オリックスにとってリベンジの舞台でもある
10月22日、「SMBC 日本シリーズ 2022」が開幕する。それぞれ2年連続でリーグ制覇を果たしたオリックスと東京ヤクルトが、2年続けてあいまみえるかたちとなった。昨季は同じ相手に2勝4敗で涙をのんだオリックスにとっては、これ以上ないリベンジの舞台となっている。
とはいえ、1年経てばチームは変わるもの。オリックスにおいても、前年から大きく成績を伸ばして優勝に貢献した選手もいれば、前年から成績を落としてしまった選手も存在する。そうしたチーム内における変化は、日本シリーズの趨勢を占ううえでも非常に重要になってくる。
今回は、オリックスの主力選手の成績がこの2年間でどう変化したのかを、「先発投手」「リリーフ投手」「野手」の3セクションに分けて分析し、昨季からチームに加わった“上積み”について考えていきたい。
主力投手の顔ぶれに大きな変化はないが、タイトルホルダーが待望のカムバック
まずは、主な先発投手陣の成績について見ていこう。
2年連続で投手4冠を獲得したエースの山本由伸投手をはじめ、宮城大弥投手、田嶋大樹投手、山崎福也投手と、主力となる先発陣の顔ぶれに大きな変化はない。しかし、田嶋投手はこの1年間で防御率を1点近く改善し、宮城投手と山崎投手はK/BBを向上させた。このように、各投手の投球内容が昨季以上に良くなっている点は明確な上積みと言えよう。
それに加えて、2019年に最高勝率を獲得した経験を持つ山岡泰輔投手が故障から復活。昨季の日本シリーズではリリーフを務めたが、今季は先発に復帰して8月末まで防御率1点台と好投した。9月以降は状態を落としたものの、10月15日のパーソル クライマックスシリーズ パ・ファイナルステージでは先発登板し、4回まで圧巻の投球を見せた。
昨年の日本シリーズ第4戦に先発した山崎颯一郎投手が今季途中からリリーフに回っただけに、日本シリーズを戦ううえで必要な5枚の先発のうち、最後の1枠を山岡投手が高いレベルで埋めてくれそうなのは大きなプラスだ。充実したブルペンに良い流れでバトンをつなぐためにも、各投手の奮闘に期待したいところだ。
顔ぶれは変化したが、全体的な層は昨年以上に厚くなった
次に、リリーフ投手の成績を確認していきたい。
昨季の優勝に貢献したメンバーのうち、セットアッパーとして28ホールドを挙げたタイラー・ヒギンス投手が退団。そして、漆原大晟投手、K-鈴木投手、山田修義投手、富山凌雅投手、そして昨季の日本シリーズで5試合に登板した吉田凌投手といった面々が、登板機会を減らしている。
その一方で、新戦力の小木田敦也投手とジェイコブ・ワゲスパック投手に加え、トミー・ジョン手術明けの黒木優太投手と近藤大亮投手、昨季は育成選手だった宇田川優希投手といった、昨季は登板のなかった投手が多く台頭した。ワゲスパック投手と宇田川投手はCSでも重要な局面で登板しており、それぞれ日本シリーズでも大事な役割を任されそうだ。
また、昨季は登板数が少なかった本田仁海投手と阿部翔太投手が、それぞれ勝ちパターンの一角として活躍。とりわけ、阿部投手は調子を落とした平野佳寿投手に代わってシーズン最終戦とパーソル CS パで抑えを務めており、ベンチからの信頼も厚い。また、先発からリリーフに回ってパーソル CS パで160km/hの速球を投じた若き剛腕、山崎颯投手の存在も大きな要素だ。
新進気鋭の投手が多いなかで、ベテランの平野投手と比嘉幹貴投手も登板を重ね、随所で存在感を発揮。全体的に投手陣が若返ったこともあり、経験豊富な両投手にはブルペンのリーダー格としても期待がかかる。
昨季はポストシーズンに入ってからヒギンス投手が調子を崩し、代わって登板機会を増やした吉田凌投手が、疲労もあってか勝負所で痛打を浴びたことが敗退につながった。その点、今季はパーソル CS パでも各投手が概ね期待通りの投球を見せており、リリーフ陣の不安要素は減っている。短期決戦のカギを握るブルペンの質が向上したことは、昨季の流れを考えても大きな意味を持ってきそうだ。
昨季の本塁打王が完全復活すれば、長打力の面でも隙はなし
最後に、主な野手陣の成績を見ていきたい。
球界屈指の強打者・吉田正尚選手は、パーソル CS パでも4試合で2本塁打、打率.462、出塁率.563、長打率.923という驚異的な数字を記録してMVPを受賞。昨季は終盤戦に故障を負いながら日本シリーズでも打率.300とさすがの打撃を見せていただけに、絶好調で迎える今回のシリーズではさらなる活躍が期待できそうだ。
そして、福田周平選手と宗佑磨選手の1・2番コンビ、優れた遊撃守備が光る紅林弘太郎選手、頼れるベテランの安達了一選手、それぞれ打撃成績を向上させた若月健矢選手と伏見寅威選手といった昨季の主軸が、前年と同等かそれ以上の活躍を見せている点も頼もしい。
さらに、中川圭太選手が前年から大きく打率を向上させて主軸に成長。パーソル CS パでは打率.400という高打率に加えて、日本シリーズ進出を決める劇的なサヨナラ打を放った。また、西野真弘選手は過去3年間続いた不振から脱却し、パーソル CS パではクリーンアップも務めてすぐれた選球眼を発揮。この2選手の存在は、昨季の日本シリーズからの明確な上積みと言える。
その一方で、昨季の日本シリーズでも本塁打を記録したアダム・ジョーンズ氏とスティーブン・モヤ選手の2名がチームを離れた。また、同シリーズで主に5番を務め、打率.364と活躍したT-岡田選手も今季は極度の不振に陥っており、長打力には一抹の不安が残る。
その点、レギュラーシーズンでは成績を落とした杉本裕太郎選手が、CSで打率.385、出塁率.500と大きく復調した点は心強い材料だ。また、シーズン11本塁打を記録した頓宮裕真選手も台頭を見せており、この2名が長打力を発揮すれば、さらに打線の迫力は向上しそうだ。
目指すは26年ぶりの日本一のみ
山本投手、吉田正選手という投打の柱は、言わずもがなシリーズの行方を左右しうる存在だ。さらに、より安定感を増した先発陣、150km/hを超える速球派揃いのブルペンと、短期決戦において重要な投手力は昨季以上に強力になっている。リーグ2位の防御率2.84という数字は、オリックスの強みを端的に示すものだ。
野手陣に関しても、中川圭選手の台頭、西野選手の復活、そして杉本選手の復調が重なり、パーソル CS パでは4試合で31安打と打線が非常に活発だった。代打で活躍した2名の助っ人は抜けたものの、総合的な打線の厚みに関しては昨季以上のものがあると言えよう。
オリックスが日本シリーズを最後に制覇したのは、中嶋監督が現役選手としてマスクをかぶっていた1996年までさかのぼる。劇的なかたちでペナントレースを制した勢いそのままに、去年以上に力をつけた猛牛軍団は26年ぶりの栄冠を手にできるか。雌雄を決する運命の日本シリーズが、間もなくその幕を開ける。
文・望月遼太
関連リンク
・奇跡の逆転優勝で連覇達成。チーム一丸で苦境を越えた、オリックスの2022年を振り返る
・「やり返せるチャンスが来た」吉田正尚・山本由伸 共同記者会見全文
・中川圭太がサヨナラ打! オリックスが2年連続「SMBC日本シリーズ2022」出場を決める
・椋木蓮が“ノーノー未遂”、野口智哉は存在感発揮。オリックスの2021年指名選手を振り返る
記事提供: