選手生命に直結する仕事。北海道日本ハムファイターズ トレーナー 石黒好光さん【パ・リーグお仕事名鑑 Vol.3】

パ・リーグ インサイト 岡田真理

2018.8.27(月) 20:00

北海道日本ハムファイターズ トレーナー・石黒好光さん(C)PLM
北海道日本ハムファイターズ トレーナー・石黒好光さん(C)PLM

グラウンドの上で輝く選手やチームを支えているのはどんな人たちなのか。
本連載「パーソル パ・リーグTVお仕事名鑑」でパ・リーグに関わるお仕事をされている方、そしてその仕事の魅力を紹介していきます。

小さな変化も見過ごさない集中力

トレーナーとしてファイターズに入って今年で12年目となる石黒さん。ナイターのある日はいつも11時頃に出勤し、まずはトレーナー室の整頓から始める。昼過ぎになると、怪我をしている選手が状態を確認しに来たり、体の張りを気にする選手がマッサージをしに来たりと、部屋の中は少しずつ慌ただしくなる。

必要なケアをしてグラウンドでの練習に送り出した後も、選手の動きのチェックを怠らない。不具合があれば、すぐに応急処置をする必要があるからだ。試合時間が近くなると、今度は中継ぎ投手たちがトレーナー室にやってくるので、肩回りのケアなどを入念に行う。

プレイボールの後は、トレーナー室のモニターで常にプレーをチェック。先発投手が登板を終えたらすぐにケアをして、試合後には必要に応じてほかの選手の鍼治療やマッサージなどを行う。選手たちが全員球場を後にするまでは、とにかく集中力を切らさない。

「我々トレーナーが関わっているのは、チームの勝ち負けに直結する部分。また、私たちの判断が選手生命に関わることもある。そのことは、常に心に留めながら業務にあたっています。それに、あれだけ多くのファンの方が観てくださっていると思うと、身が引き締まる思いがします」

選手と長い時間を共有してきた今となっては、トレーナー室に入ってくる時の挨拶の仕方や表情で違いを感じることも多くなってきた。

「実際に体に触れてみてわかることも当然ありますが、常に一緒にいるので、ふとした瞬間に『いつもと違うな』と感じることもよくあります。そういう直感はトレーナーとして大事にしていますね。特に若い選手は、ポジションを外されることを恐れて本音を言わないこともありますから。そういう時は選手の動きや態度などに変化がないか注意して見たり、こちらから声を掛けたりします。我々は選手が必要な時に素早く手を差し伸べられる距離にいるのがベストじゃないかなと思っています」

「裏方に徹する」という教え

石黒さんがトレーナーの道を目指したのは、鍼灸マッサージの治療院を営んでいた父親の影響だった。もともとスポーツが好きで、自らも高校時代はテニス部に所属。そんな背景もあってスポーツ業界で活躍することを目指し、卒業後にはり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の免許を取得した。

スポーツマッサージ療院で働きながら現場経験を積んだ後、Jリーグのチームトレーナーとして契約。その後、オリンピック金メダリストの専属トレーナーだった先輩の紹介で、ファイターズで働くことになった。

「私は野球経験がないので、ファイターズに入った頃は競技の特性を自分なりに勉強しなければと思い、選手と一緒に夜間練習をすることもありました。あとは、なるべく積極的に選手とキャッチボールすることも。ダルビッシュ有選手がチームにいた頃は、よくキャッチボールの相手をさせてもらいました。ただ、テニスやサッカーなど他競技に携わった経験によって、体の機能や使い方については広く視野を持てるというメリットもありました」

プロ野球の世界をよく知る先輩トレーナーからは、選手への接し方についてたくさんアドバイスをもらった。特に華やかな世界ゆえ、「前に出ていく仕事ではないので勘違いしないように」「裏方なのだから目立たないように」と助言を受けたこともあり、それは今も肝に銘じているという。

野球選手のケアをするようになって改めて感じたのが、中継ぎピッチャーの過酷さだ。1イニング投げるだけであっても、シーズンを通してほぼ毎試合ブルペンで完全な状態を作り上げなければいけない。実際に体を触ってみることで、その大変さを思い知ったそうだ。

「現在、中継ぎで活躍している宮西尚生選手は以前に肩が痛いという時期があって、それを乗り越えて良い結果を出してくれた時はやはり嬉しかったですね。ほかにも、中田翔選手も怪我などで苦しい時もありましたけど、痛みを抱えながらも試合に出場し続けて頑張っている姿を見て心を打たれたことがありました。そうした日々のサポートが選手の活躍に繋がっていくところが、我々の感じるやりがいなのかもしれないですね」

北海道日本ハムファイターズ トレーナー・石黒好光さん(C)PLM
北海道日本ハムファイターズ トレーナー・石黒好光さん(C)PLM

笑顔のあるトレーナー室をつくる

現在、ファイターズのトレーナーは1軍と2軍合わせて10人。ウエイトトレーニングなどを担当するコンディショニングトレーナーが2人と、石黒さんのように治療やリハビリなどを担当するメディカルトレーナーが8人だが、メディカル担当がトレーニングを見ることもあるという。また、リハビリ中の選手が調整することの多い2軍には、ほかに理学療法士も帯同している。

「治療においては、選手に対して今後の見通しをしっかり示すためにも、チームドクターとの連携が非常に大切です。見通しがぼやけていると、選手も不安になってしまいますから。それ以外にも、普段から前向きな言葉を使う、笑顔で会話するなどの要素が、怪我をしている選手と接する上ではかなり重要です」

トレーナーのような技術職はスキルや経験値などが重視されがちだが、それと同じくらいファイターズのトレーナー陣が大事にしているのがトレーナー室の雰囲気づくりだ。チームのトレーナーは「単なる“個”の集まりではない」と石黒さんは言う。

「トレーナー同士の関係がうまくいっていないと選手にも伝わってしまうので、笑顔のあるトレーナー室づくりはいつも心掛けています。良い雰囲気だと選手もトレーナー室に入ってきやすいですし。これって簡単なようで、実は意識しないとできないことなんです。
当然、技術の高いトレーナーが揃っていますけど、やはり最終的には人と人なので、そういう雰囲気づくりができる能力も大いに問われます」

以前と比べると、トレーナーの仕事は多岐に渡るようになった。脳震盪への対処法や救命救急の知識はもちろん、ドーピングなどについても常に勉強しつづけなければならない。

「外国人選手もいるので英語もできたらいいでしょうし、トレーニング以外にもたくさん勉強することがあります。リハビリ中の選手とはキャッチボールをすることもありますから、ある程度体を動かせるよう体調管理も求められます。また、忙しい時にイライラや疲れがちょっとでも顔に出ると選手にも伝わるので、心のコントロールもしないといけません。そう考えると、体をケアするだけがトレーナーの仕事ではないということですね」

それでも、怪我から這い上がってきた選手、若い頃から一緒にトレーニングしてきた選手が活躍する姿を見ると、トレーナーとしての仕事がどんなに進化しようと大変とは感じない。

「我々は怪我をしない体づくりのノウハウを選手たちに提供することが第一。それが結果として、チームの勝利や選手自身の将来の飛躍につながるのだと思います。以前ファイターズにいたダルビッシュ選手や大谷翔平選手が海外で活躍しているのを見ると、すごいなぁと思うと同時に、励みにもなります。今後も若い選手がもっと活躍していけるよう、精一杯手助けしていきたいですね」

◇お仕事名鑑はパーソルの特設サイトからご覧いただけます。
https://www.persol-group.co.jp/special/pacificleague/index.html

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