杉谷拳士の熱血指導に台湾の小学生の反応は? 日台交流でも魅了した“杉谷節” 【パ・リーグ台湾プロモーション後編】

駒田英(パ・リーグ インサイト)

2024.7.9(火) 12:00

「杉谷拳士野球教室」の様子(C)PLM
「杉谷拳士野球教室」の様子(C)PLM

 前編では、杉谷拳士氏が指導に加わった日本人学校での野球教室や台湾プロ野球・富邦ガーディアンズの日本イベント「わくわく日本祭り」の初日(15日)の模様を中心にご紹介したが、後半では16日に行われた台湾の小学校向け野球教室の様子と、今回のプロモーション活動についての杉谷氏へのインタビューの模様をお伝えするそして、今回のプロモーション活動についての企画担当者の総括をご紹介しよう。

富邦が全面協力、豪華コーチ陣が参加した「杉谷拳士野球教室」

 6月16日午前、富邦ガーディアンズの本拠地、新北市の新荘球場で、PLMと富邦ガーディアンズの共同企画による「杉谷拳士野球教室」が開催された。一軍公式戦の試合当日に、本拠地球場で、こうした野球教室が行われるのは異例といえる。

 野球教室は、杉谷氏に加え、富邦ガーディアンズからも、稲田直人一軍内野統括コーチ、垣内哲也一軍打撃統括コーチの元パ・リーグ戦士のお二人、陳柏穎一軍トレーニングコーチ、さらに、昨年の現役引退後、コーチ研修でファイターズの秋季キャンプに参加、清宮幸太郎選手や有薗直輝選手を指導した台湾プロ野球通算171本塁打、本塁打王3回の高國輝二軍打撃コーチもファームからかけつけ、豪華な顔ぶれとなった。

 富邦球団は今回、地元新北市、球場がある新荘区の民安小学校と、お隣、三重区の興穀小学校の野球部の選手を招待した。いずれもスポーツクラスを持ち、プロ選手を多数輩出している新北市を代表する強豪野球部で、かつて千葉ロッテマリーンズで活躍した陳冠宇(楽天モンキーズ)は両校を渡り歩いたOBの一人だ。ただ、そうした強豪校の子どもたちにとっても、プロ野球の本拠地のグラウンドで、プロの指導者の指導を受ける機会は稀な機会、はじめはどこか固さが感じられた。

富邦、陳昭如総経理は、さらなる交流深化に期待

 野球教室は、両校の選手が複数のグループにわかれ、杉谷氏と稲田コーチが内野守備、垣内コーチ、高国輝コーチがバッティングを指導する形で行われた。主に小学3年生から5年生の選手が参加したなか、守備コーチの杉谷氏は、選手たちのレベルの高さに驚きつつ、「足を動かしてね、止めたらダメだよ。グラブは自分の目で見える位置で構えるんだよ」と、自ら、手本を示しながら、守備の基本動作をアドバイス。一人ひとりの選手に明るく声をかける「杉谷流」コミュニケーションで、次第に選手たちの表情はほぐれていった。

 杉谷氏に直接質問する勇気のある選手はいなかったようだったが、練習が進むに従い、「大谷翔平の元チームメイトだったって本当? 凄いね。現役時代、どんな選手だったの?」と、筆者にこっそりたずねる選手もいた。また、両校の指導者は得難い機会だとして、杉谷氏の指導風景を録画していた。将来、彼らがこの日の野球教室を思い出す時が来るかもしれない。

 富邦ガーディアンズの陳昭如総経理は、杉谷氏の熱血指導に感謝、PLMとのタッグによる今回のイベントを契機に、今後、双方の交流、協力関係がさらに深まることを期待した。

杉谷氏「台湾と日本の野球、それぞれの魅力をミックスできるよう、架け橋を目指し前進」

 3日間の台湾滞在期間、今回のメインイベントであるPLMと富邦のプロモーション活動、子どもたちへの野球教室のほか、杉谷氏は、台湾の各メディアの取材対応、王柏融との再会、そして初めての台湾プロ野球観戦と、分刻みのスケジュールに追われていた。杉谷氏に、台湾におけるご自身の人気、台湾のファンのパ・リーグの認知についての感想をうかがった。

 杉谷氏は「僕が人気かどうかはわからなかったですけれど」と笑いつつ、かつて、陽岱鋼や王柏融と来台した時と比べ、野球を通じて応援してくれている方は増えてきている気がする、と打ち明けた。さらに、パ・リーグの選手をはじめ、ユニフォームを着て球場に足を運んでくださる方がたくさんいたので、パ・リーグの認知は台湾で広がっていると感じ、とても嬉しかったと、笑顔をみせた。

 また、今回「プロモーションアンバサダー」として台湾で活動され、どのような感想をもったかを尋ねると、「これ1回で終わらずに、これからも継続してほしい」と希望。そして、「台湾の野球と日本の野球にはそれぞれ違った魅力が備わっているので、それを合わせることができるよう、架け橋になれるよう、前進していきたい」と意気込んだ。杉谷氏はさらに、「ファンの方たちが一体になって戦う台湾野球の魅力を、日本の皆さんと、一緒に共有できたらと思いますし、パシフィック・リーグがもっともっと盛り上がるような取り組みができるようになれば」と期待を示した。

PLMの今後の海外事業、その展望は?

 台湾では日本カルチャーの人気が高い。「わくわく日本祭り」のイベントでも、野球やグルメ関連のブースのほか、浴衣試着体験や絵馬、おみくじコーナーなど、日本文化を体験できるブースが人気を集めていた。

 台湾人にとって、人気ナンバーワンの海外旅行先は日本だ。今年は円安の影響もあり、訪日旅行客数はパンデミック前の2019年を上回り、過去最高になることが確実とみられる。リピーターが多い台湾人は、全国各地に分散する傾向があることで知られ、個人旅行者も多い。昨オフは、パ・リーグの台湾人選手のうち王柏融、呉念庭、張奕が相次いで帰国、ややさみしくなったが、北海道日本ハムの育成選手で「台湾の至宝」、19歳の右腕孫易磊はブレイクが期待される有望株だ。そのためかPLMブースで配布されていた「エスコンフィールドHOKKAIDO」の台湾華語版ガイドマップに、関心を示す人も多かった。

 今回、富邦との台湾プロモーションの企画立案・運営を担ったPLMメディアライツ事業部海外グループマネージャーの高木隆氏は、今回のプロモーションについて、「ガーディアンズさんと作り上げた一歩踏み込んだ企画により台湾のファンにパ・リーグを知る小さなきっかけを作れたことが収穫だった。具体的には、ガーディアンズのチアリーダーFubon Angelsのメンバーにパ・リーグ6球団のユニフォームを着用のうえ、ステージ上でパフォーマンスをしていただいた。普段とは異なる衣装のチアリーダーのパフォーマンスは現地で好評を得た。」と述べた。

Fubon Angelsのメンバー(C)PLM
Fubon Angelsのメンバー(C)PLM

 今後も野球を通じた日本と台湾の交流が進み、今回の野球教室のような意義ある活動や台湾プロ野球チームとのコラボイベントが開催されることを期待したい。

文・駒田 英

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駒田英(パ・リーグ インサイト)

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