昨季はチーム51年ぶりとなる優勝マジックが点灯するも、惜しくも優勝を逃した千葉ロッテ。「頂点を、つかむ。」のチームスローガンを掲げて臨んだ今季だったが、スタートダッシュに失敗した。一時は盛り返したものの、夏場以降は再び失速。最終的には、3年ぶりのBクラス転落となる5位に終わった。
本記事では投手編、野手編に分け、千葉ロッテの2022シーズンを振り返っていく。
期待の若手がレギュラー定着&タイトル獲得。キャプテンは3年ぶりの2桁本塁打&盗塁
今季は、これまで打線の中軸を担ってきたマーティン選手が大不振。故障などでの出遅れや戦線離脱も相次ぎ、シーズンを通して苦しい打線のやりくりが目立った。
そんな中、開幕から存在感を見せ続けたのが3年目の外野手・高部瑛斗選手だった。オープン戦打率.393の好成績で首位打者に輝き、初の開幕スタメンの座を勝ち取ると、その勢いそのままにレギュラーへと定着。持ち味の巧みな打撃から安打を量産し、自慢の俊足でも塁を陥れるリードオフマンとしての役割を全うした。
最終的には44盗塁で盗塁王、リーグ2位の148安打、得票数外野手トップでのゴールデン・グラブ受賞と走攻守で結果を残し、見事にブレイク。来季もタイトルに絡む活躍を見せて、チームを上位進出へ導きたいところだ。
また、キャプテン就任2年目を迎えた中村奨吾選手も、開幕からチームを支え続けた。5年連続の全試合出場は惜しくも逃したものの、チームトップの138試合に出場して12本塁打、15盗塁をマーク。2年連続の2桁盗塁に加え、本塁打も3年ぶりに2桁を記録するシーズンとなった。そんな不動の二塁手も、来季からは4年契約を締結。チームの顔として、攻守でチームを引っ張る活躍を見せていきたい。
チームトップのアーチを描いた右の和製大砲、左の大砲も覚醒の兆しを見せる
昨季、20発以上をマークしていたマーティン選手、レアード選手の不調もあり、チーム本塁打数が126本から97本へと大きく落ち込む結果となった今季の千葉ロッテ打線。そのような状況となるなか、2人の若き和製大砲が台頭した。
3年目の山口航輝選手は、102試合の出場でチームトップとなる16本塁打をマーク。昨季の9本塁打を上回るアーチを架けた。オープン戦では打率1割台と不振だったこともあり、前半戦は代打などでの起用に限られていたものの、後半戦からはクリーンナップに定着。特に9月は1試合3本塁打の活躍を含む月間6本塁打と猛打を振るい、自慢の長打力を見せつけた。来季の目標に掲げた「30本、100打点」に向けては、打撃の安定感、確実性の向上が求められるだろう。
また、4年目の安田尚憲選手もキャリアハイとなる9本塁打を放った。今季は開幕二軍スタートとなり、6月になって待望の初本塁打が生まれるなど、前半戦は低空飛行が続いた。それでも8月には打率.320、4本塁打の好成績を残すと、後半戦以降は三塁の定位置を盤石なものに。さらに、三塁の守備でも総合的な守備力を示す指標「UZR」で12球団トップとなる7.1をマークし、攻守でレベルアップした姿を見せた。来季はフルシーズンで三塁の定位置を守り抜き、自身初の2桁本塁打をマークしたい。
一軍で堂々たる姿を見せた高卒ドラ1ルーキー
新戦力では高卒ドラフト1位ルーキー・松川虎生選手の働きが際立った。将来の正捕手候補として期待されていたが、オープン戦では12試合に出場。持ち味の強肩に加えて安定感のあるリードやキャッチング性能の高さをアピールすると、プロ野球史上3人目となる高卒新人での開幕スタメンマスクに抜擢された。シーズンを通しては、捕手陣トップとなる70試合にスタメン出場。特に佐々木朗希投手とのコンビでは令和初の完全試合の立役者にもなるなど、17試合でバッテリーを組み、7勝を挙げた。一方で、打撃面では打率.173と低調な結果に。来季は課題の打力を向上させて、不動の正捕手に君臨できるか。
盗塁阻止率はリーグトップ。キャリアハイの出場数を記録したマルチプレイヤー
捕手陣では、佐藤都志也選手も松川選手に負けじと結果を残した。先発出場は松川選手に次ぐ63試合だったものの、盗塁阻止率はリーグトップの.361を記録。打撃面でもキャリアハイの8本塁打をマークし、攻守で結果を残した。さらに、打力を買われる形で一塁手としてプロ初の開幕スタメンを果たすなど、複数のポジションもこなし、最終的には自己最多の118試合に出場。オフのみやざきフェニックスリーグでは三塁守備にも挑戦しており、来季もそのマルチな活躍に注目が集まるだろう。
シーズン中盤から活躍が目立ったベテランたち
シーズン中盤からは出遅れていたベテランの選手も一軍へ。まずは、昨季最多安打と盗塁王に輝いた荻野貴司選手だ。コンディション不良による調整不足の影響で開幕は二軍スタートとなったものの、5月に一軍復帰。復帰後は高部選手との1、2番コンビで打線を引っ張り、規定未到達ながら打率.310、入団から13年連続の2桁盗塁となる15盗塁をマーク。さらに今季は通算250盗塁、1000本安打、1000試合出場の大台にも到達した。来季で38歳を迎える俊足好打のベテランは、まだまだ進化した姿を見せられるか。
7月には、昨季途中に右手首の手術を受けた井上晴哉選手が戦線復帰。前半戦はレアード選手、佐藤選手、山口選手らが一塁手を務める状況だったが、夏場以降は井上選手が正一塁手として定着した。復帰後は徐々に調子を上げ、9月には打率.302、4本塁打と好調な打棒を見せるなど、最終的には60試合の出場で7本塁打と故障からの復活をアピール。後半戦にかけて存在感を示す活躍を見せ、来季に向けて弾みをつけるシーズンとなったといえるだろう。
熾烈な正遊撃手の座。争いを抜け出すのは
シーズンを通して流動的だったポジションが遊撃手だ。昨季まで不動のレギュラーだった藤岡裕大選手が開幕直後に故障で戦線離脱するなど、わずか28試合の出場。前半戦はエチェバリア選手が遊撃の座に就くも不振に陥り、8月以降はファームが主戦場となった。
苦しい台所事情となるなか、シーズン後半にスタメンの座を勝ち取ったのが、茶谷健太選手だった。茶谷選手はファームでの好調な打棒を買われ、6月21日に2年ぶりに一軍の舞台へ。一時は新型コロナウイルス感染の影響で抹消となるも、復帰後も打撃好調を維持し、8月12日にはプロ初本塁打もマーク。安定感のある守備も見せるなど攻守で躍動し、57試合の出場で打率.248、1本塁打、9打点の成績を残した。わずかなチャンスをものにした苦労人は8年目を迎える来季、悲願のレギュラーをつかみ取れるだろうか。
また、2年目の小川龍成選手も大きく出場機会を増やした。シーズンを通しては代走や守備固めの役割を担い、68試合に出場。8月下旬からは8試合連続でショートでのスタメン出場も果たした。一方で、打撃では8月25日にプロ初本塁打を放つも、打率.109と寂しい数字に。定評のある走塁や守備面では一軍での信頼を得られているだけに、課題となっている打力の向上で一気に定位置奪取を狙いたいところだ。
さらに、ファームからは平沢大河選手の奮闘も目立った。ショートではチーム最多となる60試合に出場。打撃では打率.278、出塁率.397でイースタン・リーグの首位打者、最高出塁率のタイトルに輝いた。一方で、今季は開幕一軍をつかんで3年ぶりに一軍出場を果たすも、わずか13試合と悔しい結果に終わった。ファームで残した好成績を自信にし、来季こそ一軍のレギュラー争いに加わりたい。
層の厚いチームへ、若手と中堅・ベテランの協調に期待
高部選手、安田選手、山口選手のレギュラー奪取が印象的だった今シーズン。外国人選手の流動的な去就や世代交代の必要性にも目を向けると、若手の台頭にも注目したいところ。ファームでは今季、2年目の西川僚祐選手が平沢選手に次ぐイ・リーグ2位の打率.276、8本塁打の好成績をマーク。さらに7月30日に支配下契約を勝ち取った同じく2年目の山本大斗選手はイ・リーグ3位の12本塁打を放ち、9月には一軍デビューも果たした。来季はこの2年目コンビが一軍で実力を発揮できるだろうか。
今季は故障や不振に陥った選手たちの穴を埋めきれなかったことで、シーズンを通じて苦しい野手運用となった千葉ロッテ。来季は藤岡選手や田村龍弘選手といった今季故障に苦しんだ選手たちも、レギュラー争いへの参戦が予想されるだろう。Aクラスへの返り咲き、そしてリーグ制覇に向けては、勢いある若手と経験豊富な中堅・ベテラン選手との協調で、層の厚い強固な野手陣を築くことが期待される。
文・和田信
・千葉ロッテ2022シーズンレビュー:投手編
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