新たなリリーフ投手の台頭や既存戦力の成長は、チームの大きな力となる
2024年のパ・リーグでは、移籍や配置転換などをきっかけにして、大きく成績を伸ばすリリーフ投手たちの台頭が目立っている。リリーフは勤続疲労の影響をとりわけ大きく受ける役回りでもあるだけに、新たな戦力の台頭は、各球団にとっても大きな力となっている。
今回は、今シーズンに大きく成績を向上させたリリーフ投手の顔ぶれを、パ・リーグ各球団ごとに紹介。新たな役割や環境に適応し、自らの能力を存分に発揮している投手たちの活躍ぶりについて、あらためて振り返っていきたい。(成績は7月17日の試合終了時点)
北海道日本ハム
杉浦稔大投手は2021年に抑えとして28セーブを挙げた実績を持つが、昨季は防御率2.78と好投しながら1ホールドを挙げるにとどまっていた。だが、今季は31試合で12ホールドポイントを挙げ、防御率2.05と安定した投球を展開し、セットアッパーとして完全復活を遂げつつある。
齋藤友貴哉投手は昨季のキャンプで右ひざの靭帯を断裂し、移籍1年目のシーズンを棒に振ったが、復帰を果たした今シーズンはここまで12試合で防御率3.46、奪三振率9.00と力強い投球を披露。長いリハビリを乗り越え、2年越しに新天地で存在感を発揮している。
新助っ人のマーフィー投手は勝ちパターンの一角として12ホールドを挙げ、同じく新加入のザバラ投手も剛速球を武器に防御率0.75、WHIP0.83と支配的な投球を見せている。また、6年目の生田目翼投手も防御率4.21試合ながらキャリア最多の24試合に登板し、奪三振率8.42と一定の数字を残している。
東北楽天
昨季までチームのエースとして長年にわたって活躍してきた則本昂大投手が、今季からクローザーに転向して見事な投球を披露。32試合で20セーブを挙げて黒星は1つのみ、防御率2.61、K/BB9.00と素晴らしい投球内容を見せ、抑えとしての適性の高さを示している。
広島から移籍したターリー投手は新天地で迎えた6月以降に出番を増加させ、貴重なリリーフ左腕として確かな存在感を示している。同じく左腕の鈴木翔天投手も前年の防御率3.30から今季は同1.23と大きく数字を向上させ、ブルペンの中心的存在の一人となりつつある。
藤平尚真投手は故障離脱がありながら18試合で6ホールドを挙げ、防御率1.53、奪三振率9.68と見事な数字を記録。先発からリリーフへの転向が奏功し、プロ8年目の今季に大ブレイクを果たしそうな気配だ。弓削隼人投手も防御率4.26ながら自己最多の17試合に登板しており、左の中継ぎとして奮闘を見せている。
埼玉西武
新助っ人のアブレイユ投手は開幕からクローザーの大役を担い、34試合で9ホールド15セーブ、防御率2.30と優秀な成績を記録。ここまで4敗を喫するなど不安定な面もあるものの、NPB初年度からリリーフエースとして苦戦が続くチームのブルペンを支えている。
昨年の現役ドラフトで広島から移籍した中村祐太投手は、18試合に登板して防御率2.79と安定したピッチングを展開している。昨季は二軍で防御率1.08と好投しながら一軍登板はわずか5試合にとどまったが、新天地で与えられたチャンスを生かして実力を存分に証明している。
松本航投手は2019年のプロ入りから5年間にわたって先発陣の主力として登板を重ねてきたが、今季は5月途中にリリーフへ配置転換。23試合で6ホールド、防御率2.76という成績を残しており、新たな持ち場でも主戦投手としてフル回転の活躍を見せている。
千葉ロッテ
鈴木昭汰投手がここまで31 試合で15ホールド3セーブを記録し、自責点はわずかに2、防御率0.61と抜群の安定感を示している。13試合で防御率2.76と好投した昨季終盤の活躍を今季につなげ、8回を任されるセットアッパーとしてチームに欠かせない存在となっている。
国吉佑樹投手は過去2年間の登板が合計9試合にとどまっていたが、今季は25試合で6ホールド1セーブ、防御率1.80と優秀な成績を記録。途中加入ながら25試合で17ホールド、防御率1.44と出色の活躍を見せた2021年を思い起こさせる投球を見せ、完全復活を強く印象付けている。
横山陸人投手は1カ月以上にわたった二軍調整を挟んで調子を大きく上げ、20試合で2ホールド1セーブ、防御率1.93と好成績を残している。前年は防御率4.91と苦しんだ澤村拓一投手も再調整ののち、23試合で11ホールド1セーブ、防御率2.84と復調を果たした。
オリックス
ドラフト6位ルーキーの古田島成龍投手が、28試合で14ホールドを挙げて防御率0.70と、新人離れした圧巻の投球を展開している。NPB歴代最長タイとなるプロ初登板から22試合連続無失点という快挙も達成し、プロ1年目からセンセーショナルな活躍を続けている。
新助っ人のマチャド投手も34試合で防御率1.82、奪三振率10.13と見事な投球を見せ、平野佳寿投手の離脱以降はクローザーの大役を務めている。11ホールド16セーブとチームの勝利に幾度となく貢献し、故障者が続出するブルペンを支える救世主となっている。
現役ドラフトで中日から移籍した鈴木博志投手は15試合で4ホールド、防御率1.89と、安定した投球で元ドラフト1位の実力を証明している。また、トレードで北海道日本ハムから加入した吉田輝星投手が27試合に登板し、同じく北海道日本ハムから加わった井口和朋投手が23試合で防御率3.38と奮闘するなど、多くの移籍組が活躍している点も特徴的だ。
福岡ソフトバンク
ヘルナンデス投手は途中入団の昨季は1試合の登板で防御率27.00に終わったが、開幕からチームに帯同した今季は本来の実力を存分に発揮。26試合で11ホールド、防御率1.38、奪三振率16.27と圧倒的な投球内容を示し、首位を快走するチームに大きく貢献している。
現役ドラフトで北海道日本ハムから移籍した長谷川威展投手も、18試合で6ホールドポイント、防御率2.87と移籍1年目から存在感を発揮。新天地への移籍を機に登板機会を大きく増加させ、ヘルナンデス投手とともに貴重な左腕として安定した投球を続けている。
2023年は一軍登板なしに終わった杉山一樹投手も、今季は26試合で防御率2.73、奪三振率10.59と好投し、ついに高いポテンシャルを開花させつつある。また、津森宥紀投手は2023年の防御率が3.51だったが、今季は同0.93と飛躍的に向上。昨季までの活躍をさらに上回る、まさに支配的な投球を披露している。
前半戦の勢いを今後も持続させ、キャリアイヤーを送る投手がどれだけ現れるか
現役ドラフトをきっかけに登板機会を増やした3名の投手をはじめ、移籍を機に新天地で躍動を見せる選手が今季は多く存在している。マチャド投手やアブレイユ投手のようにNPB初年度から活躍している助っ人も含め、各地で新戦力が印象的な働きを見せているといえよう。
それに加えて、2023年以前からチームに在籍していた投手の中にも、大きな飛躍を果たして勝ちパターンの一角に昇格を果たした投手が少なからず見受けられた。今回取り上げた投手たちはオールスター後も好投を続けて、キャリアハイとなるシーズンを送れるか。勝負の夏を迎える各投手の投球に、今後も注目してみる価値は大いにあることだろう。
文・望月遼太
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