高きハードルを超えた選手たち。2022年のドラフト組で「即戦力」として活躍したのは?

パ・リーグ インサイト 望月遼太

東北楽天・渡辺翔太投手、オリックス・茶野篤政選手【写真・球団提供】
東北楽天・渡辺翔太投手、オリックス・茶野篤政選手【写真・球団提供】

大学や社会人からプロ入りする選手には、即戦力としての期待がかかるもの

 2023年のドラフトが終了し、新たに多くの選手がプロ野球の世界に足を踏み入れた。特に大学・社会人からプロ入りする選手の場合は、たとえルーキーの立場であっても、1年目から即戦力としての働きが期待されることも少なくはない。

 それでは、前年のドラフトで指名された選手のうち、1年目から活躍を見せた選手はどれだけ存在したのだろうか。今回は、2022年のドラフトでパ・リーグに入団したルーキーたちのプレーぶりを、「即戦力」という観点から振り返っていきたい。

北海道日本ハムファイターズ

2023年 北海道日本ハム 新人選手成績(C)PLM
2023年 北海道日本ハム 新人選手成績(C)PLM

 1位指名の矢澤宏太選手は主に外野手として37試合に出場し、投手としても2イニングで3奪三振を記録。打率.177と打撃面でプロの壁に苦しみ、故障もあって一軍定着は果たせなかったが、二刀流選手としての高い身体能力と優れた野球センスを随所で垣間見せた。

 2位指名の金村尚真投手は先発として防御率1.80、奪三振率8.28、K/BB4.60と素晴らしい投球内容を示しただけに、故障で4試合の登板にとどまったのが惜しまれる。6位指名の宮内春輝投手は15試合で奪三振率9.72と非凡な数値を残したが、防御率6.48と安定感を欠いた。

 3位指名の逆輸入ルーキー・加藤豪将選手は打率.210と確実性に課題を残したものの、62試合で6本塁打を放つなど、強打の内野手として実力の一端を示した。5位指名の奈良間大己選手は65試合で打率.243と奮闘し、絶対的なレギュラーが不在な二遊間の主力候補として台頭を見せている。

東北楽天ゴールデンイーグルス

2023年 東北楽天 新人選手成績(C)PLM
2023年 東北楽天 新人選手成績(C)PLM

 1位指名の荘司康誠投手は1年目から先発ローテーション入りし、パ・リーグの新人で最多となる109.2イニングを消化。防御率3.36と一定の数字を残し、7月5日のプロ初勝利以降は負けなしの5連勝を記録するなど、1年目から主戦投手の一人として活躍した。

 3位指名の渡辺翔太投手は9月末の時点で防御率1.39と終盤戦まで抜群の安定感を誇り、チームの後半戦の復調に大きく貢献。最終的にパ・リーグの新人で最多の51試合に登板して防御率2.40を記録し、セットアッパーとして33ホールドポイントを挙げるフル回転の働きを見せた。

 また、ドラフト4位の伊藤茉央投手もリリーフとして序盤戦で登板を重ね、25試合に登板して防御率3.27と奮闘。ドラフト2位の小孫竜二投手は4試合の登板にとどまったが、即戦力と期待された投手たちの多くが結果を残したドラフトとなった。

埼玉西武ライオンズ

2023年 埼玉西武 新人選手成績(C)PLM
2023年 埼玉西武 新人選手成績(C)PLM

 1位指名の蛭間拓哉選手は6月から一軍に昇格し、8月には22試合で打率.294と活躍。打率.167と苦しんだ9月末に故障で戦線離脱を余儀なくされたこともあり、最終的には56試合で打率.232に終わったが、大器の片りんを垣間見せるシーズンを送った。

 4位指名の青山美夏人投手は、開幕戦でクローザーとして抜擢を受けるなど、リリーフの一角として39試合に登板。防御率2.96と1年目から安定感を発揮しただけでなく、9月以降に登板した7試合では9.2イニングを無失点と、今後のさらなる飛躍にも期待を持たせた。

 ドラフト6位の児玉亮涼選手は、開幕前のワールド・ベースボール・クラシックで右手小指を骨折した源田壮亮選手の代役として、序盤戦で遊撃手を務めた。打率.221と打撃面で苦しみレギュラー定着は果たせなかったが、即戦力としてチームの危機を救う働きを見せている。

千葉ロッテマリーンズ

2023年 千葉ロッテ 新人選手成績(C)PLM
2023年 千葉ロッテ 新人選手成績(C)PLM

 1位指名の菊地吏玖投手は故障の影響で、プロ初登板は夏場の8月11日に。この試合では4回4失点(自責点1)と守備の乱れもあり、試合をつくることはできず。2023年の一軍登板はこの1試合のみに終わり、1年目からの台頭は果たせなかった。

 2位指名の友杉篤輝選手は開幕一軍を勝ち取り、藤岡裕大選手とともに遊撃手の主力を務めた。64試合で打率.254と打撃で結果を残し、持ち前の俊足を活かして守備・走塁でも大いに存在感を発揮。シーズン最終盤は一軍登録を外れたが、即戦力としてチームの躍進に貢献する活躍を見せた。

 4位指名の高野脩汰投手は7月25日にプロ初登板を果たし、7試合のリリーフ登板のうち4試合で複数イニングを消化するタフネスを発揮。ポストシーズンでの登板こそなかったものの、防御率1.64と好成績を残し、貴重な左腕としての存在価値を示した。

オリックス・バファローズ

2023年 オリックス 新人選手成績(C)PLM
2023年 オリックス 新人選手成績(C)PLM

 1位指名の曽谷龍平投手は、9試合に登板した時点で防御率4.73とプロの壁に苦しんだ。しかし、シーズン最終戦となった10月9日では6回無失点と好投し、見事にプロ初勝利をマーク。日本シリーズの有資格者にも選ばれるなど、今後の躍進に期待を持たせた。

 3位指名の齋藤響介投手は高卒1年目ながら一軍で先発マウンドに上がり、4回無失点と堂々たるピッチングを展開して高いポテンシャルを証明。4位指名の杉澤龍選手は一軍で2試合に出場して初安打も放ったが、一軍の外野陣に割って入ることは叶わなかった。

 育成4位指名の茶野篤政選手は開幕前に支配下登録を勝ち取り、開幕戦ではスタメンに抜擢。その後も6月まで外野の主力として活躍し、パ・リーグのルーキーで最多となる91試合に出場。7月以降は調子を落としたものの、2022年の育成ドラフト出身者で唯一の一軍出場を果たし、1年目からリーグ優勝に貢献するシンデレラストーリーを送った。

福岡ソフトバンクホークス

2023年 福岡ソフトバンク 新人選手成績(C)PLM
2023年 福岡ソフトバンク 新人選手成績(C)PLM

 2位指名の大津亮介投手は1年目から46試合に登板し、防御率2.43と安定した投球を披露。13ホールドを挙げるなど重要な場面での登板も多く、ベンチにとっても重宝される存在に。大卒社会人という経歴から来る即戦力の期待に応え、ブルペンの主力の一人として大車輪の働きを見せた。

 3位指名の生海選手は一軍で13試合に出場し、ポストシーズンでも勝負どころの代打で起用されるなど大きな期待を寄せられたが、打率.200と結果を残しきれず、外野のレギュラー争いを勝ち抜くには至らなかった。

 5位指名の松本晴投手は交流戦期間中にリリーフとして3イニングを無失点と好投したが、8月27日のプロ初先発では3.1回を5失点とプロの洗礼を浴びた。6位指名の吉田賢吾選手は10月に一軍デビューを飾ったが、代打で三振を喫してプロ初安打はならなかった。

規定投球回や規定打席に到達した選手は一人も存在しなかったが……

 2022年のドラフトで指名された選手のうち、1年目から規定投球回に到達したり、2桁勝利を達成したりした投手は一人もいなかった。しかし、荘司投手は先発の一角として奮闘を見せ、渡辺翔投手、青山投手、大津投手の3名はリリーフとして安定した投球を披露。即戦力という観点で言えば、特にこの4投手は十二分にチームに貢献を果たしたと考えられる。

 野手でも1年目から規定打席に到達、年間100試合以上に出場した選手は存在せず。しかし、茶野選手と友杉選手はシーズン序盤からレギュラー格として活躍を見せ、加藤豪選手と奈良間選手も確かな存在感を発揮。また、序盤戦で源田選手の代役を務めた児玉選手も、社会人出身ならではの持ち味を示したと言えよう。

 プロの舞台で即戦力として輝きを放つことは決して容易ではないが、2023年のドラフトで指名された選手たちのうち、早期に台頭を果たす存在がどれだけ出てくるだろうか。来る新シーズンにおける各選手の活躍に、より一層の期待を寄せたいところだ。

文・望月遼太

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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