【日本S】驚愕の4戦連続盗塁阻止 阻止率10割の“甲斐キャノン”に隠された秘密

Full-Count 福谷佑介

2018.11.1(木) 06:45

福岡ソフトバンク・甲斐拓也※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)
福岡ソフトバンク・甲斐拓也※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)

正確なスローイングは、捕球前の「左足」が鍵

 衝撃的だった。福岡ソフトバンクの甲斐拓也捕手が頂上決戦で、圧巻の盗塁阻止を連発している。31日、本拠地ヤフオクドームで行われた広島との日本シリーズ第4戦。5回2死で盗塁を仕掛けてきた広島の安部を、完璧な送球で阻止した。

 第1戦で代走・上本の盗塁を刺し、第2戦では鈴木誠也の盗塁を阻止。さらに第3戦では広島のリードオフマン田中を刺し、そして、この4戦目での安部だ。度々、盗塁を仕掛けてくる広島ベンチだが、それをことごとく阻止。このシリーズ、甲斐が企図された盗塁は4度。その全てを刺し、盗塁阻止率10割を継続している。

 今季の盗塁阻止率は.447を誇り、12球団単独トップだった甲斐。キャッチャーが捕球してから送球が二塁に到達するまでの時間“ポップタイム”は1.9秒台が平均とされる中、甲斐はそれを遥かに上回り、最速で1.7秒台。もちろん、その強肩も高い阻止率の要因の1つではあるが、甲斐が盗塁を阻止できる“秘密”はそれだけではない。正確無比なコントロールも、忘れてはいけない。

 甲斐の正確無比のスローイングの中で鍵を握るのがステップをする際の「左足の動き」だ。甲斐は一塁走者がスタートを切ったことを確認すると、ミットの位置を固定したまま、捕球する前に左足を一歩前へと踏み出す。その状態でボールをキャッチすると、ステップを踏んでスローイングに移る。この「左足の踏み出し」が大事なのだ。

スローイングに移行しやすいよう、ミットは極めて浅い

 以前に、これの意図を明かしている。「一歩踏み出すことで、二塁がよく見えるようになる。その場でステップすると体がブレて目線もブレるんですが、左足を踏み出すことで体がブレにくくなります」。少しでも送球が逸れれば、盗塁を刺せる確率はグッと低くなる。強肩だけに頼らず、正確なスローイングを生み出すために導き出された甲斐なりの“一工夫”だった。

 さらには、甲斐のキャッチャーミットは、最大の武器であるスローイングを生かす構造になっている。甲斐が愛用するミットは尊敬する埼玉西武・炭谷銀仁朗から譲り受けたもの。3年前に話したことも、面識もない炭谷にいきなり話しかけ、ミットを譲ってもらえないか、懇願したという。

 球界を代表する捕手の炭谷は、この甲斐の願いを受け入れ、キャッチャーミットをプレゼントしてくれた。その時のものを、今も使い続けているが、このキャッチャーミットはとにかくポケット部分が浅い。少しでもキャッチングのタイミングがズレると、ミットから溢れ出てしまいそうなほどだ。

 甲斐自身が「キャッチングはめちゃくちゃ難しいです」と評するほどのミット。それでも、その浅いミットを使い続けるのは、ボールが握りやすく、キャッチングからスローイングにスムーズに移行するためなのだ。全ては自信を持つ“肩”を生かすため。難しいキャッチングは繰り返し基礎練習を行い、精度の向上に努めてきた。

 ただ、肩が強いだけじゃない。自身の強みを生かすべく、二重、三重に工夫を重ねている。これぞ、プロフェッショナル。広島を驚愕させた“甲斐キャノン”には、25歳がプロで生き抜いていくための技術と工夫が詰まっている。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

記事提供:Full-Count

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