獅子のルーキーが痛感した課題 そして1年目で決断した大きな変化とは

パ・リーグ インサイト 武山智史

2018.12.15(土) 11:00

埼玉西武ライオンズ・綱島龍生選手【撮影:武山智史】
埼玉西武ライオンズ・綱島龍生選手【撮影:武山智史】

 昨年11月、「ドラフト指名直後の高校生は何を思う」という記事で埼玉西武に6位指名された新潟県・糸魚川白嶺高校の綱島龍生選手を取材した。あれからちょうど1年、背番号「63」のユニホームを身にまとい、プロ1年目のシーズンを終えた綱島選手に今の心境を聞いた。

松井二軍監督の指導の下、着実にステップを踏む毎日

 11月中旬、西武第二球場での所沢秋季キャンプ。綱島選手は高木浩之二軍野手総合コーチ兼打撃コーチが手で転がすゴロを繰り返し捕球し続けていた。

 高木コーチの横では今シーズン限りで現役引退し、指導者に転じた松井稼頭央二軍監督が綱島選手のプレーをじっと見つめる。しばらくすると松井二軍監督は助言を送り、自らグラブをはめて手本を見せるなど、熱のこもった指導が続く。綱島選手もその捕球動作を、逃さぬようにじっと見ていた。

 ゴロ捕球を何度も繰り返していくうちに、綱島選手の動きは次第に柔らかく、滑らかなものへと変わっていく。その姿に松井二軍監督は「良いよ、良いよ」「その感覚、無かっただろ?」と声を掛けていた。練習後、綱島選手は取り組みの意図をこう説明する。

「ゴロを捕る姿勢や腕の使い方を教わっていました。肘を柔らかくして『捕まえたよ』と自分で意識して、入っていく感じですね。ちゃんとショートバウンドをしっかり捕球できるように練習しているので、その感覚を身に付けているところです。ずっとこの秋のキャンプでテーマにしていて、少しずつ手応えを感じています」

 2000年1月生まれの綱島選手にとって、1975年生まれの松井二軍監督は両親と同世代。今シーズンはほとんど接点が無かったが、この秋から指導者と選手の関係になり接する機会が多くなった。

「僕の中では東北楽天でプレーしていたときのイメージが強いです。でもメジャーに行く前、西武時代のプレー動画を見ていました。その人から今、教えてもらっている。とても勉強になります」とゴールデングラブ賞を4度受賞した名選手の技術を、必死に学ぼうとしている。

綱島選手と松井稼頭央二軍監督【撮影:武山智史】
綱島選手と松井稼頭央二軍監督【撮影:武山智史】

 高校を卒業し、野球が仕事となった。結果が求められる世界ではあるが、今まで経験してこなかった新しい技術や感覚の発見は「うまくなりたい」という気持ちをさらにかき立てる。

「どんどん自分がうまくなるための練習をしているので楽しいですね。いつか自分の感覚として身に付いてくれば、楽しみだなと感じています」

チームメートからのアドバイスを受け入れ、変化を恐れずに取り組む

 プロ1年目のシーズンを終え、綱島選手はどう感じているのか。

「本当にあっという間でしたね。先月ドラフト会議があって『去年は自分がこの立場だったな』と思い出しました」

 春先には一軍の選手が西武第二球場で練習するのを見て、レベルの違いを思い知った。山川穂高選手の打球の飛距離、源田壮亮選手の守備のうまさに圧倒された。イースタン・リーグでは序盤、なかなか結果が出ず「初球から積極的に手を出せなかったし、変化球にも対応できなかった。自分の感覚が全く見付けられなかった時期でした」と苦闘の日々が続いた。

 そんな中でも先輩や同期の意見に耳を傾け、自分の引き出しを増やそうと取り組んだ。守備では個別練習で一緒になることが多い呉念庭選手から助言を受けた。「普段は仲が良いですが、グラウンドに出ればライバル」という同期入団の西川愛也選手とは夜間練習を共にし、打撃の良い箇所を取り入れようとした。

 調整で二軍に合流していた金子侑司選手には「盗塁するときのリードや心がけはどうしているのですか?」と質問。リードの幅や目線について教わり「一歩目が切りやすくなりました」とその効果を挙げる。

 夏場に入ると、打席でバットを小刻みに動かす構えに変わる。すると試合でも安打を打つ場面が増えていく。「打撃コーチと相談しながらちょこちょこ構えを変えていました。『体のどこを動かしてタイミングを取るか』と考えたときに、自然とその形になりましたね。それがたまたま合ったと思います」

 特に印象に残っているのは7月22日、メットライフドームで行われた東北楽天戦。8回に福山博之投手から打った右中間へのタイムリー3ベースだ。ちょうどこの試合は新潟から家族が観戦に来ていただけに「家族の前で打てて良かったです」と笑顔を見せる。

 今季はイースタン・リーグで56試合に出場し、打率.238という結果だった。この話を向けると綱島選手は悔しい表情を浮かべた。

「肩をケガして試合に出られない時期がありました。その期間はもったいなかったと感じています。肩をしっかりケアしていればもっと早く試合に出られただろうし、色々なピッチャーと対戦できたのに…」

 1年目のシーズンを終え、課題はまだまだ多いと感じている。

「打撃では変化球への対応がまだまだ甘いし、守備では試合に出て全部捕れるかと言われたらまだ自信はない。課題は山積みなので一つ一つクリアしていきたいです」

 バットを小刻みに動かす構えは、今はゆったりと動かすものに変わっている。その根底にあるのは「今までのままでは打てない」という考え。構えやボールの見方をガラッと変え、試行錯誤を繰り返している。

 プロ2年目に向け「イースタンの試合に出ないことには一軍に呼ばれない。試合に出られるように守備、打撃などの全てでレベルアップし、早く一軍に行って活躍したいです」と意気込みを語ってくれた。自分の感覚を一日も早くつかむため、綱島選手の奮闘は続く。

埼玉西武ライオンズ・綱島龍生選手【撮影:武山智史】
埼玉西武ライオンズ・綱島龍生選手【撮影:武山智史】

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