気になったピッチクロックの“さじ加減”
前回はメジャー球場の雰囲気やグルメを紹介した。今回の記事では「試合」について書いていきたい。
まずは審判と選手の関係についてだ。
日本では審判と選手が話すということはあまりない。厳しく審判と選手が分けられているというイメージ。対してアメリカでは両者ともフレンドリーだ。
もちろんプレーに関しては厳しく正確にジャッジするのだが、イニング間は談笑する姿が見られるなど、お互いに近い距離感で敬意を持って接している。WBCでも大谷翔平選手が審判と頻繁にコミュニケーションをとるのがよく見られた。とてもこれはいいことだと思う。お互いに尊重しあいながらいい関係を築けたらと感じた。
そして数年前から行われているピッチャーへの、マツヤニなどの粘着物質をつけていないかのチェック。
行われていることは知ってはいたが、現地で見ていると、思っていたよりも行われる回数が多い。先発ピッチャーも1回ではなく、投げている間に2〜3回はチェックをされている。
リリーフは抑えてベンチへ戻るピッチャーにはほぼ行い、クローザーへは登板前に行われる。
チェックをされる選手はもう慣れたもので、審判が近づいてくると自らグローブ、帽子をとる。たまに少しふざけて笑いながら服を脱いだりベルトを取ろうとしたりとする選手も見られるなど、ルールということで素直に認め実行している。
日本では使われているボールの質がいいため、そういう物をつける選手はいないが、メジャーリーグで使われているボールは実際に触ってみてもわかるのだが、日本に比べ滑りやすい印象を受ける。よって公式に使われるロジンバックも日本に比べるとベタベタするため、選手が別でそういった工夫をするのもわからなくはない。
しかし実際にこのルールができたことにより、平均の回転数が下がったというデータもある。選手が故意に粘着物質を使わなくなった証拠であろう。
最後に一番ルールとして違うと思ったのが今年から導入されているピッチクロック。
投手はランナーなしでは15秒以内、ランナーありで20秒以内に投球しなくてはならない。もし過ぎた場合は1ボールが宣告される。
また打者は残りの秒数が8秒になるまでに打撃体制に入らなくてはならない、もし過ぎた場合は1ストライクが宣告される。
シーズン前のオープン戦のデータで、平均の試合時間が2時間半程度と昨年までの平均約3時間から30分も短くなっている。
シーズンに入ってからも点を両チーム取り合う展開で3時間ほど。また、投手戦になると2時間15分ほど、延長線に入った試合でも3時間を切るなど結果は顕著に出ている。
野球というスポーツは4大スポーツの中で唯一、時間制のスポーツでない。そのため他に比べ試合時間が長い傾向にある。
私がプロ野球にいた時から日本でもファン離れを防ぐために試合時間を短縮するにはどうしたらよいかを選手会などで議論をされていた。
ここまでメジャーで成功していることを考えると日本にも近い将来入ることが予想される。
野球を見ている人の一番試合で気になる部分が「試合時間の長さ」というアンケート結果も出ているので、これからより野球界を盛り上げる方法としても良いルールになりそうだ。
ここで逆にピッチクロックについて気になった点も書いていきたい。
まずはピンチの場面での投手の気持ちの切り替えにくさである。
ピッチクロックがあることにより気持ちをなかなか落ち着かせる時間がないように見える。よって流れを切ることができず大量失点につながりやすいのではないだろうか。
見に行った試合でも1イニングに簡単に3、4点入るなど、大量得点を取られる確率が去年に比べ上がっている可能性があるのではないかと思った。データではまだみれていないのでまた調べてみたい。
そしてもうひとつがピッチクロックを守れたか守れてないかという細かいところが主審のさじ加減になるということだ。
ピッチャーの時間は大抵超える事はないのだが、バッターの8秒になるまでに打撃体制を取らなくてはいけないところが少しあやふやになる。
試合を見ていても2、3回試合中に時間を超えたということでストライクがコールされていた。審判によって少し甘かったり、厳しかったりというのが出やすそうだ。
大事なチャンスの場面での打席に入るのが遅く何もしていないのに1ストライクになり、結局簡単に三振になってしまったというような場面も実際にあったので難しいところだ。
今回は特に気になった点3つをあげたが、他にもシフトの禁止、各ベースのサイズの拡大、ピッチコムの使用、ワンポイントリリーフの禁止、延長に入った際にはランナー2塁から始まるなど日本と異なるルールのところがあるのでまた試合をみて気になる点があったら紹介していきたい。
文・鈴木優
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