年間300試合以上の中継に加え、新企画も開始予定
1月12日、パ・リーグ6球団とパシフィックリーグマーケティング(以下PLM)は、台湾のスポーツ専門局であるFOXスポーツ台湾との間で、2019年シーズンから3年間の、台湾におけるパ・リーグ主催試合の放送契約を締結したと発表。15日の14時(日本時間15時)から、台北市内で契約合意の記者会見が行われた。
会見には、FOXネットワークグループアジア副総裁兼中華圏(台湾・中国)最高業務責任者の蔡秋安氏、PLM代表取締役CEOの根岸友喜氏、そして、千葉ロッテのチェン・グァンユウ、このオフに北海道日本ハムに入団した王柏融らが出席した。
FOXスポーツ台湾は2014年から、当時、陽岱鋼(現巨人)が所属していた北海道日本ハムの試合を中心に中継を開始。2015年からはチェンや郭俊麟(埼玉西武)の登板試合の中継も始めていき、2016年からはPLMと3年間の放映権契約を締結していた。
台湾ではオープン戦からパ・リーグ主催公式戦(セ・パ交流戦を含む)、そしてクライマックスシリーズに至るまで、一週間に10試合以上、年間では300試合以上の中継が行われてきた。今回の契約合意により、今シーズンも同様に300試合以上の試合が中継される見通しとなっている。
なお、今シーズンからはFOXスポーツ台湾のアナウンサーがファンと共に日本の球場を訪れ、台湾出身選手を応援する企画も行われる予定だという。
FOXスポーツ台湾ではスポーツマーケティング教育の構想も
FOXの蔡秋安氏は、5年前にパ・リーグの試合中継を検討し始めた当初は台湾出身選手が2人しかいなかったこともあり、大多数の台湾のファンにとって同リーグは身近な存在ではなく、手探りの状態であったと当時のことを振り返った。
こういった状況では自ら知恵をしぼるだけでなく、日本側の受け入れが必須といえる状態だった。そして、この数年間にわたって、FOXグループとPLMの両社は素晴らしいパートナーシップ関係を築くことができた、と現状についての喜びを見せていた。
蔡氏は、今シーズンは8人の台湾出身選手(文末の選手一覧参照)がパ・リーグでプレーすることにも言及。台湾の優れた選手たちの日本における活躍を、今後3年間にわたって、CATV、IPTVの3チャンネルや、OTTの「FOX+」などFOX台湾の様々なプラットフォームを通じて、台湾のファン一人ひとりにリアルタイムで届けられることを嬉しく思う、と述べた。
それに加えて、蔡氏はPLMとの間では今後も様々な展開が可能だとしている。具体的な例としては、日本プロ野球を通じたスポーツマーケティング教育を挙げた。蔡氏は、大学でワークショップを開催して野球解説者を招いたり、試合中継を利用して、より多くの台湾の若者が、スポーツマーケティングのほか、エンターテインメントやレクリエーションについて学べる場を作っていく構想を明かした。そして、スポーツ、教育、文化を通じた交流を今後も進めていきたいという希望についても語っている。
来場促進、そして野球文化の浸透へ。PLM10年計画は次のステージに
PLMはインバウンドビジネスの最重要マーケットとして、かねてから台湾市場に対してフォーカスしてきた。これまでも、訪日旅行客の球場来場促進のため、放映権販売、繁体字中国語Facebookページの開設、旅行展示会への参加、台湾プロ野球球団との共同イベント開催などの各種取り組みを行ってきたという背景がある。
PLM代表取締役CEOの根岸友喜氏は会見での挨拶の冒頭で、「FOXさんと3年間の契約を締結できて光栄です。ファンを増やすために、そして、台湾と日本の交流をより盛んにするために、一緒に様々な活動をしていきましょう」と、中国語で呼びかけてみせた。
根岸氏は、2014年の時点で今後10年間のビジョンを持っていたとして、昨年まではFOXスポーツ台湾を通じて、まずはパ・リーグの試合に触れてもらうことに注力してきたと説明。それに加え、今後の3年間については台湾のファンが実際に日本の球場を訪れ、そして楽しんでもらうための活動に力を入れていきたい、と説明した。
そして、10年計画の最後の段階においては、台湾のファンに、日本の球場で感じた経験、体験、文化などを台湾に持ち帰ってもらい、生活の中に野球がより根付いていくための貢献をしていきたい、と述べた。
根岸氏はまた、日台において共に一番人気のスポーツである野球を通じ、台湾との交流をさらに深めていきたいと希望した。そして、これらの取り組みはFOXスポーツ台湾の協力がなければ実現できないと強調。台湾のファンに向けて、FOXスポーツ台湾を通じて日本の野球を楽しんでほしいと呼びかけた。
FOXスポーツ台湾の看板アナが見た、パ・リーグの魅力とは
FOXスポーツ台湾のパ・リーグ中継に関わってきた人々は、台湾のファンに対してパ・リーグをどのように伝えてきたのだろうか。また、このリーグの魅力についてはどのように考えているのだろうか。豊富な実況経験をもつFOXスポーツ台湾の看板アナ、許乃仁アナウンサーに話を聞いた。
今シーズン、日本プロ野球の各球団には計10人の台湾出身選手が在籍。このうちの大部分、実に8人がパ・リーグでプレーする選手だ。許氏は、今シーズンはパ・リーグ6球団のうち5チームに台湾出身の選手が在籍し、唯一の例外である福岡ソフトバンクにも中華民国籍の王貞治会長が在籍している点を挙げ、台湾のファンにとって、パ・リーグは特に親しみを感じる存在なのだと説明した。
また、実況にあたっては、野球に関することだけでなく、日本の文化や習慣、さらには祝日など日本の様々な事柄を紹介し、台湾のファンに対して、日本プロ野球をより身近に感じてもらえるよう努力していると語った。
許氏によると、FOXスポーツ台湾が行ってきた5年間の中継を経て、今では台湾のファンは各チームの選手のみならず、監督やコーチについてもよく知っており、また、多くの人が実際に日本の球場に足を運んでいるだろう、と述べている。
そして、台湾のファンが日本プロ野球に対する一定の知識を得た今、王柏融が北海道日本ハムに入団したことは、日本プロ野球、そしてパ・リーグをより楽しむためには絶好のタイミングといえる、とその喜びを語っていた。
王柏融フィーバーが起きれば、日台の双方にとって追い風に
なお、記者会見においては、王柏融が、試合前練習の合間にパ・リーグの中継を見ており、特にチェンが先発する試合はクラブハウスで応援していたというエピソードを明かした。また、北海道日本ハムへの入団を決めたことについては、中継を通じて比較的身近に感じていたことも大きかったと述べており、台湾においては多くのプロ野球選手が日本プロ野球の中継を日常的に観戦し、そして親しみを感じていることは確かなようだ。
許氏も指摘した通り、台湾プロ野球で2度にわたって打率4割以上をマークし、2017年には三冠王にも輝いた「大王」こと王柏融の北海道日本ハム入団により、台湾におけるパ・リーグ中継への注目度はさらに高まりを見せている。
国際社会におけるその微妙な境遇もあり、台湾では海外で大活躍したアスリートに対して熱狂する人が多い。今シーズン、王柏融が日本プロ野球で期待通りの活躍を見せれば、王柏融が所属していたLamigoモンキーズのファンや既存の台湾プロ野球ファンに加え、また新たな野球ファンが生まれていき、そのことがインバウンドの促進などの、日台双方の新たな取り組みを大きく後押しすることにもなっていくだろう。
2019年パ・リーグに所属する台湾出身選手一覧
<北海道日本ハムファイターズ>
王柏融選手(ワン・ボーロン)
<東北楽天ゴールデンーグルス>
宋家豪投手(ソン・チャーホウ)
<埼玉西武ライオンズ>
廖任磊投手(リャオ・レンレイ)
郭俊麟投手(クォ・ジュンリン)
呉念庭選手(ウー・ネンティン)
<千葉ロッテマリーンズ>
陳冠宇投手(チェン・グァンユウ)
李杜軒選手(リー・トゥーシェン)
<オリックス・バファローズ>
張奕投手(チョウ・ヤク)※育成選手
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