来日1年目から日本球界に適応できたのはなぜ? ウィンゲンターとネビンの活躍にデータで迫る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2025.8.23(土) 10:00

 埼玉西武・ウィンゲンター投手、ネビン選手【画像:球団提供】
埼玉西武・ウィンゲンター投手、ネビン選手【画像:球団提供】

NPB初年度からチームを支える存在となり、今後のさらなる活躍にも期待が集まる

 8月18日、埼玉西武がトレイ・ウィンゲンター投手と来季の契約を締結したことを発表した。6月23日にはタイラー・ネビン選手とも来季以降の契約延長を発表しており、投打にわたってチームを支えている助っ人たちの今後の活躍にも期待が高まるところだ。

 今回は、ウィンゲンター投手とネビン選手がNPBの舞台で記録している、各種の指標について確認。来日1年目からいち早くNPBに適応し、主力として奮闘を続けている投打の助っ人が備える特長と強みを紹介するとともに、今後のさらなる活躍にも期待を寄せたい。(※記録は8月19日の試合終了時点)

MLBの舞台でも示した奪三振率の高さに加え、課題だった制球面も大きく改善

 ウィンゲンター投手がNPBで記録してきた、各種の投手指標は下記の通り。

ウィンゲンター投手 年度別投手指標 ©PLM
ウィンゲンター投手 年度別投手指標 ©PLM

 ウィンゲンター投手が持つ最大の特長として、37イニングで58奪三振とかなりのハイペースで三振を奪っていることが挙げられる。奪三振率も14.11と非常に高い水準にあり、快速球とスライダーを活かして独力でアウトをもぎ取ることができる点は大きな強みだ。

 また、MLBでは通算97試合に登板し、キャリア平均の奪三振率は11.99とハイレベルな数字を残していた。世界最高峰の舞台で並みいる強打者を相手に三振を奪ってきた実力を、日本球界でも存分に発揮していると言えよう。

 それに加えて、与四球率も2.92と一定以上の水準に達しており、制球に苦しんで走者を溜めるケースが少ない点もポイントだ。さらに、三振を四球で割って求める、制球力や投手としての力量を示す「K/BB」に関しても、一般的に優秀とされる3.50という水準を大きく上回る4.83という数字を残し、投手としての高い能力を示している。

 ただし、ウィンゲンター投手のMLBにおけるキャリア平均の与四球率は4.72と、来日前の段階では制球面がやや不安定だったことがうかがえる数字が残っている。NPBへの移籍を機に大きな課題だったコントロールが劇的に改善されたことが、現在の活躍につながっていると考えるのが自然だろう。

四球を出す割合の低下が、投高打低の傾向が強まるNPBの環境と噛み合っている

 さらに、今季の被打率は.133と痛打を浴びる割合も低い。奪三振の多さに与四球・被安打の少なさといった要素が重なり、1イニングごとに出した走者数の平均を示す「WHIP」も0.76と非常に優秀な水準に達しており、そもそも走者を出すこと自体が少なくなっている。

 本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す「被BABIP」は.212と、一般的に基準値とされている.300を大きく下回っている。被BABIPは投手自身がコントロールできる部分が少なく、運に左右される要素が大きい指標であると考えられているが、近年は投高打低の影響で、NPB全体の被BABIPが低下傾向にあることには留意すべきだろう。

 ウィンゲンター投手は来日後に制球力を大きく改善させ、四球を出さずに打者と勝負する機会を増やしている。この点がNPB全体の被BABIPの低下と噛み合ったことによって、投球の安定感が飛躍的に高まっていると考えられる。

打撃ランキングの各部門で上位に入り、リーグ屈指の生産性を発揮している

 ネビン選手がNPBで記録している、各種の打撃指標は下記の通り。

ネビン選手 年度別投手指標©PLM
ネビン選手 年度別投手指標©PLM

 ネビン選手は現時点でリーグ3位の打率.288、同2位の114安打を記録し、コンスタントに快打を重ねて打線をけん引している。さらに、開幕からここまで全試合出場を継続しており、来日1年目から離脱を経験することなく好成績を残し続けている点も特筆に値しよう。

 出塁率もリーグ2位の.362と優秀で、打率と出塁率の差を示す「IsoD」は.074と一定の水準にある。リーグ3位の48打点と勝負強い打撃を見せるだけでなく、チャンスメイク能力にも優れているという点が、ネビン選手の打者としての価値をさらに高めている。

 また、リーグ4位の12本塁打という成績に加えて、本塁打を1本放つのに必要となる打数を示す「AB/HR」もリーグ6位の33.00と、一定以上の長打力も備えている。さらに、リーグトップとなる22本の二塁打を記録し、長打率もリーグ4位の.434と多くの塁打を生み出している点も注目すべきポイントだ。

 選球眼の優秀さと塁打の多さが相まって、OPSもリーグ2位の.797という数字を記録。打撃ランキングの各部門で上位に入っているだけでなく、パ・リーグ内でも屈指の生産性を誇る打者の一人であることが、各種の指標においても示されている点も頼もしい要素だ。

三振する頻度の低さの低さと、高いコンタクト力も活躍の要因に

 さらに、450打席で56三振という数字からうかがい知れる、コンタクト能力の高さもネビン選手の強みだ。四球を三振で割って示す、選球眼を示す指標の一つである「BB/K」も.679と一定以上の水準にあり、ストライクゾーンを管理する能力の優秀さを示す証左となっている。

 そして、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す「BABIP」が.306と、基準値の.300を上回っている点もコンタクト力の高さと噛み合っている。三振を喫する頻度が低く、打球を前に飛ばす回数が多いというネビン選手の特性が、一定以上の値を記録しているBABIPと相まって、安打の量産につながっていることがわかる。
 
 MLB時代は通算のIsoDが.095と優れた選球眼を発揮していた一方で、通算打率は.204と確実性を欠き、通算のOPSも.614と高くはなかった。通算BABIPが.251と運に恵まれなかったことも示唆されているだけに、打球の強さが増し、基準値に近いBABIPを記録しているNPBにおいて、いわば本来の実力を発揮できるようになったという考え方もできそうだ。

来日をきっかけに大きな進化を遂げた

 ウィンゲンター投手は来日後に制球力を大きく改善させたことで、持ち前の奪三振力の高さが存分に発揮されるようになり、セットアッパーとしてまさに支配的な投球を展開。ネビン選手は助っ人らしい強打に加えて、優れたコンタクト力も随所で発揮し、あらゆる面で生産性の高い打撃を披露して打線を支える存在となっている。

 就任1年目の西口文也監督のもとで戦うライオンズにあって、安定した働きを続ける2名の助っ人は、今や欠かせない存在となりつつある。今後も重要な局面でチームを救う活躍を見せてくれるであろう両選手のプレーに、今後はより一層注目してみてはいかがだろうか。

文・望月遼太

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