立ち上がりはコースを狙いすぎるところがありました」
 西口文也投手コーチがそう話したように、埼玉西武で25年ぶりに外国人投手として開幕投手を務めたニールは2回まで44球を要するなど、序盤は決して本調子ではなかった。しかし徐々に状態を上げ、高速シンカーとチェンジアップ、カットボールのコンビネーションでスコアボードにゼロを並べていく。

 昨季12勝1敗でリーグ制覇の立役者になったニールは、3点のリードをもらった5回表、持ち味を存分に発揮する投球で試合の流れを引き寄せた。

 なかでも出色だったのが、先頭打者の野村祐希に対する攻め方だ。1ボールからチェンジアップ、カットボールという独特の軌道を描くボールでファウルを打たせると、最後は外角の厳しいコースに143km/hの高速シンカーを決めて見逃し三振。高卒2年目、開幕戦でプロ初スタメンを飾ったプロスペクト(有望株)に対し、老獪な投球でバッティングをさせなかった。

 ニールが100球を超えた6回まで無失点に抑えると、西武は7回から平井克典、ギャレット、増田達至の必勝リレーで逃げ切り完封逃げ切り。今季初勝利を飾ったニールは、「今日の結果にはとても満足している。これを毎回続けていきたいね」と話した。

 一方の日本ハムは、2安打のみと打線が沈黙。しかし先発の有原は4回を除いて抜群の出来で、勝負を分けたのはほんのわずかな差だった。実力伯仲のパ・リーグにふさわしく、今後の白熱した戦いを期待したくなる幕開けだった。


文・中島大輔

記事提供:

中島大輔

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