強力な投手陣を武器にAクラス入りを果たした昨季とは異なるチームに?
埼玉西武が開幕から上位争いを演じ、現在4位ながらも首位と3ゲーム差(5月8日時点)と死闘を続けている。長らく主力捕手を務めた森友哉選手が抜け、不動の主軸である源田壮亮選手と山川穂高選手の離脱もありながら、好調なスタートを切っている点は特筆に値する。
その要因の一つとして挙げられるのが、若手野手たちの台頭だ。昨季は圧倒的な投手力と、本塁打と打点の2冠王に輝いた山川選手の打棒を活かしてAクラス入りを果たしたものの、リーグ連覇を果たした2018~2019年に比べると、打線の迫力不足は否めなかった。
今季は先発陣が開幕から好調で、リリーフ陣も層が厚い。それに加えて若手の成長によって打線が強化されれば、一気に隙のないチームへと進化を遂げる可能性もあるはずだ。今回は、今季の埼玉西武で台頭を見せる6名の若手について、詳しく紹介していきたい。
(※成績は4月26日の試合終了時点)
柘植世那
チームの正捕手として君臨していた森選手の移籍に伴い、今後はその後釜を担う選手の確立が急務となっている。現時点でその筆頭格として期待されているのが、今季の捕手陣で最多の出場試合数を記録している柘植世那選手と言えるだろう。
柘植選手は2019年のドラフト5位でプロ入りし、2022年終了時点で通算94試合に出場するなど、一軍での経験を着実に積んできた。しかし、2022年に二軍で打率.306を記録するなど打撃面でも活躍が期待されながら、一軍では好成績を残すことができていなかった。
しかし、今季は打率.261と課題の確実性が向上し、バッティングでも存在感を発揮している。打てる捕手である森選手の存在により、捕手のポジションが打線の穴とならない点が、埼玉西武の大きな強みだった。柘植選手もこのまま成長を遂げ、切れ目のない打線の形成に貢献できるかに注目だ。
古賀悠斗
古賀悠斗選手は中央大学から、2021年のドラフト3位で入団。プロ1年目の2022年は二軍で25試合に出場し、打率.281と打撃力の一端を示した。ルーキーながら一軍でも26試合に出場して貴重な経験を積んだが、打率.155、OPS.506と、一軍の壁に跳ね返された。
今季は森選手の移籍に伴い、主力捕手の一人として開幕から一軍に帯同。現状では柘植選手の16試合に対して古賀選手は8試合と出場試合数では差をつけられているが、古賀選手も打率.250と、一軍投手のボールに対しても徐々に対応できるようになりつつある。
古賀選手は、今季から先発に転向した平良海馬投手が登板した試合で、いずれも先発マスクを被っている。快速球と多彩な変化球を兼ね備える右腕の好投を引き出す若き捕手にかかる期待は大きいだけに、今後も柘植選手と切磋琢磨を続けていってほしいところだ。
児玉亮涼
児玉亮涼選手は大阪ガスから、2022年のドラフト6位で入団。大卒社会人でのプロ入りとあって即戦力としての働きが期待される中で、不動の正遊撃手である源田選手がWBCの影響で開幕から負傷離脱。児玉選手はこのチャンスを活かし、いち早く台頭を見せている。
開幕直後から遊撃手のスタメンとして出場を続け、軽快なフットワーク、安定したハンドリング、正確な送球を活かしたハイレベルな守備を披露。序盤戦からプロの舞台でその実力が通用することを証明している。
ドラフト6位と下位入団ながら奮闘を続ける児玉選手の存在が、源田選手の離脱によるダメージを最小限にとどめているのは疑いようがない。そして、源田選手の復帰後は児玉選手がどのポジションで起用されるのか、という点も、大いに注目すべき点となりそうだ。
愛斗
愛斗選手はかねてから外野守備に定評があり、2021年の一軍定着後は幾度となく好プレーを見せてチームを救ってきた。若くして一軍戦力として貴重な存在となっていたものの、打撃面で確実性を欠き、なかなかレギュラー定着は果たせていなかった。
しかし、2022年は121試合に出場して打率.243、9本塁打と成長を示した。そして、2023年は打率.299と課題の確実性が大きく改善し、トップバッターを任される機会も増加。21試合で2本塁打、OPS.805と持ち味のパンチ力も発揮しており、主力打者へと進化を遂げつつある。
打撃面の成長に加えて、4月26日の千葉ロッテ戦では強肩を活かしてライトゴロを完成させるなど、高い守備力でもチームに貢献。高い守備力に加えて打撃面でも大きな飛躍のきっかけをつかみ始めているだけに、今季はいよいよ主軸として大ブレイクを果たしそうな気配だ。
若林楽人
若林楽人選手はプロ1年目の2021年に、わずか44試合で20盗塁という驚異的なペースで盗塁を記録。打率.278、出塁率.340とチャンスメーカーとしての高い資質を示していたが、5月末に左ひざの前十字靭帯を断裂し、残りのシーズンを棒に振ってしまった。
同年は24盗塁で4名が盗塁王となったことを考えれば、故障さえなければ1年目から盗塁王に輝いていた可能性が高かったという点でも痛恨の離脱だった。2022年にはリハビリを経て復帰を果たしたものの、28試合で打率.207、3盗塁と、本来の打撃を取り戻せずに苦しんだ。
しかし、今季は打率.267と復調傾向を示しており、再び上位打線を任されるケースも増えている。俊足好打の若林選手が上位打線に定着すれば、チームの得点力向上にも直結する。苦しい時期を乗り越えた韋駄天の、2年越しとなる完全復活に期待したいところだ。
鈴木将平
鈴木将平選手はプロ3年目の2019年に一軍デビューを果たし、守備では高い身体能力を生かしてたびたび印象に残るプレーを披露。2020年には序盤戦で1番打者に抜擢されたが、好不調の波の激しさもあって期待に応えきれず、主力への定着は果たせなかった。
その後も打撃面では苦戦が続いたが、2022年は58試合で打率.250と向上を見せ、プロ6年目にして一軍に定着した。そして、今季は打率.261に加えて、出塁率.346と課題だった選球眼も大きく改善。攻守にわたって躍動を続けており、ついにレギュラーの座をつかもうとしている。
俊足を活かした広い守備範囲が大きな魅力で、若林選手、愛斗選手と組む外野陣はまさに鉄壁となりうる。リーグ連覇時の埼玉西武は打撃力がフォーカスされがちだったが、内外野の高い守備力も大きな武器だった。その系譜を継ぐ選手たちの台頭は、チームとしても大きな意味を持つはずだ。
リーグ連覇時を超える隙のないチームとなるためには、若手の成長が不可欠だ
若手選手の成長に加え、長年チームを支えてきた中村剛也選手と外崎修汰選手も今季は打撃好調で、不振からの脱却を果たしつつある。それに加えて、大黒柱の山川選手が5月2日に一軍復帰、源田選手もこれから戦列に復帰すれば、かつてリーグを席巻した強力打線が復活する可能性も十分にあるといえよう。
今回取り上げた若手の中から、不動の主力として一本立ちを果たす選手が出てくれば、それだけチーム力も大きく向上することになる。今後も各選手が成長を続け、安定した投手陣と切れ目のない打線という、リーグ連覇を果たした時期を上回るチームとなれるかに注目だ。
文・望月遼太
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