規定投球回に到達して防御率1点台の投手が4名も誕生
モイネロ投手が防御率1.46という圧倒的な成績を残して最優秀防御率を受賞し、規定投球回に到達して防御率1点台の投手は実に4名も存在した。これらの数字も相まって、2025年は例年以上に投高打低の傾向が強まっていることを感じさせるシーズンに。
その一方で、リーグ全体の打撃成績に目を向けてみると、また違った傾向が浮かび上がってくる。今回は、リーグ全体の打撃成績と打撃主要3部門のトップ10ランキングについて確認して、今季のパ・リーグを深く掘り下げていきたい。
チーム打率と安打数に関しては、リーグ全体において上昇傾向が見られる
2024年と2025年にパ・リーグ6球団が記録した、チーム全体の打撃成績は下記の通り。


2024年のチーム打率は福岡ソフトバンクが.259でリーグトップに位置し、千葉ロッテ、北海道日本ハム、東北楽天の3チームが.240台の数字を記録。リーグ5位のオリックスも.238と大きな差はない水準にとどまったが、同6位の埼玉西武は.212と大苦戦を強いられた。
今季も福岡ソフトバンクが打率.257でリーグ1位となったが、リーグ2位のオリックスの打率も.255まで上昇。北海道日本ハム、東北楽天、千葉ロッテの3チームも.240台の数字を記録し、埼玉西武の打率も.232と前年と比較して大きな向上を見せている。
打率に直結する数字である安打数に関しても、2024年は福岡ソフトバンクが1244本、埼玉西武が971本、それ以外の4チームが1100本台という状況だった。しかし、2025年は1200本台のチームが3球団に増え、残る3チームも1100本台の数字を記録。それに加えて、リーグ全体の安打数に関しても、6844本から7124本と大幅に増加している。
安打数だけでなく、得点数と本塁打数に関しても同様の傾向が示されていた
2024年の得点数は福岡ソフトバンクがリーグで唯一600得点を超え、北海道日本ハムが532得点でそれに続き、400点台が3球団、300点台が1球団となっていた。しかし、2025年は3球団が500得点を上回り、残る3球団も400点台に到達。さらに、リーグ総得点も2024年の2876得点から2025年は2898得点に、リーグ全体の得点数も向上を見せている。
そして、本塁打数も2024年は福岡ソフトバンクと北海道日本ハムがともに110本台、70本台が3球団、60本台が1球団という結果だった。2025年は北海道日本ハムが129本、福岡ソフトバンクとオリックスが100本台と3桁の本塁打を放ったチームが増加し、埼玉西武が前年から20本と大幅に本塁打を上乗せして80本台に到達している。
千葉ロッテと東北楽天も前年同様に70本台の本塁打数を維持しており、リーグ全体の本塁打数も2024年の503本から、2025年は553本と実に50本も増加。安打数や得点数と同じく、本塁打数に関してもリーグ全体で増加傾向にあると言えよう。
個人成績に目を向けると、打率は前年に比べて向上が見られたが……
次に、2024年と2025年におけるパ・リーグの打率ランキングトップ10の顔ぶれと、各選手の成績を見ていきたい。


2024年は近藤健介選手、2025年は牧原大成選手と、どちらのシーズンも打率.300以上を記録した打者は1名のみ。それに次ぐ打率.290台を記録した選手もそれぞれ1名ずつだが、打率.280以上の打者は2024年が1名だったのに対し、2025年は4名へと大きく増加している。
また、2024年は打率上位10名のうち5名が打率.260台だったのに対し、2025年は上位10名全員が打率.270台以上を記録。選手個人という観点で見ても、全体的に打率が向上しつつあることが直近2年間の結果からもうかがえる。
続いて、2024年と2025年におけるパ・リーグの本塁打ランキングトップ10の顔ぶれと、各選手の成績を紹介する。


2024年に本塁打王を獲得した山川穂高選手が34本、2025年に同タイトルを受賞したレイエス選手が32本と、リーグ1位の選手の数字に大きな差はない。ただし、20本台の本塁打を放った選手の数は、2024年が4名、2025年が3名と若干の差が生じていた。
そして、2024年は15本塁打以上20本塁打未満を記録した選手が4名存在したものの、2025年に15本塁打以上20本塁打未満を記録したのはボイト選手ただ一人。リーグトップ10に入った選手の本塁打数という面においては、2025年はやや減少傾向にあったことがうかがえる。
最後に、2024年と2025年におけるパ・リーグの打点ランキングトップ10の顔ぶれと、各選手の成績を確認しよう。


2024年の打点王である山川選手が99打点、2025年に同タイトルを獲得したレイエス選手は90打点と、リーグトップの選手の数字はやや減少していた。さらに、2024年は70打点以上の選手が4名存在したのに対し、2025年にリーグ2位となった清宮幸太郎選手の数字は65打点と、2位以下の選手の数字には大きな差が生じていた。
個人成績とチーム成績では、異なる傾向が示されていた理由とは?
これまで紹介してきた通り、本塁打と打点のトップ10に入った選手が残した数字は概ね低下している傾向にある一方で、打率ランキングでトップ10入りした選手の成績は全体的に上昇。また、リーグ全体の打撃成績に関しては総じて増加している点も興味深い要素だ。
その理由を考察するにあたって、本塁打と打点の数字をより深く掘り下げていこう。2桁の本塁打を放った選手の数は、2024年の13名から2025年は18名に増加。2025年はリーグ上位の本塁打数を記録した選手が個人で記録した数字は減少傾向にある代わりに、より多くの選手が一定以上の本塁打数を記録できるようになったと考えられる。
50打点以上を記録した選手の数を見ていくと、2024年が12名、2025年が11名と大きな差は存在しなかった。そこで、30打点以上を記録した選手まで観測の範囲を広げてみると、2024年は35名だったのに対して、2025年は42名と増加していた。
今季は各球団の主力選手がけがや不振で出番を減らすケースが散見されたが、代わって出場機会を得た選手たちが一定以上の数字を残したことが、これらの数字から読み取れる。こうした事情も相まって、選手個人が記録した本塁打や打点の数はやや減少傾向にあったとしても、リーグ全体の打撃力に関しては底上げが進みつつあるという見方もできそうだ。
来季もリーグ全体の打撃成績は向上を続けるか、それとも別の傾向を示すのか
規定打席に到達したうえで打率.300以上を記録した選手が2年続けて1名のみと、直近2年間において投高打低の傾向が強まりつつあることは確かだ。その一方で、リーグ全体における安打数、本塁打数、得点数といった各種の成績は2025年において全て増加を見せており、より多くの選手が年々レベルアップする投手の球に適応しつつあることもうかがえる。
来季もこの傾向が続いてリーグ全体の打撃成績は向上を続けるか、それとも今季とは別の傾向を示すことになるか。今後も選手個々の成績と、リーグ全体の成績の双方に目を向けることによって、リーグ全体の趨勢をより深く知るきっかけを得られるようになるはずだ。
文・望月遼太
