三塁打到達スピードTOP5はこの男たち! 三塁打王、盗塁王もランク外の激戦を制したのは?

パ・リーグインサイト キビタキビオ

2018.11.5(月) 11:00

三塁打の魅力はロングランのスピードにあり

 野球の試合で三塁打を目撃できる機会は決して多くはない。もし、スタジアムで見ることができたなら大変貴重だ。一塁を回った打者走者が「ようし、三塁打だ!」と加速し、トップスピードに乗って二塁ベースを勢いよく蹴り上げて一気に三塁を目指すロングラン。そのスピードと高揚感を一度味わったら、やみつきになるに違いない。

 そんな魅力あふれる三塁打でパ・リーグトップ5の三塁到達タイムを記録した選手たちを紹介していこう。

小柄でも鋭い打球が魅力のオリックス・福田

 まず、5位に入ったのは、オリックスのルーキー・福田周平(オリックス)。三塁ベースをまさに手中に収めるようなヘッドスライディングでもぎとったタイムは10秒90だった。

 ここで三塁打のタイム検証の考え方について述べておくと、「11秒を切るかどうか?」がひとつの基準になる。プロは身体能力の高い選手がそろっているため11秒台は決して珍しくないが、10秒台は“ついで"感覚で出るタイムではない。足に磨きをかけたスペシャリストだけが到達できる“聖域"といえるだろう。

 福田はドラフト3位ながら社会人野球あがりの即戦力として期待され、ひと桁の背番号「4」を与えられたが、10秒台の聖域タイムを記録したことにより、そのスピードがトップクラスであることがあらためて証明された形だ。

 身長169センチ。見るからに小柄でバットを短く持って打席に入るため、小技がきくことだけが武器と思われがちだが、実は思い切り振り抜くバッティングも魅力。三塁打が出るのも、鋭い打球を放って外野の間を抜けるがゆえの結果である。

ルーキーが続くランキング

 三塁打は新人に有利なのか? 福田に続いて新人・山崎剛(東北楽天)が10秒89で4位にランクインした結果をみると、そう思ってしまう。

 山崎は肩幅の広いガッチリした体型で、大変失礼ながら、初めて見た人は俊足とは思われないだろう。だが、一度走り出すと、重戦車が突進するようなスピードを誇る。野球選手というよりは、まるでラガーマンのような走りっぷりだ。

 國學院大時代からシュアな打撃と俊足を武器に活躍しており、その期待に沿う形で1年目の途中から1軍デビューを果たした山崎がスタメンに定着したのは9月のこと。来年も迫力ある激走を披露して、走れる選手であることをアピールしてほしい。

長い脚がロングランで映えるかつての盗塁王

 16年には盗塁王を獲得した金子侑司(埼玉西武)が、10秒85という好タイムで堂々の3位に入った。

 その特徴はなんといっても、美しいランニングフォームである。スマートな体型に長い脚、ストライドの広い華麗な走りは、ロングランでその魅力が一層際立つ。しかも、金子の場合、ストライドの広さだけではなく、ピッチも速いのだ。

 それは、もっともトップスピードに乗っている二塁ベース付近の走りを確認するとよくわかる。金子の脚が広い歩幅で、なおかつものすごい回転の速さで疾走している姿がいやでも目に入るはずだ。
このハイブリットな走法こそが、リーグトップクラスのスピードを生み出している。

左中間を破る三塁打が目につく源田

 とにかく速い。そして、外野の間を抜いた際は常に三塁打を狙っている。それが、10秒71で2位につけた源田壮亮(埼玉西武)のプレースタイルである。

 源田の場合、特に目につくのは、左中間を抜いたときの三塁打だ。左翼側の打球は、右翼側や中堅後方よりも守備側の送球距離が短いため、多くの選手が最初から無理せず二塁で止まるのを前提に走ることが多い。ところが、源田は左中間の打球に対してもちゅうちょなく三塁を狙い、そして奪い取る。単に速いだけではなく、自分の走力と相手守備陣のカットプレーの素早さを瞬時に比較できる判断力も優れているのだろう。

 今年の埼玉西武は、強力打線を全面に押し出してリーグ優勝を勝ち取ったが、2番を打つ源田が単純に走者を進めるだけでなく、こうした攻撃的な走塁をしていることも見逃せない。

 埼玉西武打線の破壊力は一発だけにあらず……である。

飛び跳ねるているような福岡ソフトバンク・牧原の走り

 2位源田の10秒71を上回る10秒66という、唯一10秒6台で三塁打の頂点を極めたのが、今年の夏場以降、急成長を遂げた牧原大成(福岡ソフトバンク)だ。

 昨年までの牧原は、ファームから昇格しても1軍の壁が厚く立ちはだかり、持ち味のスピードを生かす機会に恵まれなかった。しかし、今年は7月にセカンドで起用されるようになると、打撃で結果を残して定位置をキープ。ダイヤモンドを縦横無尽に駆け巡り、その潜在能力を開放させた。

 牧原のランニングは一歩一歩飛び跳ねているかのようだ。空中に浮いている時間が長く感じられる。このバネ仕掛けのような跳躍力がスピードの源だろう。

 また、レギュラー定着に向けてがむしゃらにプレーしていることも追い風になったに違いない。全力で走るひたむきさが、タイムとなって表れたと思われる。

 それだけに、9月27日の埼玉西武戦で足首を負傷し、戦線を離脱したのが惜しい。しっかりと故障を治して、来年、またパ・リーグトップのスピードで三塁にたどり着く姿を見たい。

三塁打王、盗塁王もランク外の理由は?

 以上が今シーズンの三塁打トップ5だったが、興味深いのは、今季の三塁打数14本でリーグトップの上林誠知(福岡ソフトバンク)がランキング外だったという点だ。原因があるとすれば、三塁打になるときの打球にあった可能性がある。上林の三塁打は、右中間を深々と破る大飛球が多かった。そのため、外野からの返球が戻る頃には楽に三塁に到達しており、全力疾走する機会がなかったのかもしれない。

 また、今年44盗塁で自身3度目の盗塁王に輝いた西川遥輝(北海道日本ハム)もランク外。西川の場合、三塁打を打った場面を確認してみると、スイングしたあと、わずかながら打球の行方を見てから走り出している節があり、タイム勝負ではロスになったようである。このあたりは、打ってからすぐに全力疾走する売り出し中の選手に分がありそうだ。三塁打のタイムは“今が旬"の俊足選手を見出す良き舞台なのかもしれない。

 そのように考えると、来年はまた新しい選手がトップ5に並ぶ可能性がある。どんな選手が見られるのか? 今から楽しみだ。

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パ・リーグインサイト キビタキビオ

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