努力が実を結ぶ。今季育成から支配下への昇格を果たしたリリーバー

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オリックス・バファローズ・宇田川優希投手(C)パーソル パ・リーグTV
オリックス・バファローズ・宇田川優希投手(C)パーソル パ・リーグTV

 今季のパ・リーグにおいては、20人もの育成選手が支配下へ昇格。昨季の11人を大きく上回るとともに、支配下復帰組だけでなく、新人でも一軍の舞台で目覚ましい活躍を見せる選手が見受けられた。中でも特に印象的な活躍を見せていたのが中継ぎ投手だ。そこで、今回は今季支配下昇格を果たしたリリーバーを振り返る。

オリックス・宇田川優希

 まずは、オリックスの宇田川優希投手だ。1年目の昨季はファームでわずか1試合の登板に終わるも、今季は15試合の登板で防御率1.88の好成績を残し、7月28日に支配下へ昇格。最速157km/hをマークする力強い投球スタイルで注目を集めると、地元・埼玉で行われた9月8日の埼玉西武戦では緊急登板ながらプロ初勝利をマーク。

 以降は優勝争いを演じるチームの勝ちパターンに定着し、ポストシーズンでも6試合に登板するなど、シーズン終盤において欠かせない戦力となった。来季は開幕からチームが誇る強力ブルペン陣を支えたいところだ。

オリックス・近藤大亮

 続いても、オリックスから近藤大亮投手。近藤投手は2017年から3年連続で50試合登板するなど中継ぎ陣の一角を担っていたが、2020年に右肘のトミー・ジョン手術を受け育成契約に移行していた。

 リハビリを経て実戦復帰を果たした今季は、開幕からファームで8試合連続無失点と圧巻の投球を見せると、4月25日に支配下へ返り咲き。3年ぶりの白星を手にするなど15ホールド、一軍定着後キャリアハイとなる防御率2.10をマークし、故障からの復活を印象付けた。

福岡ソフトバンク・藤井皓哉

 福岡ソフトバンクでは藤井皓哉投手が大車輪の活躍を見せた。藤井投手は2014年ドラフト4位で広島へ入団するも、2020年に退団。それでも翌年プレーした四国アイランドリーグplus・高知ファイティングドッグスでは好成績を収め、今季育成契約でNPB復帰を果たした。そしてオープン戦でアピールに成功すると、開幕直前の3月22日に支配下へ昇格。

 力強い速球と横滑りしながら鋭く落ちる「フォースラ」を武器にブルペンに不可欠な存在となり、55試合で5勝1敗22ホールド、防御率1.12とプロ7年目でのブレイクを遂げた。来季は先発転向も予想されており、新たな持ち場での働きに注目が集まる。

東北楽天・小峯新陸

 東北楽天では今季支配下となった2人がいずれもリリーバーだった。まずは高卒3年目右腕の小峯新陸投手だ。育成選手ながら今春は一軍キャンプに抜てきされると、150km/hを超える直球を武器に対外試合やオープン戦でも結果を残し、開幕前の3月19日にパ・リーグでは一番乗りで支配下へ昇格。開幕一軍も勝ち取り、開幕戦でプロ初登板を飾るなど上々のスタートを切ったが、シーズンを通してはわずか6試合の登板に終わった。

 来季に向けては、今季終了後のみやざきフェニックスリーグで先発に挑戦。同じ高卒3年目では佐々木朗希投手や宮城大弥投手などが一軍のマウンドで躍動している。同世代に負けじと、来季こそ一軍定着を果たしたいところだ。

東北楽天・宮森智志

 そして支配下最後の一枠を勝ち取ったのが育成ドラ1ルーキー・宮森智志投手だ。福岡ソフトバンク・藤井投手と同じく四国アイランドリーグplus・高知ファイティングドッグスから入団した宮森投手は、7月末までに17セーブを記録し、イースタン・リーグのセーブ王を独走。7月30日に支配下へ昇格後も、プロ初勝利、初セーブをマークすると、抜群の安定感を武器にNPB新人記録タイとなる22試合連続無失点の記録に並ぶなど、育成新人ながら後半戦の救援陣を支える働きを見せた。

 来季は目標とする50試合登板に向けて、勝ちパターンの一角に加われるか。

千葉ロッテ・小沼健太

 千葉ロッテでは2年目の地元出身右腕・小沼健太投手が支配下昇格を勝ち取った。小沼投手は4年間の独立リーグでのプレーを経て、2020年育成ドラフト2位でBCリーグ・茨城アストロプラネッツから入団。1年目の昨季はクローザーとしてシーズンを投げ抜き、最多セーブのタイトルを獲得した。

 今季は開幕前の3月22日に支配下契約へ移行すると、30日にプロ初登板。5月26日の広島戦ではプロ初勝利を挙げた。一方で、夏場からは打ち込まれる場面も目立ち、8月以降はファームが主戦場に。防御率も最終的には6点台と苦しんだ。来季は1年間チームに貢献するためにも、さらに実力に磨きをかけていきたいところだ。

北海道日本ハム・古川侑利

 北海道日本ハムからは古川侑利投手だ。古川侑投手は2019年途中まで東北楽天に在籍し、その後は巨人でプレー。昨オフに自由契約となるも、トライアウトではBIGBOSSの目に留まったことで北海道日本ハムへ育成契約で入団し、3年ぶりにパ・リーグでプレーすることとなった。

 すると、オープン戦では5試合に登板して防御率0.00の好成績を残し、開幕前の3月20日に支配下へスピード復帰。そのまま開幕一軍をつかみ取ると、救援陣の一角として一軍に定着し、キャリアハイの34登板、プロ初を含む3ホールドを記録した。今季オフに現役ドラフトで福岡ソフトバンクに移籍。若鷹軍団でどのような活躍を見せるか。

育成から昇格したリリーバーたちの2年目、支配下昇格を目指す育成投手たちに期待

 今季は中継ぎにおいて育成契約から這い上がってきた投手たちの活躍が目立つシーズンとなった。そして来季も宇田川投手や宮森投手のように、彗星のごとく育成出身投手が台頭するかもしれない。支配下昇格から鮮烈な活躍を見せたリリーバーたちの2年目、支配下昇格に向けて奮闘する育成投手たちに期待しよう。

文・和田信

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