主力が離脱しても首位を快走。福岡ソフトバンクの強さを支える“分厚い選手層”に迫る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

福岡ソフトバンクホークス・正木智也選手 ⓒパーソル パ・リーグTV
福岡ソフトバンクホークス・正木智也選手 ⓒパーソル パ・リーグTV

故障による主力の離脱がありながら、安定した戦いを続けている

 福岡ソフトバンクが9月2日の試合終了時点で優勝マジックを「15」まで減らし、4年ぶりのリーグ優勝に向けて首位を快走している。故障による主力の離脱もあったなかで安定した戦いを続けている点にも、チームとしての総合力の高さが示されているといえよう。

 今回は、2024年における福岡ソフトバンクの各ポジションの状況を、大きく5つに分けて紹介。投打にわたって充実した戦力を誇るチームが持つ「選手層の厚み」という大きな強みについて、あらためて振り返っていきたい。

絶対的守護神の不振と離脱を他のメンバーがカバーし、充実の陣容を維持

 まずは、2024年における主な先発投手の成績を見ていこう。

主な先発投手の投手成績 ⓒPLM
主な先発投手の投手成績 ⓒPLM

 和田毅投手が故障もあって5試合の登板にとどまっているが、リリーフから先発に転向したモイネロ選手が、リーグトップの防御率1.64を記録。同じく中継ぎから先発に移った大津亮介投手も16試合で防御率3.13と活躍し、有原航平投手、大関友久投手、スチュワート・ジュニア投手も好投を見せるなど、先発陣はチームの大きな強みとなっている。

 続いて、2024年における主なリリーフ投手の成績を紹介する。

主なリリーフ投手の投手成績 ⓒPLM
主なリリーフ投手の投手成績 ⓒPLM

 モイネロ投手と大津投手が先発に移ったことに加え、武田翔太投手もトミー・ジョン手術でシーズンを棒に振っている。昨季は45試合で防御率2.38と好投した田浦文丸投手も故障の影響で一軍登板はなく、リリーフ陣の顔ぶれは少なからず入れ替わるかたちとなった。

 さらに、昨季は49試合で防御率0.92と盤石の投球を見せたオスナ投手が、今季は防御率3.99と苦しみ、7月2日を最後に故障で戦列を離れている。しかし、オスナ投手の離脱以降にクローザーを任された松本裕樹投手が防御率2.89、11セーブ、奪三振率8.66を記録し、絶対的守護神の不在をカバーすべく奮闘している。

 それに加えて、前年は結果を残せなかったヘルナンデス投手と杉山一樹投手、新加入の長谷川威展投手がいずれも防御率2点台の好投を披露。津森宥紀投手と藤井皓哉投手はともに防御率1点台、又吉克樹投手も防御率2.43と既存戦力も安定した投球を見せ、救援陣は離脱者の穴を感じさせない充実の陣容を誇っている。

二塁で故障者が相次いだが、ルーキーの台頭で危機的状況を乗り切った

 次に、2024年における主な捕手陣の成績を見ていこう。

主な捕手の打撃成績 ⓒPLM
主な捕手の打撃成績 ⓒPLM

 長年にわたって扇の要を務めてきた甲斐拓也選手が今季も正捕手を務め、89試合で打率.268、OPS.728と近年の打撃不振を払拭。2番手の海野隆司選手は打率.163ながら、自己最多の47試合に出場した2022年に迫る出場機会を得ている。吉田賢吾選手は二軍では一塁手としての出場が多くなっているだけに、海野選手にかかる期待も大きくなってきそうだ。

 さらに、2024年における主な内野陣の成績を確認していく。

主な内野手の打撃成績 ⓒPLM
主な内野手の打撃成績 ⓒPLM

 新加入の山川穂高選手が一塁手のレギュラーに座り主砲として活躍を見せるも、捕手登録ながら打力を買われ一塁での起用機会が多い石塚綜一郎選手も、虎視眈々とレギュラーの座を狙っている。三塁では前年に続いて栗原陵矢選手が主力を務め、107試合で打率.265、12本塁打と、96試合で打率.239、13本塁打に終わった前年に比べて成績を向上させている。

 今宮選手も例年通りにショートの座を渡さず、102試合で打率.262、リーグトップタイの19犠打を記録し、主に2番打者としてチームのつなぎ役を担っている。その一方で、今宮選手とコンビを組む二塁手に関しては、4月に牧原大成選手が故障で戦列を離れた影響もあり、他のポジションよりもやや流動的になっていた。

 牧原選手の離脱後は三森大貴選手がスタメン出場を重ね、打率.288と好成績を残していた。しかし、その三森選手も交流戦で骨折を負い、戦線離脱を余儀なくされる。この緊急事態に台頭を見せたのが、ドラフト3位ルーキーの廣瀬隆太選手だった。

 廣瀬選手は6月に打率.319、OPS.803と出色の打撃を見せ、負傷者の穴を埋める見事な活躍を示した。7月は一転して打率.083と苦戦して一軍登録を外れたが、廣瀬選手と入れ替わりで一軍に復帰した牧原大選手が打率.303とさすがの打撃を披露。主力2名が離脱した期間においても大きくチーム力を落とすことなく、最終的に危機的状況を乗り切ってみせた。

 それに加えて、スーパーサブとしてチームを支える川瀬晃選手の存在も見逃せない。チーム事情に応じて二塁・三塁・遊撃の3ポジションをカバーしながら、79試合で打率.256と攻撃面でも存在感を発揮。主力の負担を減らしながら一定以上の貢献が見込めるユーティリティとして、長いシーズンにおける存在意義が大きい選手といえよう。

柳田悠岐選手の故障という緊急事態で、左右の好打者が見事な活躍を披露

 最後に、2024年における主な外野手の成績を振り返っていきたい。

主な外野手の打撃成績 ⓒPLM
主な外野手の打撃成績 ⓒPLM

 左翼手では移籍2年目の近藤健介選手が今季もレギュラーを務め、リーグトップの打率.315を記録。本塁打と打点の2冠王に輝いた昨季に続き、今季も主要3部門すべてでリーグ3位以内に入る圧巻の活躍を見せている。中堅手には主に周東佑京選手が入り、ここまで打率.256、37盗塁を記録。2年連続3度目の盗塁王に向けて、現時点で視界は良好だ。

 右翼手としては柳田悠岐選手が48試合で打率.293、OPS.819と好成績を残していたが、5月31日の試合で負傷して長期離脱を強いられた。さらに、巨人からトレードで入団したウォーカー選手も打率.169と本領を発揮できず、中村晃選手も今季は打率.194と深刻な不振に陥っていることで、シーズン中に外野陣の再編を余儀なくされる事態となった。

 そんななかで、開幕前に支配下登録を勝ち取った育成出身の川村友斗選手が台頭。4月は打率.393、出塁率.486、OPS.950と絶好調で、外野陣の一角をうかがう活躍を見せた。川村選手は5月以降に調子を落としたが、柳田選手の離脱後は、開幕を二軍で迎えていた柳町達選手が本領を発揮していくことになる。

 柳町選手は2022年から2年続けて100試合以上に出場していたが、今季は打率.301と例年以上に確実性が向上。過去2年間は0本だった本塁打も4本記録し、OPSも.793と課題だった長打力にも改善の跡が見られ、柳田選手が離脱した穴を最小限にとどめる見事な活躍を見せている。

 それに加えて、プロ3年目の正木智也選手も大きな成長を示している。昨季は打率.038と一軍で結果を残せなかったが、今季は48試合で打率.303、OPS.791と大きく成績を伸ばしている。チームに欠けていた右打ちの外野手として貴重な存在でもあり、高校・大学の先輩である柳町選手と同様に、外野陣を支える存在となりつつある。

選手層の厚さは、今後の戦いを見据えたうえでもチームの大きな強みとなる

 捕手、一塁手、三塁手、遊撃手の4ポジションに関しては、開幕からレギュラーの選手がほぼ不動の地位を築いてきた。その一方で、二塁手や外野手、そしてリリーフ陣に関しては、故障者の影響で選手が入れ替わりながらも、起用された選手の奮闘によって大きくチーム力を落とすことなく、序盤戦から好調なチーム状態を維持し続けている。

 主力となり得る選手の多さは、ペナントレースが終わった後の戦いにおいても、チームの大きな武器となり得る。4年ぶりのリーグ優勝、そして日本一の座に向けて、このまま安定した戦いを続けてゴールテープを切れるか。V奪回を目指すホークスの今後の戦いぶりと、各選手の活躍には今後も要注目だ。

※成績は8月21日の試合終了時点

文・望月遼太

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