ホームラン滞空時間TOP5 2022年に高々と花火を打ち上げたパ・リーグの選手は?

パ・リーグインサイト キビタキビオ

2022.12.12(月) 18:30

北海道日本ハムファイターズ・清宮幸太郎選手(C)パーソル パ・リーグTV
北海道日本ハムファイターズ・清宮幸太郎選手(C)パーソル パ・リーグTV

ファンサービスの花火に負けぬ打球を打ち上げた“花火師”たちの祭典

 2022年のプロ野球シーズンは、10月に閉幕した。すでに、タイトル表彰も済み、来シーズンに向けたストーブリーグが熱を帯びてきた現在、各チームがしのぎを削っていた数カ月前のことは「今は昔」。ましてや、ファンサービスで花火を上げることもよくあった夏場などは「懐かしい」と感じるほどだ。

 そのような時期だからこそ、季節外れの“打ち上げ花火”としてホームランの滞空時間トップ5を披露したいと思う。

 3月の開幕から10月の閉幕に至る全期間、パ・リーグで一番高々と上がったホームランを打ち上げた“花火師”は誰か?

大器の片鱗をみせはじめた清宮幸太郎選手(北海道日本ハム)

 まず、5位に入ったのは、6秒40というタイムでライトスタンドへ放り込んだ清宮幸太郎選手だ。

 筆者はこの20年、プロ・アマ問わず多くの選手の滞空時間を計測してきているが、感覚的に6秒を大幅に超えるくらいになると、観客が一度息を飲むせいか、打球が落下する直前のほんの一瞬、静寂が生まれ、着弾後に「ドッ」と大歓声が沸くことが多い。
 この一打もまさにそうだった。実況をしていた近藤祐司アナウンサーがホームランの際に絶叫する「ゴーンヌ!」と決め言葉も、ひと呼吸おいてから発していた。

 清宮選手は、早稲田実業時代に高校通算111本塁打を放ち、超高校級のドラフト1位候補として注目された。当時の筆者による計測では、6秒どころか7秒を超える滞空時間を何度か記録しており、いわば、“滞空時間の申し子”のような選手である。

 プロ入り後は、思うような成績が残せず苦労していたが、4年目の2022年のシーズンになって、これだけの滞空時間の長いホームランを打ち、大器の片鱗を見せてくれたことが嬉しい。

 チームの本拠地が新球場・エスコンフィールドHOKKAIDOに移る2023年シーズンは、同期の出世頭となった村上宗隆選手(東京ヤクルト)並みの成績を残すほど覚醒してくれるはず。

 冗談でも狂言でもなく、本気でそれを期待している。

捕手ながら飛ばし屋であることを示した頓宮裕真選手(オリックス)

 4位は頓宮裕真選手。低めの変化球をすくうように打ってレフトスタンドに運んだ6秒46の一打がランクインした。

 頓宮選手についても、筆者は亜細亜大時代にプレーする姿をみたことがある。当時から、詰まることを恐れず、とにかくなにがなんでも振り切ろうとするスタイルの打撃が光っていた。

 大学時代は捕手だった頓宮選手は、内野手としてプロ入りし、1年目はおもにサードとして出場。翌2020年から捕手登録となったが、長打力を生かしてファーストや指名打者で出場するケースもあり、2022年は自己最高の11本塁打を記録した。

 来季は、同じく“打てる捕手”として埼玉西武で活躍してきた森友哉選手がFAで移籍。チームメイトであり、ライバルとなる。そのなかで、頓宮選手がどのような起用をされ、結果を残していくか? 試練のシーズンになるだろう。

意外か当然か? 三森大貴選手(福岡ソフトバンク)が3位に

 少し驚いた。3位は福岡ソフトバンクでおもに1、2番を打つことが多い三森大貴選手だったからだ。そのタイムは6秒66。高々と上がってから、福岡ソフトバンクの本拠地・PayPayドームのホームランテラスへ吸い込まれるように着弾した打球だった。

 三森選手といえば、高い身体能力を誇ることで知られている。特にその俊足ぶりはリーグ随一で、今シーズンの3月25日から4月30日までに記録された内野安打で計測した一塁到達時間のTOP5では、1位、3位、5位とランキングを独占するほど。そんなスピードを売りにする選手が、飛ばし屋自慢が顔を並べるはずのホームラン滞空時間で上位に入ってきたのだ。驚いたのは私だけではないだろう。

 だが、映像をみると一目瞭然で、角度こそ上向きだったものの、打ち出し直後の打球速度はかなりのものがあった。

 もし、コツコツとあてにいくようなスイングだったら、到底フェンスを超えるところまで届くはずがない。三森選手は、スラッガータイプと遜色ないスイングスピードを持っていると断言していい。

 今季の本塁打は9本だが、来季以降はさらに本数を増やして「恐怖の核弾頭」と言われるようになっているかもしれない。

杉本裕太郎選手(オリックス)が、いかにも“ラオウ”らしい特大弾で2位に

 3位の三森選手とは対象的に、6秒69の滞空時間で2位になった杉本裕太郎選手は、「さすがです」という以外に言葉がみつからない。ホームラン王のタイトル経験者であり、生粋のパワーヒッターであることをみせつけた一打だった。

 杉本選手が放ったセンターへの打球は、もちろんある程度高く上がってスタンドに到達してはいるものの、それ以上にとんでもない距離が出たことで長い滞空時間になっている。

 それは誰にでもできる芸当ではない。果てしなく飛ばすことで長い滞空時間を発生させ、みている観客を呆然とさせる。それも杉本選手のようなホームラン打者の魅力といえるだろう。

番外編 最短の滞空時間(超弾丸)に計測不能?の証明直撃弾

 1位の前に、番外編を2つ紹介してひと呼吸入れよう。

 1つめは、このランキングとは真逆の「最短の滞空時間」、いわゆる超弾丸ライナーのタイム。栗原陵矢選手(福岡ソフトバンク)による滞空時間3秒31のホームランだった。

 栗原選手は、過去、チームの状況によっては四番を打つこともある強打者だ。だが、ホームランの打球は、今回のようなライナー性が多い印象がある。

 今季は開幕直後に左ひざ前十字じん帯断裂してしまい戦線を離脱したが、来季の復活を楽しみにしている。

 番外編2つめは、吉田正尚選手(オリックス)によるZOZOマリンスタジアムでの“照明直撃弾”。計測としては「5秒72」で止まってしまったが、照明にあたらなければもっとタイムの長い大変な特大弾だったはず。

パワーとバットコントロールの両面で優れている吉田選手だからこそなせるパフォーマンスであり、ちゃんとしたタイムを計測できなかったのは大変残念だ。

 吉田選手は、このオフ念願だったメジャーリーグ移籍に向け動きをとり、ポスティング制度を利用してボストン・レッドソックスとの契約がまとまった。となれば、来年以降は海の向こうでの打球を計測するしかない。広いメジャーのスタジアムでこの打球以上の特大弾をぶっ放つことを期待している。

1位はフルスイングが身上のあの選手

 栄えあるホームラン滞空時間1位は、浅村栄斗選手(東北楽天)による7秒05という別次元のタイムだった。

 浅村選手も杉本選手と同様に、すでに実績のあるスラッガーである。そのため、良い意味で大きな驚きはない。

 今季は打率.252、27本塁打、86打点と数字的には必ずしも満足のいくものではなかったかもしれないが、プレースタイルのフルスイングはブレることなく貫いた。7秒台のホームランはそのことを証明しているといえるだろう。

 今年32歳の浅村選手は、今後徐々にベテランの領域に入っていくことになる。だが、いつまでも豪快なスイングを続けてほしい。そして、それを維持できている間は、主力として活躍を続けられるに違いない。

ホームラン滞空時間ランキングはフルスイングの祭典でもある

 昔のプロ野球では、ボールのやや下を叩いてこすり気味の打球がフラフラとスタンドまで届く……ということがあった。

 だが、現代のパ・リーグの球場の広さでは、そうはいかない。ごくわずかに詰まったり、こすったりすることはあっても、しっかりフルスイングをしたうえで、ある程度バットの芯に近いところでとらえてないと、高く上がった打球をスタンドまで運ぶのは難しい。

 その意味で、「滞空時間の長いホームラン≒フルスイングしたうえにアジャストした打球」と置き換えることができるのではないだろうか。冒頭では、少々ゆるめに“花火師”と形容したが、もっと力強いたとえにすべきだったかもしれない。

 いずれにせよ、単なる偶然で上位に入ることなどありえない「本物のパワーヒッター」を証明することができる滞空時間の長いホームラン。だが今回は、パ・リーグホームラン王の山川穂高選手(埼玉西武)や、数多くの“驚弾”を放ってきた柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)はTOP5に入っていなかった。このあたりの謎も含めて、2023年はどのような結果になるだろうか。

 今後もホームランの滞空時間について、ぜひ、注目してみてほしい。

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