【台湾プロ野球便り】今季MVPは林立(楽天)。ストーブリーグ、交流試合へ向けた動きも

駒田英(パ・リーグ インサイト)

2022.12.20(火) 08:00

台湾プロ野球の年間MVPに輝いた林立(楽天)(C)CPBL
台湾プロ野球の年間MVPに輝いた林立(楽天)(C)CPBL

 台湾プロ野球の2022年シーズンは、前期優勝の楽天モンキーズと、味全ドラゴンズとのプレーオフを勝ち抜いた後期優勝の中信兄弟が台湾シリーズで対決、林威助監督や平野恵一打撃・野手統括コーチらが率いた中信兄弟が4連勝でリーグ2連覇を果たした。今回は年間表彰式のほか、ストーブリーグ、WBCなどの話題をたっぷりお届けしよう。

実質「打撃三冠王」の林立(楽天)が初の年間MVP

 台湾プロ野球を運営するCPBLは、11月30日、台北市内のホテルで年間表彰式を開催した。投打各タイトル、そして、すでに発表されていたベストナイン、ゴールデングラブ賞、カムバック賞などの表彰と共に、新人王、最大成長賞、年間MVPの発表が行われた。

 年間MVPには、一昨年、昨年と2年連続MVPに輝き、今季も14勝、158奪三振はリーグトップ、防御率2.44はリーグ2位で投手部門でベストナインに選ばれたドミニカ人左腕、ホセ・デポーラ(中信)、リーグ3位の12勝、防御率2.33は台湾投手としては実に8年ぶりに防御率トップに輝いた黄子鵬(楽天)、そして、打率.335、14HR、83打点、140安打、打撃4部門でリーグトップないしトップタイとなった林立(楽天)の3人がノミネートされていた。

 結果、林立が175ポイントを獲得、2位のデポーラ(78ポイント)、3位の黄子鵬(63ポイント)に大差をつけMVPを獲得した。各タイトルの受賞者を1人に限定するCPBLの規定により、ホームラン王は14本と同数ながら、より打数が少ない吉力吉撈.鞏冠(味全)に譲ったものの、NPB式にいえば「三冠王」の圧巻のパフォーマンスが多くの記者の支持を集めた。台湾プロ野球33年の歴史で、二塁手のMVPは初となった。

 林立は「自分が最高の選手だとは思わない。ただ、ベストを尽くそうと心がけてきた。満足することなく今後も努力を続け、自分をより高めていきたい」と述べ、課題と自覚しているという守備も磨いていきたいと誓った。

 楽天の古久保健二ヘッドコーチも、前期優勝直後のインタビューで日本のファンに注目してもらいたい選手として最初に名を挙げた林立。高い身体能力、スピードとパワーを兼ね備え「台湾の山田哲人」と呼ばれることもあるアミ族出身のスタープレーヤーは、1月1日、27歳の誕生日を迎える。リーグの看板選手としてさらなる活躍が期待される。

「最大成長賞」はシンデレラボーイの呉哲源、「新人王」の陳冠偉は両親登場に涙

 今季、著しい成長をみせたプレーヤーに送られる「最大成長賞」には、中信の右腕、呉哲源が輝いた。呉哲源は今季34試合登板(うち先発15試合)、シーズン中盤からローテ入りし、規定投球回数(120回)にも到達、リーグ6位の11勝(1敗)、防御率2.85、WHIP1.15と活躍、台湾シリーズ第4戦でも先発し勝ち投手となった。

2016年のドラフト会議では最下位の10位で入団、これまで一軍では先発はなく、初年度の2017年(29試合、3勝1敗、1ホールド、7セーブ)がキャリアハイで、特に昨季は1軍登板が1試合に留まり、それも1回被安打3、四死球3、3失点という内容であった。

しかし、王建民2軍投手コーチから伝家の宝刀シンカーを学び、投球の幅を広げ先発転向を果たすと、持ち前の制球力も冴え、シーズンを通じ安定した投球を披露。外国人投手の相次ぐ退団、コロナや怪我での台湾人投手陣の離脱といったチームの危機を救う活躍で、先発11連勝、後期の快進撃、逆転優勝の立役者のひとりとなった。

 新人王には、味全の陳冠偉が選出された。元プロで、興農ブルズ(富邦ガーディアンズの前身)では監督もつとめた陳威成氏を父にもつ陳冠偉は、2019年のドラフトで新球団の味全から17巡目(21人目)で指名され入団。昨季、初の一軍マウンドを踏むと、中継ぎで27試合に登板し8ホールドをマーク。今季はチーム最多となる49試合に登板、シーズン終盤からはクローザーの重責を担い、3勝2敗8ホールド、9セーブ、防御率3.13と活躍、MAX150km/h超の直球とフォークのコンビネーションで、46回で61個の三振を奪った。

 受賞スピーチで「新人王は不思議な気持ちだ。プロは子どもの頃からの夢だった。下位指名だったが、まずはチャンスをくれた味全球団、そして方向性を示してくれたコーチ、さらには家族に感謝したい」と語った陳冠偉、この時はマウンド上と同様のポーカーフェイスだったが、サプライズでご両親が登場、抱擁されると感極まって涙、会場は大きな拍手に包まれた。

 なお、現在アマチュア指導者を務める陳威成氏にとっては、新人王に輝いた息子に加え、「最大成長賞」を受賞した呉哲源は中学、大学の教え子。内野手から投手転向をアドバイスしたのも陳氏だというが、陳氏は「彼は自らの努力で夢を叶えた」と賛辞をおしまなかった。

ベストナイン投手捕手部門は中信のドミニカンバッテリー、ゴールデングラブとのW受賞は6人

今年のベストナイン。台湾選手はいずれもWBC台湾代表の有力候補だ(C)CPBL
今年のベストナイン。台湾選手はいずれもWBC台湾代表の有力候補だ(C)CPBL

 ベストナインの投手、捕手部門は、中信兄弟の連覇に貢献したホセ・デポーラとフランシスコ・ペーニャ、ドミニカ共和国出身のバッテリーが受賞した。ペーニャはゴールデングラブ賞とのW受賞、共に外国人捕手の受賞は初という快挙であった。打撃成績は71試合出場で、打率.255、5HR、28打点と目を引くものではなく、巧みなリードと盗塁阻止率.529の肩、ディフェンス面が評価されての受賞だといえよう。

 残り8選手のうち、一塁手の范國宸(富邦)、三塁手の王威晨(中信)、遊撃手の江坤宇(中信)、外野手の陳傑憲(統一セブンイレブンライオンズ)と郭天信(味全)の5人は、ゴールデングラブ賞とのW受賞となった。

 昨オフ、ノンテンダーの形で中信兄弟を放出され、味全入りした林智勝は、いきなりチーム開幕戦で、張泰山が持っていたリーグ通算HR記録289本を更新する290号をマークすると、年間を通じ中心打者として活躍、300号達成こそならなかったものの、103試合出場、打率.300、10HR、62打点と、40歳にして復活を遂げた。

「第6の球団」台鋼は拡張ドラフトで5人指名、今年の契約者名簿漏れは59人

 今年、台湾プロ野球では待望の第6の球団、台鋼(TSG)ホークスが誕生した。CPBLでは、新規参入球団にはいくつかの優遇措置を与えているが、そのひとつが拡張ドラフトだ。

 拡張ドラフトは参入1年目のオフに、他チームの30人プロテクト枠外(同年、前年のドラフト指名選手も対象外)から1人ないし2人ずつ指名、参入2年目のオフは18人枠外から1人ずつ指名できるルールとなっており、今年、台鋼は12月5日、5球団から11月末に提出された名簿をもとに、中信から内野手の杜家明、富邦から内野手の胡冠俞、統一から捕手の張肇元、楽天から右のアンダースロー張喜凱、味全から外野手の洪瑋漢を指名、来季はまず2軍、再来年2024年から一軍参戦となるなか、若手のセンターライン候補を補強した。台鋼は1選手あたり台湾元300万元(日本円約1340万円)の権利金を支払う。

 また、9日、CPBLは、各チーム上限60人の契約者名簿を発表、5チームで計59人の選手が名簿から漏れた。名簿発表後、事実上の戦力外選手と、再交渉の可能性を残す選手を分けて発表する球団もあったが、球団毎に発表方法が異なっており、把握しづらい形となっている。ちなみに昨年は47人が名簿から漏れた中、25人が戦力外となり、うち13人が他球団へ移籍した。

 年間最下位に沈んだ富邦は、5球団最多となる17人が名簿から漏れたが、この中には、投手の陳鴻文、王躍霖、捕手の林琨笙、内野手の林益全、外野手の高國輝ら、実績あるベテランも含まれていた。富邦球団はこれらの選手については再契約、配置転換の可能性を含め再交渉するとしているが、本人達は現役続行を希望しており、移籍となる可能性もありそうだ。早速、楽天は陳鴻文と接触したことを認めている。

 日本球界経験者では、元福岡ソフトバンク、台湾では野手として活躍してきた陽耀勲(富邦)、元読売の林羿豪(味全)の2人が2年連続で戦力外となったほか、元高知の林逸翔(富邦)、元福島、兵庫の蔡鉦宇(統一)が、日本留学経験者では謝修銓(統一)、周奕丞(富邦)らも名簿から漏れた。このうち、林逸翔は引退を発表、周奕丞は球団通訳就任が発表された。なお、優先交渉権をもつ台鋼は、若い投手、捕手を中心に補強していきたい、としている。

深まる日台交流 新たな日本人指導者就任 中信と阪神が沖縄で練習試合開催か?!

 今季は、前期シーズンは楽天、後期は中信兄弟が制し、台湾シリーズもこの2チームによって争われたが、結果、楽天・古久保健二ヘッドコーチ、中信・平野恵一打撃・野手統括コーチら、台湾人監督を支えた日本人指導者の存在もクローズアップされることとなった。

 この秋季キャンプの期間も、1990年代後半から2000年代にかけ、台湾のナショナルチームや統一で投手コーチをつとめた酒井光次郎氏が富邦の客員投手コーチをつとめた。酒井氏の来季契約は現時点では明らかになっていないが、上記の通り、日本留学経験のある周奕丞が球団通訳に転任しており、日本人指導者が就任する可能性は高そうだ。

 今季リーグ最下位の守備率に終わった統一は12月初旬、「ノックの名手」と呼ばれる玉木朋孝氏の守備コーチ就任を明らかにした。また、台鋼は、井端弘和客員コーチを、秋季キャンプに続き、春季キャンプでも招く予定であるという。かねてから「守備を重視し、ち密な野球を取り入れる」というチーム方針を打ち出している、「日本通」の劉東洋氏がGMを務める台鋼の動きには注目だ。

 また、来季、日台のチーム同士の交流再開も予想される中、6日、日本メディア複数紙が、阪神が来春の沖縄キャンプ中に中信兄弟と練習試合を検討していると報じた。中信兄弟は「現時点ではなお検討中」と回答しているが、元阪神の林威助監督は、球団の判断に委ねることになるとしつつ、「かねてから交流を希望していた。若い選手にとってプラスになる」と前向きな姿勢を示している。

 中信は、前身の兄弟エレファンツ時代から台湾を代表する人気球団で、熱狂的なファンをもつことで知られるが、アジアシリーズへの出場はなく、これまで単独での来日はない。林監督、平野コーチのほか、鄭凱文や呂彦青ら阪神出身選手も多数おり、実現を期待したいところだ。
(情報は12/12時点)

文・駒田英

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駒田英(パ・リーグ インサイト)

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