【台湾プロ野球だより】大混戦の後期は味全ドラゴンズが制し、26年ぶりの半期シーズン優勝

駒田英(パ・リーグ インサイト)

2023.11.2(木) 07:00

一軍再参入3シーズン目で、26年ぶりの半期シーズン優勝をきめた味全ドラゴンズ(C)CPBL
一軍再参入3シーズン目で、26年ぶりの半期シーズン優勝をきめた味全ドラゴンズ(C)CPBL

年間勝率も1位とし、24年ぶりの台湾シリーズ進出も決定

 前後期各60試合、一軍5チームで行われている台湾プロ野球、今季の後期シーズンは、優勝チーム、そしてプレーオフ進出チームが最後の最後まで決まらない大混戦となった。

 10月19日、台湾東部・台東県の台東球場で行われた2位の楽天モンキーズと3位の中信兄弟との一戦は、プレーオフの残り1枠を争うライバル対決ということもあり、お互いに譲らず延長戦へ突入した。11回表、楽天がソロHRで1点勝ち越すも、その裏、中信兄弟は2点奪って4-3でサヨナラ勝ち、プレーオフ進出に望みをつないだ。

 そして、この瞬間、後期シーズンの優勝マジックナンバーを1としていた味全ドラゴンズの優勝が決定。この日、試合がなく、本拠地、北部・台北市の天母球場でバーベキューをしながら中継を見ていた選手達は喜びを爆発させた。目をうるませるコーチ、ベテラン選手の姿もあった。

 味全ドラゴンズは、1989年、台湾プロ野球が創設された際の4球団のうちの1球団だ。リーグ三連覇を果たした1999年のオフ、諸般の事情で解散、リーグから脱退したものの、2019年、台湾プロ野球第5の球団として20年ぶりに再参入を果たし、2020年にまず二軍公式戦、2021年からは一軍公式戦に参戦した。そして昨季、一軍2シーズン目でプレーオフ初出場を果たすと、今季は参入時の目標通り3シーズン目での半期シーズン優勝を達成。味全の半期優勝は1997年後期以来、実に26年ぶりである。

 なお、優勝決定の約1時間前には、年間勝率を争っていた前期優勝の統一セブンイレブンライオンズが富邦ガーディアンズに敗れたことで、年間勝率1位が決定しており、味全は1999年以来、24年ぶりの台湾シリーズ進出も決めた。

 激戦となった後期シーズン、10月8日の試合を迎えた時点で、味全は52試合戦い、27勝24敗1分けで首位に立っていたものの、2位の楽天とは0.5ゲーム差、3位の中信兄弟とは1.5ゲーム差、最下位5位の統一ともわずか3ゲーム差と、全チームに後期優勝の可能性が残されていた。

 雨による中止も多かった後期、唯一、人工芝の天母球場を本拠地とする味全は、他のチームより消化ペースが早く、10月8日から15日まで、雨天サスペンデッドとなった試合の再試合を含め8日間で7試合戦ったあと、21日の最終戦までは5日間試合がないという変則日程となった。

 こうしたなか、味全は必勝体制でこの7試合に臨んだ。8日の中信兄弟戦では勝ちゲームを追いつかれて引き分けとされ、勝ち頭のギャノンを中3日で先発させた12日の楽天戦は敗れたものの、13日、14日の統一2連戦では2試合連続でサヨナラ勝ちするなど粘り強く戦い、結局、勝負の7試合は5勝1敗1分けの好成績、ゴール前のラストスパートで、優勝を大きく引き寄せた。

2年連続でHR王に輝いた吉力吉撈.鞏冠(ギリギラオ・コンクアン)、台湾原住民族パイワン族の本来の名前でプレーする(C)CPBL
2年連続でHR王に輝いた吉力吉撈.鞏冠(ギリギラオ・コンクアン)、台湾原住民族パイワン族の本来の名前でプレーする(C)CPBL

葉監督「年間勝率1位は、一年を通じて一定のレベルを維持できたことの証明」

 後期シーズン、チーム防御率がリーグ1位の3.14だった味全。先発では、かつて東北楽天でもプレーしたジェイク・ブリガムが最優秀防御率(2.51)、リーグ2位の10勝、ドリュー・ギャノンが13勝で最多勝、最多奪三振(155)と、アメリカ人右腕2人がローテーションの柱となったほか、ブルペン陣でも18S、12Hの林凱威、14S、11Hの陳冠偉、2人で101試合登板した王躍霖、王維中の王兄弟ら、近年のプレミア12、WBC代表クラスの投手が活躍した。

 野手では、参入初年度2019年ドラフト「いの一番指名」、若き4番サード、22歳の劉基鴻が打率.291、16HR、80打点、最多安打(136安打)と独り立ちしたほか、WBC代表の吉力吉撈.鞏冠(ギリギラオ・コンクアン)は後期調子をあげ、打率.284、23HRで2年連続のホームラン王、パワフルな打撃でチームを牽引した。

 また、正二塁手の李凱威は攻守で安定感を見せ、「韋駄天男」林孝程もリーグ2位の21盗塁、3年目で自己最高のシーズンを送った。WBC代表の郭天信は後期、打撃では苦しんだが、センターの好守備で幾度もチームの危機を救った。今季通算300号HRを放った41歳のレジェンド、林智勝は代打出場がメインとなりつつあるが、こまめに自身の経験を伝え、若いチームの精神的支柱となっている。

 1997年から1999年のリーグ三連覇の際の正捕手で、2019年の再参入時からチームを率いる葉君璋監督は、『ETTODAY』のインタビューに対し、「シーズン終盤、若い選手たちの活力、技術面の向上、そしてプレッシャーに対する強さ、その成長ぶりには驚かされた」と目を細めた。そして、「我々は後期優勝だけでなく、年間勝率1位にも輝いた。これは年間を通じて一定のレベルを維持できたことの証明であり、より得難いことだ」と選手を讃えた。昨季、一軍2シーズン目でのプレーオフ進出はファンを驚かせたが、今季は前期2位、後期優勝、年間1位と、さらに成長をみせた。

 郭天信や拿莫.伊漾(ナモ・イヤン)らムードメーカーの存在もあり、葉監督以下、チームに一体感があり、常に明るく、活気にあふれている点が魅力のチームだが、昨年の経験を経て、勢いだけでなく、たくましさを感じさせる戦いぶりであった。

 フロントも葉監督を全面的に信頼、チームづくりを任せ、サポートしているといい、ドラフト指名や外国人補強も成功例が多いほか、他球団を構想外となった選手の「再生」力にも一定の評価がある。課題をあげるならば主力と控えの実力の差が大きいことであろうか。ただ、一軍3シーズン目のチームにそこまで求めるのは酷かもしれない。大部分の選手が初の台湾シリーズとなるなか、守りに入らず、シーズン中の戦いを維持できるのか、注目である。

応援を盛り上げるドラゴンズのチアリーダー「小龍女(Dragon Beauties)」(C)CPBL
応援を盛り上げるドラゴンズのチアリーダー「小龍女(Dragon Beauties)」(C)CPBL

10月28日から前期優勝の統一と楽天がプレーオフ、勝者が台湾シリーズで味全と対戦へ

 台湾プロ野球では昨季から、台湾シリーズ進出をかけたプレーオフが毎年実施されるようになった。前後期の優勝チームが異なる場合は、2チームのうち年間勝率が高い半期優勝チームが台湾シリーズに直接進出、もう1つの半期優勝チームが1勝のアドバンテージをもって、前後期共に優勝を逃した3チームのうち勝率が最も高いチームと、5試合3勝制のプレーオフを戦う。

 上述の通り、19日の時点で、後期シーズンを制し、かつ年間勝率1位となった味全が台湾シリーズへ進出、前期優勝の統一がプレーオフへ回ることは決定していたが、後期2位の楽天と、3位の中信兄弟によるプレーオフ進出争いはその後も続き、21日、22日と、連日の乱打戦をものにした楽天が制した。一昨年、昨年とリーグ連覇を果たした中信兄弟は、「奇跡を信じて」をスローガンに終盤、楽天に食らいついたものの力及ばず、三連覇はならなかった。

 10月28日からスタートするプレーオフは、4試合中、第1、3、4戦は統一の本拠地、南部・台南市の台南球場で、第2戦のみ楽天の本拠地、北部・桃園市の桃園球場で開催される。

 果たして、プレーオフを勝ち上がり、11月4日から行われる7試合4勝先勝制の台湾シリーズで味全ドラゴンズと対戦するのはどちらのチームだろうか。

 なお、楽天には古久保健二ヘッドコーチと川岸強投手コーチ、統一には玉木朋孝守備コーチ、そして味全には高須洋介打撃コーチと、3チームいずれにも日本人指導者が在籍している。

 毎年、大きな盛り上がりをみせる台湾プロ野球のポストシーズン、各試合のダイジェストは台湾プロ野球を運営するCPBLの公式YouTubeで公開されるほか、有料のOTT「CPBLTV」は、日本からも中継が視聴可能だ。さきごろ、台湾元177元(日本円約820円)で「プレーオフ、台湾シリーズ」パックがリリースされた。

 ポストシーズンに出場する選手には、11月16日から19日まで、東京ドームで行われる「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」の台湾代表選手も多数含まれており、同大会をより楽しむための、「予習」としてもおすすめだ。もちろん、各球団人気チアリーダーのパフォーマンスも見逃せない。

(情報は10月23日現在のもの)

文・駒田英

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駒田英(パ・リーグ インサイト)

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