日本人投手に怪我続出の中、唯一の“生き残り”として大車輪の活躍
今季からダイヤモンドバックスに加入した平野佳寿投手が好調だ。今季はここまで31試合に投げて2勝0敗12ホールド、防御率1.61という圧倒的な成績。5月5日アストロズ戦で失点して以来、16試合連続無失点と大車輪の活躍を見せる。日本人メジャーリーガーが相次いで故障する中、唯一のメジャー“生き残り”にもなった。
試合ではブラッドリー、ボックスバーガーと形成する勝利の方程式の一角を担うと同時に、失点危機のワンポイント登板を命ぜられても見事に火消し。就任2年目のトーリ・ロブロ監督は「どんな場面にヨシを投入しても仕事を果たしてくれる自信がある」と、早くも大きな信頼を寄せる。
オリックスでは2010年から中継ぎに転向し、ブルペンのスペシャリストとして頭角を現した。2011年には43ホールドを挙げて最優秀中継ぎ投手賞を獲得。クローザー襲名2年目の2014年には40セーブで最多セーブ王となった。直球とスプリット主体の配球で打者を翻弄する姿は、海を渡ったアメリカでも変わらない。
マウンド上に上がると表情1つ変えることなく、テンポよくアウトを重ねる。かつてヤクルトでプレーした経験を持つロブロ監督は、その平野の姿を「コウジはよく似ている」と話す。コウジとは、今季から巨人に復帰した上原浩治のことだ。
2013年から4シーズンにわたり、レッドソックスでベンチコーチを務めた指揮官は、レギュラーシーズンはもちろん、プレーオフ、そしてワールドシリーズの大舞台で躍動する上原の姿を間近に見てきた。速球は時速88マイル(約142キロ)ほどだが、切れ味抜群のスプリットで並み居る強打者をなで斬りにした。そして今、同じくスプリットと速球を駆使しながらマウンド上で躍動する平野の姿が、当時の上原を思い出させるという。
ロブロ監督が考えるリリーバーに一番必要な資質とは…
「2人とも基本的にはスプリットと速球の2球種で勝負する。メジャーではあまり見ないタイプだね。経験とピンポイントの制球という面では、コウジに一日の長があると言えるだろう。それでも、ヨシが投げるスプリットの方が真っ直ぐストンと大きく落ちるし、速球も94、95マイル(約151、153キロ)に達する。日本を代表するクローザーだった経験に加え、メジャーでの経験が加わればコウジに並ぶ、あるいは凌ぐ存在になるかもしれない」
投球スタイルだけではなく、メンタル面でも2人に共通点を見出しているようだ。
「2人とも見事なくらいに気持ちの切り替えが早い。これはリリーバーに一番必要な資質である一方で、ちょっとやそっとの精神では成し得ないこと。すごく気持ちが強いんだと思う。たとえ今日失点したとしても、翌日まで引きずらない。もちろん、自分の頭の中では『あの球をもっとこう投げていれば』とか『次回はこう投げよう』という悔いや反省はあるだろう。だけど、それを表に出さず、短期間で消化して次に進める。この精神力の強さは大したものだ」
2011年以来の地区優勝、そして2001年以来のワールドシリーズ制覇を狙うダイヤモンドバックスは、現在ナ・リーグ西地区トップを走る。「まずは目の前の試合に集中し、1勝を手に入れること」と堅実な姿勢を崩さないロブロ監督だが、10月から始まるプレーオフまでしっかりと視野に入れている。ブルペンの働きが世界一へのカギと言われる近年。優勝に向けての重要なピースとして、平野が「0」を並べ続ける。
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