2022年のパ・リーグでもっとも早く3塁にたどり着いたのは?
「電光石火」、「疾風迅雷」、「疾風怒濤」etc… まあ、正直どれでもいい。とにかく、「プロ野球選手の俊足ぶりに酔いしれたい!」と、ご希望のファンにおすすめするのが3塁打の走りっぷりだ。
スタジアムのどこから見ても俊足選手が疾走する様は、風のように爽快で美しい。ダイヤモンドを1周するランニングホームランを目撃できれば一番理想なのだろうが、そう簡単に発生するものではない。
だが、3塁打であれば可能性はグッと高まる。足に自信のある選手が外野手の間を抜くような打球を放ち、1塁、2塁とベースを蹴って3塁に達する姿を目撃できた人は、それが贔屓チームであろうとなかろうと、幸運なプレーに遭遇できたと思っていい。
ここでは打ってから3塁ベースに到達するまでの「3塁打」のタイムを計測。今シーズンのパ・リーグ開幕試合(3月25日)からシーズン最終戦(10月2日)までのフルシーズンにおけるTOP5を集計した。
2022年、もっとも早く3塁ベースにたどり着いたのは誰か? 5位から順番に紹介していこう。
今季の好調ぶりをタイムでも示した牧原大成選手(福岡ソフトバンク)
センターオーバーの打球で3塁を狙い、10秒85というタイムで到達したのは、5位に入った牧原大成選手(福岡ソフトバンク)。今季は120試合に出場して打率.301という好成績を残した。
打率ランキングの対象となる規定打席にあと2打席届かず、シーズンが終了してしまったのは実に残念だったが、内野も外野もいとわずこなすなどチームに貢献。ベストキャリアを見事更新した。
牧原選手は、この企画で2018年に計測した際にも、10秒66という好タイムでランキング1位に輝いている。
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その後は、競争の激しい福岡ソフトバンク野手陣ゆえ、出場機会が減っていたが、今季は再びレギュラーとして活躍。打席が増えれば、3塁打の数も増える。3塁打が増えれば、そこは元王者である。
身長172センチとプロ野球選手としては小柄な部類になるが、1歩1歩跳躍するかのようなバネの効いた力強い走法は健在。ランキングに入ってくるのは、ある意味必然だったと言えるだろう。
周東佑京(福岡ソフトバンク)は余裕の(?)4位ラン
続いて4位に入ったのは、同じく福岡ソフトバンクから周東佑京選手。タイムは10秒80だった。
周東選手のスピードについては、すでにご存知のファンの方が多いことだろう。2019年11月の「第2回 WBSC プレミア12」で、日本代表に大抜擢され、チームの勝利に貢献する快足ぶりを披露して以来台頭し、2020年にはパ・リーグ盗塁王も獲得した。
また、牧原選手と同様、このランキングの元王者でもある。2019年に10秒55という驚異的なタイムで1位を獲得した実績も誇る。
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ただし、映像を見てもわかるとおり、このタイムを記録したときのランニングは、少し余裕があるように感じられた。
元々、細身で足の長い体型を生かした無駄のないフォームで軽快に走るのが周東選手の売りのため、実際のところ、どこまで余裕があったのか見極めるのは難しい。強いて言うなら「タイムがそれを語っている」といったところか。
普段の走りにおいて、果たして、本人が全神経を傾けるくらい全力疾走している機会はどの程度あるのだろうか? いつか話を聞いてみたいものだ。
移籍で心機一転。初心に返った西川遥輝選手(東北楽天)の見事な走り
北海道日本ハムを離れ、今季、東北楽天へ移籍。心機一転、出直しを図った西川遥輝選手が10秒77で3位に食い込んだ。
西川選手も4度パ・リーグ盗塁王を獲得するなど、実績的には誰もが認める韋駄天スターであることは間違いない。
ただ、野球脳が大変優れているがゆえに、これまでは自分の打った打球を追いかけながら緩めにスタートを切ることが多く、3塁打のタイムでランキングでは常連というほどではなかった。
それが、今回3位に入ってきた背景には、当然、東北楽天に移籍した影響があるだろう。初心に戻り、損得勘定を抜きにして全力プレーをした結果がタイムに表れたものと考えられる。
なんにしても、打ってからすぐ全力疾走することは大切なこと。その積み重ねによって、良き成果につながるということだろう。
今季旬だった高部瑛斗選手(千葉ロッテ)は貪欲さが好タイムに
ここにきて、ようやく新顔がランキングに入ってきた。千葉ロッテの高部瑛斗選手である。そのタイムは10秒74。堂々2位入賞だ。
高部選手は、今季故障で出遅れた荻野貴司選手の穴を埋める形でレギュラーを獲得、開幕スタメン出場を果たすと好調を維持。そのため、荻野選手が復帰してからも、控えに戻ることなく試合に出場し続けた。
一番のセールスポイントであるスピードに関しては、今回のタイムからも疑う余地がない。しかし、高部選手のもうひとつ秀逸な点は、次の塁を貪欲に奪おうとする走塁意欲の旺盛さにある。
今季の活躍をさらにバネにして、来年以降も日本を代表するスピードスターであり続けることを期待している。
番外編 苦もなく3塁に行けてしまった中村晃選手(福岡ソフトバンク)に罪はない?
映えある1位の発表前に、定番の番外編でひと息入れよう。
登場したのは、福岡ソフトバンクの中村晃選手。お題目はちょっと恥ずかしい「最も遅い3塁打」の3塁到達タイムである。
記録は15秒31ということだが、映像を見ると、このプレーには同情の余地がある気がする。
中村選手が放った打球は、あわやホームランというライトポール際の大飛球だった。それが、実際にはフェンスに当たってボールインプレーとなり、オリックスの守備陣がクッションボールの処理に思いのほか手間取った。そのため、本人としても想定外で3塁までたどり着いた格好だ。
リーグを代表するヒットメーカーである中村選手ゆえ、ヒットは足で稼ぐよりもバットで稼ぐ。そんなプレースタイルがタイムに出てしまった珍プレーであった。
当然のごとく周東選手が1位に。福岡ソフトバンク勢の黄金時代が続く気配
栄えある1位に輝いたのは、4位で登場した周東選手だった。タイムは10秒72ということで、4位の10秒80とわずか0秒08しか違わない。安定して好タイムを記録している証しと言えるだろう。
それにしても、せっかくの1位なのに、もはやそれが当たり前のような空気になってしまい、褒め言葉も出てこない(笑)。裏を返せば、そのくらいレベルが高いということだ。
この3塁打というカテゴリーは、福岡ソフトバンク勢が実に強い。今回の周東選手と牧原大選手に加え、ランキングには入ってこなかったが、三森大貴選手や上林誠知選手もおそらくすぐ後ろに控えているはず。
もはや、このランキングに入賞するには、他チームの選手と競うというより自チームでレギュラーに定着するのが条件という感じさえする。競争が激しいうちは、もうしばらく福岡ソフトバンクの「3塁打タイム黄金期」が続くのではないだろうか。
3塁打の好タイムはコンディション◎の証し
今回、ひとつだけ寂しかったことがある。毎年、3塁打到達タイムのランキングに必ず登場していた源田壮亮選手(埼玉西武)がいなかったのだ。3塁打については8本打っていたので、決して本数が少なかったわけではないが、夏場に新型コロナウィルス感染による離脱などもあって、自己最悪の108試合の出場に留まったことが痛かったか。
そう考えると、3塁打の到達タイムというのは、全力プレーができているということ。元気の裏返しが結果に示されると考えていい。
来年以降も、できれば全員がベストコンディションを維持し、より高い水準でこのランキングで競い合ってくれることを、切に願っている。
文・キビタキビオ
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