昨季はチーム51年ぶりとなる優勝マジックが点灯するも、惜しくも優勝を逃した千葉ロッテ。「頂点を、つかむ。」のチームスローガンを掲げて臨んだ今季だったが、スタートダッシュに失敗した。一時は盛り返したものの、夏場以降は再び失速。最終的には、3年ぶりのBクラス転落となる5位に終わった。
本記事では投手編、野手編に分け、千葉ロッテの2022シーズンを振り返っていく。
本領を発揮した「令和の怪物」
千葉ロッテを語る上で欠かせない存在といえば、やはり佐々木朗希投手。今季は開幕ローテーション入りすると、初登板で自己最速となる164km/hを計測するなど、シーズン序盤から自慢の速球を武器に奪三振を量産。
4月10日には、令和初となる完全試合の快挙を13者連続奪三振、日本記録タイの19奪三振とともに達成し、プロ野球界を沸かせた。その後も高卒ドラ1ルーキー・松川虎生選手とのバッテリーを中心に安定感のある投球でシーズンを投げ抜き、最終的に20試合の登板で9勝4敗、防御率2.02の好成績を収めた。
今季の佐々木朗投手が残した成績の中で突出していたのが奪三振率だ。投球回129.1回に対して奪三振数は173個に上り、その割合は12.04。つまり、9イニング平均で12個以上の三振を奪うこととなり、これは最多奪三振のタイトルに輝いたオリックス・山本由伸投手の奪三振率9.56を上回る。イニング数が増えれば、来季の同タイトル獲得も十分にあるだろう。
シーズン序盤からチームを支えたスターター
今季の開幕投手を務めたのは石川歩投手だった。自身2年ぶりの大役を白星で飾ると、3、4月は6登板で防御率0.87の好成績。その後も高いゲームメイク能力を武器に先発としての役割を十分に果たし続け、20試合の先発で7勝7敗、防御率2.93、うち15試合でQSを記録した。シーズン最終盤はコンディション不良の影響で離脱しただけに、来季は1年間投げ抜き、3年ぶりとなる規定投球回到達を目指したいところだ。
シーズンを通して苦しむも、2年連続で規定投球回クリア
小島和哉投手はチームで唯一、2年連続の規定投球回に到達。昨季10勝を挙げた活躍から背番号を「14」に変更して臨んだ今季だったが、開幕から安定した投球を続けながらも勝ち星には恵まれず。6月10日の横浜DeNA戦でようやく今季初勝利を挙げた。しかしその後も苦しい投球は続き、リーグ6位となる防御率3.14、QS率62.5%とローテーション投手として十分な数字を残しながらも、前年から一転して3勝11敗の成績。来季こそは、2年ぶりの2桁勝利を果たしたいところだ。
2年ぶりとなる2桁勝利をマークしたチームの勝ち頭
投手陣最年長である美馬学投手の働きも光った。前半は自身開幕4連敗と厳しいスタートとなったが、後半戦からは大車輪の活躍を披露。一時は新型コロナウイルス感染による離脱がありながらも、7月下旬からは6連勝、特に9月は4勝0敗、防御率0.83と圧巻の成績を残し、最終的には2年ぶりの2桁勝利となる10勝6敗、防御率2.91と、不振にあえいだ昨季から成績を向上させた。移籍4年目となる来季も、ベテランとしてチームを引っ張る投球を見せられるか。
故障・不調からの復活を遂げたベテラン中継ぎコンビ
昨季は自慢の必勝リレーを筆頭に、盤石の中継ぎ陣を形成していた千葉ロッテ。一方で、今季はその一角を担っていた佐々木千隼投手、唐川侑己投手、国吉佑樹投手が揃って開幕に出遅れる苦しい状況に。そんな中、故障や不調からの復活劇を果たした2人のベテランがその穴を埋める働きを見せた。
まずは今季チーム最多の59試合に登板した東條大樹投手だ。昨季はわずか5試合の登板に終わるも、今季は2年ぶりに開幕一軍入り。シーズン序盤から7回を任されると、特徴的なサイドスローから繰り出されるスライダーを武器に、大車輪の活躍。特に5月は12試合に登板して防御率0.00、8Hと抜群の成績を残し、新型コロナウイルス感染により出場は叶わなかったが、自身初となるオールスターにも監督推薦で選出された。終わってみれば、リーグ3位タイとなる34HPを挙げるなど、中継ぎ陣に欠かせない存在に。
また、西野勇士投手も3年ぶりに一軍のマウンドへ返り咲いた。直近2シーズンはトミー・ジョン手術の影響で、登板なし。それでも今季は開幕一軍入りを果たすと、左右を苦にしない投球で中継ぎ陣の一角を担い、37試合の登板でキャリアハイの15ホールド、防御率1.73の好成績をマーク。かつては9回を主戦場にした男が、リリーフとして復活を遂げることとなった。来季はかねてより希望していた先発での起用が見込まれている。今季の復活を機に、新たな持ち場で輝きを放てるか。
自己最多の18ホールド、防御率1点台と安定感が向上した右腕
また、小野郁投手の働きも目立った。今季も150km/hを超える速球を武器に、開幕から中継ぎ陣の一角として登板を重ねると、7月末までに40試合に登板するフル回転ぶりを見せた。また、新型コロナウイルス感染の影響で出場辞退となった東條大樹投手に代わって、オールスターゲームにも出場し、地元・福岡での初戦では3者連続三振、2戦目には勝利投手の活躍で名をあげた。8月以降はわずか4試合の登板にとどまったものの、44試合の登板で18ホールド、防御率1.99とキャリアハイの成績をマーク。目標とする「8回の男」定着への能力は十分に示しているだけに、来季こそ勝ちパターンとしてフルシーズンを戦い抜きたい。
配置転換も経験、悔しいシーズンとなった守護神
一方で、長年抑えを任されてきた益田直也投手は、シーズンを通して不振に陥った。今季も守護神として開幕を迎えたが、序盤から不安定な投球とコンディション不良に苦しんだ。一時は持ち直すも、後半戦から再びセーブ失敗が相次ぐと、8月には自身の希望で再調整のためにファームへ。9月の一軍復帰後も抑えの座に返り咲くことはなく、最終的に52試合に登板も、最多セーブに輝いた昨季から一転して配置転換も味わう悔しいシーズンとなった。来季の守護神については、吉井理人新監督が若手からの抜擢も思索している。来季は本調子で迎え、守護神奪回のシーズンとしたいところだ。
吉井新監督の下、来季期待の中継ぎ
29試合で防御率0.91と圧巻の成績を残したオスナ投手が福岡ソフトバンクに移籍と、中継ぎの整備は急務。そんな中で期待されるのは、廣畑敦也投手、八木彬投手の社会人からプロ入りしたルーキーだ。開幕一軍スタートの廣畑投手は30試合、八木投手も5月からの昇格で22試合にそれぞれ登板し、経験を積んだ。一方で、両投手ともに左打者からの被打率が3割以上を記録するなど、相手によっては苦しい投球も目立った。来季は課題となった左打者への対応を向上させることが勝ちパターン入りへ不可欠になるだろう。
来季からは吉井新監督が就任し、千葉移転後では27年ぶりの投手出身監督が誕生する。名伯楽の2年ぶりとなる現場復帰で、ベテラン、若手問わずさらなる配置転換や抜擢があるだろう。指揮官はどのようにシーズンを通して安定した投手陣を築き上げ、運用していくのか。
文・和田信
・千葉ロッテ2022シーズンレビュー:野手編
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