セ・リーグで最も安定してイニングを投げている投手は…
現代のプロ野球では、投手は“分業制”となっている。何十年も前では、その日先発した投手が翌日の試合も登板したり、リリーフに回ったりすることがあったが、今ではケガのリスクが大きいため、ほとんどすべてのチームで、先発投手とリリーフ投手の役割が分けられている。先発投手が90から120球前後を目安に投球をし、試合状況に応じて後のイニングをリリーフの投手が抑えるというのが最も一般的な形といえる。
失点を喫してもある程度イニングを投げることが計算できる投手はどの球団にも重宝される存在だ。もちろん内容がいいに越したことはないが、どの投手にも調子や体調の波があり、登板試合すべてでベストなわけではない。悪い時に悪いなりに試合を作ることができる投手は、リリーフを休ませることや、準備のタイミングが読みやすくなることにつながり、負担を減らすことができる。
今季20試合以上の先発登板をしているピッチャーが、先発登板時に平均何イニング投げているのかを計算した。
※投球回は先発登板時のみ
【セ・リーグ トップ5】
○菅野智之投手(巨人)
27先発 201回 平均7.44回
今シーズン、自身初にして両リーグで唯一200イニングを投げた菅野が1位に輝いた。10完投、8完封は2位以下を大きく引き離しており、平均投球回は7.44回を記録した。QS(クオリティスタート、6回以上を投げて自責3以下)率も70.3パーセントと申し分なかった。リリーフが軒並み不調だった巨人投手陣を補い、チームでリーグトップの防御率を残した原動力となった。
○山口俊投手(巨人)
21先発 142回 平均6.76回
9勝9敗と貯金は作れなかったが、平均で6.76回、リーグ2位の6完投を投げ、リリーフの負担軽減に大きく貢献した。QS率61.9パーセントも及第点。球団の投手事情から終盤にリリーフに配置転換されたあとも、イニング跨ぎも厭わないタフネスぶりをみせ、菅野とともに巨人投手陣を引っ張った。
○大瀬良大地投手(広島)
27先発 182回 平均6.74回
リーグ最多の15勝を挙げ飛躍した広島の新エースが、平均6.74回で3位となった。QSはリーグ最多の21回、QS率は菅野を凌ぐ77.8パーセントを記録し、質、量ともに安定感を見せた。シーズンを通して波が少なく、広島の3連覇に大きく貢献した。
○ガルシア投手(中日)
26先発 167回1/3 平均6.43回
中日の新外国人であるガルシアが平均6.43回で4位となった。今シーズン慢性的な投手不足に苦しんだ中日で1年間先発ローテーションを守り、防御率2.99はリーグ4位だった。ワースト2位となる73個の四球を与え、球数が嵩んだが、それに負けないスタミナを誇った。
○東克樹投手(横浜DeNA)
24先発 154回 平均6.42回
今年の新人王は防御率でリーグ2位、平均投球回でも6.42回を記録。特質すべきは奪三振能力の高さで、セ・リーグで今季奪三振数(155)がイニング数を上回ったのは東のみだった。去年の先発投手陣が軒並みケガや不調に苦しみ、リリーフの登板数が多くなった横浜DeNAにおいて、ある程度のイニングを期待できる数少ない選手だった。
パは菊池がトップ、最高勝率のボルシンガーは平均6回に届かず
【パ・リーグ トップ5】
○菊池雄星投手(埼玉西武)
23先発 163回2/3 平均7.11回
序盤はケガで出遅れたが、終わってみればリーグ2位の防御率3.08、リーグトップの平均7.11回を記録した。決して盤石ではない埼玉西武のリリーフ陣を休ませ、10年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。
○岸孝之投手(東北楽天)
23先発 159回 平均6.91回
FAで東北楽天に加入した2年目、防御率トップを記録。終盤に離脱した影響からか前年から投球回数は減らしたが、平均投球回数では前年を上回る6.91回を投げた。コントロールに優れ、わずか29個しか四球を与えず、これがイニング数増加につながったと考えられる。最下位に沈んだ東北楽天の中で奮闘を見せた。
○涌井秀章投手(千葉ロッテ)
23先発 150回2/3 平均6.85回
過去2シーズンでリーグ最多投球回を記録するなどスタミナに定評があり、今季も平均6.85回を投げてスタミナを見せつけた。完投は1つと、全盛期に比べ近年は大きく数字を落としているが、まだまだイニングを食える投手だ。
○則本昂大投手(東北楽天)
26先発 177回1/3 平均6.82回
勝利、防御率でキャリアワーストを記録、奪三振も200に届かなかったのはルーキーイヤー以来で、QS率は57.7パーセントにとどまるなど苦しんだが、投球回数はリーグトップ。平均でも6.82回を記録し、調子が上がらないなりにイニングを稼いだ。
○多和田真三郎投手(埼玉西武)
26先発 172回2/3 平均6.64回
今季初の2桁勝利となる16勝を挙げ、最多勝に輝いた。防御率3.81はリーグワースト2位だったが、172回2/3、平均6.64回を投げ、埼玉西武のリーグ制覇に大きく貢献した。
ほかにも東京ヤクルトのブキャナン投手(平均6.23回)や、オリックスの西勇輝投手(平均6.49回)、中日の吉見一起投手(平均6.28回)などは、防御率が3点台後半から4点台とよくはないが、リリーフの負担を減らした。対して千葉ロッテのボルシンガー投手(平均5.88回)や阪神の岩貞祐太投手(平均5.74回)らは防御率が3点代前半ながら平均投球回は6回に満たなかった。
(Full-Count編集部)
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